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2019.04.12

ゲストはナノ・ユニバース代表取締役社長の濱田博人さん 第21回SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」

 USEN(東京、田村公正社長)が運営する音楽情報アプリSMART USENで配信中の「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」。ウェブメディア「ジュルナルクボッチ」の編集長/杉野服飾大学特任教授の久保雅裕氏とフリーアナウンサーの石田紗英子氏が、ファッション業界で活躍するゲストを招き、普段はなかなか聞けない生の声をリスナーに届けるが、アパレルウェブでは、その模様をレポートとして一部紹介していく。第21回のゲストは株式会社ナノ・ユニバースの代表取締役社長、濱田博人氏。

<前略・オープニングトーク>

 

石田:ご出身は熊本でいらっしゃるんですね。

 

濱田:もう、バリバリの九州男児。

 

久保:じぁあ、厳しいんですか、女性に。そうでもない?

 

濱田:いやー、逆ですね。僕の知っている九州男児はほとんど女性の尻に敷かれている人ばかりですね。九州男児というのは女性に立てられているっていうイメージがありますけど、女性の手の平の上で転がされているという方が正確かな。男性を立てつつ手の平で転がす。

 

石田:学びたいところですね。お父様とお母様はどういう方だったんですか?

 

濱田:両親は鹿児島の出身です。転勤族だったので、実は僕が生まれたのは熊本ではないんです。中学・高校の青春時代を過ごしたのが熊本なので、出身というとどうしても熊本と答えてしまうし、愛着が一番強いかな。父は東京の大学を出て、結構お堅い仕事をしていました。バリバリの国家公務員で、郵政省に勤めていたのです。私とは全然毛色が違うというか。まあ、小さい頃の家庭環境はかなり真面目な感じでした。

 

久保:お母さんは例えば洋服好きだったとか?

 

濱田:全く無いですね。父は公務員のわりに洋服は好きでしたけど。僕がファッションに興味を持ったのは中学・高校時代。熊本には「わさもん」という方言があって。

 

石田:わさもん?

 

濱田:何となく響きで伝わるかもしれないですけど、流行りもののこと。

 

久保・石田:ああ、なるほど。

 

久保:ミーハーということ?

 

濱田:そうですね。本当にミーハーな人が揃っている街で。行かれた方は大体みんなビックリしますね。自分の街だから贔屓するわけじゃないですが、ファッションにもこだわりが強いし、地方都市にしては珍しく街中が寂れていないというか、ものすごく賑わっています。洋服業界にも熊本出身の人は多いという感じがしますね。

 

久保:九州で一番進んでいるのは福岡というイメージですが、実は熊本には有力な専門店やセレクトショップがあるんですよね。専門店の有田さんがやっている「ブレイズ」とか。

 

濱田:僕もまさしくブレイズの洗脳を受けました。「おまえ、これ着とけ」って中学2年生の時に勧められたシャツが、後々わかったんですけど「ポール・スミス」。高1の時には「デートに行くんだけど」って言ったら、「これ履いとけ」とデニムを渡されて。それが「アルマーニ」だった! もう恐ろしい物を買わされていた。

 

久保:お小遣いは足りてました?

 

濱田:足りないですよ。でも、かなりインスパイアされたというか。高校の時には「将来は東京に行くんだ!」みたいなね。

 

久保:かといって、ファッション業界に進むとは決めていなかった?

 

濱田:まったく決めていなかったですね。まずは東京に行きたい。東京の大学に行って、テニスサークル入りたいと。

 

久保:それ、ミーハー?

 

石田:出ました、わさもん。

 

濱田:高2の時に田中康夫の『なんとなくクリスタル』という小説が出て、僕のバイブルでしたから。だから、受験で東京に来たのに、最初に大学の下見に行かずに表参道に降り立った。

 

<中略・学生時代、バレーボール部、バブル期の話>

石田:ファッション業界に入ろうと思われたのはいつ頃ですか?

 

濱田:東京に来て表参道に降り立って、なんて素敵な街なんだって。田中康夫の世界が再現されていて、こういう街で働きたいなと思ったんです。18歳の時ですね。ただ、普通に学生生活を送ってしまったんですね。遊びの本拠地も渋谷のセンター街だったので、表参道のおしゃれさからは程遠い生活をしていました。

 

 就職活動の時はまだバブル期で、回ったのも証券会社とか不動産会社がメイン。まじめに就職活動をして、大手不動産会社の内定をいただいたんですよ。両親も喜んで、「よく頑張った」と言ってくれました。でも、自分でもよくわからないんですけど、その年が押し迫った頃に、「俺はこれでいいのか? 何かレールに乗せられてないか」って。何を血迷ったか「アパレルに行きたい、表参道で働きたい」という思いが湧いてきたんです。

 

久保:卒業まで3カ月ぐらいしかない。

 

濱田:そうなんですが、抑えきれなくなっちゃって。お正月に実家に帰った時に「不動産会社への就職を辞めたい、洋服屋に行きたい」と打ち明けたんです。親は激怒ですよ。で、そのまま喧嘩別れして東京に戻って、大学の先生に「どうしても行きたくないんだ」と話しました。すると、もう時効なので言いますが「内定の辞退は後輩に迷惑が掛かるから、できることなら留年してくれ」と。「卒業できないことにすれば角が立たない」と言われたんです。それから親に何度も電話して、結局、理解してもらえました。プータローになられては困るので、最後は渋々折れたという感じでした。

 

久保:実際、アパレルに就職して、やっぱり良かったとか、ここは予想と違ったみたいなことはありましたか?

