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2017.10.02

【ロンドン2018春夏】ストリートスナップからわかるトレンドは?

 9月の15日~19日までの5日間にかけて行われたロンドンファッションウィークSS2018。今シーズンは他の都市からロンドンへとコレクション発表を移したブランドも多く、全シーズンよりも盛り上がった印象を受けました。それに比例して、会場周辺にはドレスアップしたセレブやファッショニスタと呼ばれる高感度な人たちも増加。今シーズンは何が流行りなのか?ストリートスナップから分析したロンドンのトレンドをご紹介します。

今期の主役は「MA-1」!はっきりと出た支持率

 ここにも、あそこにも、そしてあっちにも。今シーズンのストリートスナップで目立ったアウターは「MA-1」。ファッション業界の関係者からバイヤー、そしてモデルまでの幅広い人たちが着用していた印象です。

 

 9月の秋らしい気候で少し肌寒さがあるロンドンは、軽く羽織れるアウターが重宝する時期。さらに突然の雨が20~30分だけ降るなど変わりやすい天気でもあるので、ナイロン素材のMA-1は便利なアイテムといったところでしょうか。

ビンテージ、ファストファッション、デザイナーズブランド。様々なMA-1を着用したコーディネートがよく見られた今回のロンドンファッションウィーク。

■カーキ?それともブラック?直球デザインが支持
 ウィメンズファッションでありながらも、今シーズン人気のMA-1デザインはベーシックなカーキカラーやブラック。「たくましい」そして「カッコイイ」など本来メンズに好まれるデザインがウィメンズで取り入れられています。中にはピンクカラーや花柄、レース素材などのMA-1をベースにフェミニンに作り変えたデザインも見られましたが、あくまでごくわずか。MA-1コーディネートの8割ほどがカーキとブラックの無地という結果となっています。

メンズファッションのようなベーシックな原型デザインが人気。カラーも本来のフライトジャケットらしいカーキやブラックのカラーが人気です。

■甘辛からメンズライクまで。楽チンコーデ可能
 MA-1を取り入れたコーディネートは意外と簡単で、基本的にどんなファッションともマッチします。カジュアルなスタイルの仕上げとして取り入れることはもちろん、女性らしい可愛いコーディネートにメリハリをつけるようにミリタリー色の強いMA-1をチョイス。スキニーパンツにMA-1を取り入れて、シンプルにメンズファッションのようなまとめ方もできるでしょう。このように、MA-1は同調にもハズしにも使えるアイテム。1枚持っていれば様々なコーディネートで活躍する便利なアウターなこともトレンドとなる理由のひとつでしょう。

メンズライクなカジュアルファッションとして合わせる王道スタイルはもちろん、ワンピースなどと合わせた雰囲気のギャップを楽しむスタイリング方法も。シンプルなスタイリッシュコーデにも対応する幅広い守備範囲が魅力です。

■ジャスト派とオーバー派。サイズで別れるお好み
 また、サイズ選びに関しても失敗がないアイテムです。ジャストサイズで着ることはもちろん、オーバーサイズで大胆に取り入れる方法も今っぽいスタイルに仕上がります。もともとボリュームのあるシルエットなので、体のラインも隠すことができる。さらに、多数のブランドから変形デザインもリリースされており、AラインのMA-1やロング丈のものまで様々。自由度が高いことから、本当に自分の好みでサイズもシルエットも選ぶことができるアイテムと言えます。

MA-1のサイズの取り入れ方に不正解はなく、ジャストで着こなしても、オーバーサイズでボリュームある着こなしもオシャレに見えるコーディネートです。シルエットの見え方で個性を出す方法もあり、まさに万能アウター

ドレスアップの決め手は「フリル」がキーポイント

 ドレスアップした女性のファッションで増加傾向なポイントがフリルでしょう。大小いろいろなデザインがありながらも、ヒラヒラとした装飾を身にまとうスタイルがロンドンの女性に人気です。スタイリッシュなファッションでも、シンプルにまとめていても、フリルがあれば甘めな印象にまとめることが可能。と同時にエレガントなイメージもあり、ファッションウィーク会場全体を華やかに飾る役目を果たしています。

会場を見渡せばフリル、フリル、フリル。ただフェミニンなだけでなく、ラグジュアリーブランドと合わせたエレガント感や、女性らしくたくましいクール感を忘れないコーデがロンドンらしいスタイルです。

■ウィメンズファッションはフェミニン傾向へ
 ストリートだけでなく、新作コレクションでもフリルは多用されています。ウィメンズファッションの全体的な流れとして「ネオフェミニン」が挙げられているのも納得できるでしょう。ネオフェミニンとは、可愛らしさにダイバーシティ性が加わったイメージで、民族的なデザインやミリタリーなど、フェミニンにプラスαのアレンジが加わったスタイル。それぞれデザイナーの表現やブランドのテーマなどでオリジナリティーが出しやすく、フェミニンをベースとした独自のスタイルを確立しています。

新作コレクション内でもフリルの登場率は高くボリューミー。一言でフリルとしてまとめても、ブランド毎の個性が光ります。
(上段左から時計回りに)ユードン・チョイ、エミリオ デ ラ モレナ、ボラ アクス、ニコパンダ

■袖にフリル。肩にフリルで存在感アップ
 さらに今回のロンドンファッションウィークの会場で視線を集めたフリルは肩や袖に装飾されたフリルでした。風が吹けばフリルをなびかせながら歩く姿。肩にボリューム感あるアクセントとして取り入れたスタイル。これら存在感の高いフリルをアクセントとして取り入れるコーディネートが主流となっています。

袖や肩周りのフリルをなびかせて歩く姿はまさにエレガント。華やかなドレスアップで遠くからでも存在感あるスタイルに仕上がっています。

プリントや刺繍は「フラワーモチーフ」で女性らしく

 

 

 ドレスやマキシワンピースにデザインされるプリント柄や刺繍のデザイン。会場でゴージャスな雰囲気で視線を集めたのはフラワーモチーフでした。

 

 フリルと同様にフェミニンなスタイルをしっかりとアピールできることから、カラフルなカラーリングと大胆なデザインを取り入れている人が多数。そして、やはり流れはダイバーシティ性のあるネオフェミニン。ストリート色の強いブランドアイテムと合わせるミックススタイルも目立ちました。もちろん、直球勝負なフワラーデザインのワンピースでまとめるファッションも健在。秋冬のダークカラー着用が増える季節に、より一層輝くスタリイングが魅力的です。

カラフルなカラーリングでフリルに負けないフェミニンな印象を与えるフラワーモチーフ。ダークな色合いが増える秋冬シーズンの今、一際視線を集めるコーディネートでした。

まだまだ続くグッチ人気。キャッチーなロゴが目立つ

 前回シーズンのトレンドとして「グッチ(GUCCI)」のバッグを挙げていますが、今シーズンも人気の勢いは止まっていません。それどころか、さらに所持率が高くなっている様子。

 今シーズンの傾向として、モノグラムデザインを持つ女性が多く、「GG」エンブレムはベルトやTシャツなどのアクセントに派生するようなコーディネート例が目立ちます。

 「グッチ(GUCCI)」人気は数字でも証明されており、昨年の売り上げは昨対で10%以上増えているという結果が公表されています。好調かつ注目度がますます上がっている「グッチ(GUCCI)」ですが、ミラノで行われるショーはロンドンファッションウィーク最終日のすぐ翌日。ロンドンファッションウィークの最終日にいつも以上に人が少ないと感じたのは、みんなが「グッチ(GUCCI)」目当てにミラノへ移動したからかもしれません。

人気の「グッチ(GUCCI)」はモノグラムデザインが今シーズンのヒットアイテム。Tシャツ、ベルトなどでアクセントとして取り入れている方もたくさん見られました。

ロンドン新加入ブランドもあり!締まりあるスケジュールに

 今回のロンドンファッションウィークは、大型ブランドの新加入がありました。それが「エンポリオ・アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」と「トミーヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」。ロンドンファッションウィークの常連ブランドである「バーバリー(BURBERRY)」や「ジュリアン マクドナルド(Julien Macdonald)」とともに、5日間のスケジュールのトリをそれぞれ務めていました。

 

 これにより、その日最後のショーは連日注目度が高く、華やか。ファッションウィークらしいゴージャス感がゲストの顔ぶれにも表れていました。もちろん、ロンドンらしいクリエイティブなブランドや、ストリートスタイルをベースとしたデザインも健在です。

 

 ラグジュアリーブランドからアーティスティックなブランドまで、様々な個性がミックスされるところがまさにロンドン。今シーズンの参加ブランドは全体的にコントラストの強いラインナップとなり、今まで以上に楽しめるイベントとなりました。

加熱する抗議 広がる動物愛護の意識

 ロンドンファッションウィークのファッションショーに足を運んだ人たちが身の危険を感じるほどだったと言うほど加熱気味であった動物愛護のデモ。動物を苦しめて採取されていると考えられているリアルファー素材などの使用を反対する団体が行っている活動です。連日ロンドンファッションウィークの会場周辺に集まり、プラカードと拡声器により動物から取れる素材の使用反対を訴えていました。

 

 実は抗議デモは今シーズンが初めてではなく、昨シーズン以前もメイン会場周辺で行われています。ただ、今シーズンはその活動規模を拡大。2~3倍以上に増えた100人を超えるデモ隊が、メイン会場だけでなく、「ガレス ピュー(Gareth Pugh)」や「バーバリー(BURBERRY)」など注目度の高い会場でも抗議を敢行。これにより、会場周辺は入場が困難となるほどの混乱となっていました。

■英国から広がるヴィーガンファッション思考
 デモ隊の規模が大きくなるということは、それだけ動物愛護の意識が広がっているということを示唆しています。この流れはヴィーガン(絶対菜食主義)思考として、ファッションブランドでも広がりを見せており、最近ではイギリスのシューズブランドである「ドクターマーチン(Dr.Martens)」もフェイクレザーをベースに動物性の素材を使わないアイテムを発表しています。また、パリ発のシューズブランドである「グッドガイズ(GOOD GUYS)」は“don’t wear leather(レザーを着ない)”をテーマとして全てのコレクションでフェイクレザーを使用しています。女優のエマ・ワトソン氏がこのブランドを支持するなどSNSなどを通じてイギリス内で話題となっているブランドです。

消えない不安 小規模でもテロが起きた事実

 初日に地下鉄で起こった爆破テロも、今回のロンドンファッションウィークの象徴的なできごとでした。一部の路線がストップするなど、少なからずスケジュールにも影響を与えていました。

 

 ショーのメイン会場では持ち物チェックだけでなく金属探知機による検査、探知犬によるセキュリティなどが行われるなど対策済み。それでも不安が消えないのは事実であり、今後の運営スタイルにも注目が集まっています。


 

 

高嶋 一行(たかしま・かずゆき)
ファッションライター

 

ロンドンのELEY KISHIMOTOにてデザインアシスタントを経験後、日本では海外ブランドのセールス・PRエージェント会社に勤務。 現在はイギリスに戻り、英国を中心としたファッション記事を執筆中。 現在、ファミリーセールやサンプルセールの情報サイト「tokyosamplesale.com」(毎日更新)も運営している。

 

tokyosamplesale.com

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