 

濱田:もう誤算だらけ。8割後悔です(笑)。よく若い人たちに言うんです。「アパレルって華やかじゃないよ」って。毎日パッキン担いでるし、棚卸しは終わらないし、商品センターに行って自分で出荷したり。まあ夜は帰れないし、残業代は出ないし。今でいうブラック企業ですよね。給料も安いからお金はないし……。

 

久保:夢も希望もない話になってきちゃいましたね(笑)。

 

石田:でも、頑張ってめげずに。

 

濱田:いろんな人に迷惑をかけて、啖呵を切ってファッション業界に入ったので、「逃げる訳にはいかない。それなりに知名度が上がるくらいに仕事をしないと、ちょっとまずいな」と。一年留年しないで入っていたら、早々と辞めていたかもしれないですね。

 

石田:ナノ・ユニバースの社長就任は、抜擢ということですか?

 

濱田:TSIホールディングス(ナノ・ユニバースなど約40のブランドを統括する持ち株会社)の取締役だったので、子会社の社長になるということは必ずしも抜擢人事ではないです。ただ、僕は現場からTSIに入ったので、持ち株会社に居る事にはちょっと違和感があったんですね。直接、事業をやらないから。僕は自分で事業に携わりたいという思いがすごく強かった。「チャンスがあれば」と常日頃から考えていたんです。とはいえ、ナノ・ユニバースっていうのは青天の霹靂というか、考えてもいなくて。創業者の藤田浩行さんがとても優秀な方で、急成長した会社です。私と歳が一緒で当時はまだ若かったから、「この先も10年、20年とやるんだろうな」と思っていました。でも、ファッションってわからないですよね。業績が急降下していったのです。ディベロッパーからも「ナノ・ユニバースはそろそろおしまいね」という声が聞かれるようになって……。

 

久保:「出てってください」っていうやつですね。

 

濱田:かなり辛らつにその言葉が出てきて「これはまずいなあ」と。社内を見てみると優秀な社員が何人か流出していて、離職が止まらないみたいな感じになっていました。三宅さん(三宅正彦・TSIホールディングス会長)からも「ちょっと危険だ」という話があって。そこからは言えること、言えないことがあるんですけど、「濱田がナノ・ユニバースに行くしかない」ということになって。本当に急に決まった話だったんです。

 

石田:いろいろ改革をされたと思うんですけど、どういうところから?

 

濱田:中身は非常に良いものがまだ残っていました。社長に就任して2カ月後の半期決算で初の赤字に転落し、とてつもないどん底だったのですが、まだまだ優秀な人材が多かったし、ECの売り上げが非常に高い会社でした。簡単ではないけれど、いろいろなことを順序立ててやっていけば、十分に立ち直れると思ったのです。

 

石田:ナノ・ユニバースのサイトはすごく面白くて、動画も工夫されています。全部独自で撮られているんですよね?

 

濱田:はい。僕が就任した当時、EC化率は高かったのですが、自社EC比率が低かったんですね。ゾゾさんが8割。自社サイトは面白いんだけど、使いづらい、わかりづらいところがありました。そこでECの責任者たちと何度も話をして「本当にやりたいことはどういうことなの?」というところから、改めて作っていったのです。今のナノ・ユニバースのアプリは1年半ぐらい前に全面リニューアルしたものですが、まさに躍進した感じですね。結果的に、かなりゾゾさんの比率が下がった。でも売り上げは下がっていません。自社ECが上がってくれたのです。

 

<中略・オムニチャネルと相互送客の話、販売職のモチベーション維持、棚卸し、コラボの話>

石田:この番組の視聴者にはファッション業界を目指している方が多いと思います。メッセージをいただけますでしょうか。

 

濱田:僕がそうだったように、ただファッションをやりたいっていう気持ちだけでも、十分に入っていい業界だと思っています。ファッション業界は、特定の企業に「就社」するものではなく、業界に「就職」するもの。冒頭で話した僕の最初の就職活動は、就社のためだったと思うんですよ。ファッションって、会社に入ることよりも、入ってどういう職種を極めていくかが一番重要な気がするんです。その職種でプロフェッショナルになったら、この業界は本当に面白いし、いくらでもキャリアアップできます。転職することが悪じゃない。そういうふうにファッション業界を見てほしいなと思います。

 

久保:まさに自分自身を磨く、磨けば磨くだけいろんなチャンスがある。そういう意味では、野心がある人にとっては面白い業界かもしれないですね。

 

濱田:熊本から出てきた田舎者の僕でも、30年いたらそれなりにファッショナブルに磨かれるような業界ですから。

 

 

<後略・クロージングトーク>

 

詳細は、SMART USENでお聴きください。

 

SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第21回のゲストはナノ・ユニバースの濱田博人さん

 

▼公開情報
USENの音楽情報サイト「encore(アンコール)」
http://e.usen.com/

 

 

 

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