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2019.03.13

時代はプラスサイズから “インクルーシブ”サイズへ 押し寄せる ダイバーシティーのビッグウェーブ

アンソロポロジーのホームページより

 アメリカンイーグル社のエアリーが提唱する「リアルボディ」トレンドや、ヨガやピラティスに始まった空前のスポーツブームによって、よりナチュラルでヘルシーな志向が共感されるようになってきました。ありのままの自分をポジティブに受け入れるというセオリーがトレンドとなり、人種、年齢、サイズを問わず、様々なタイプの女性にアプローチするダイバーシティー戦略は、苦戦する米国小売り店にとって不可欠となってきました。

 

 米国女性の3分の2が、標準サイズでないと認識しており、中でもティーンエイじゃーの42%がプラスサイズ(ビッグサイズ)。友達とショッピングに出かけても、合う洋服がないというのが現状なのです。米国女性の67%以上がサイズ14以上(日本サイズでXL)と言われ、プラスサイズは、今や446億ドル(約4兆9,500億円)市場規模となっています。

 

 イメージを重要視するファッション業界では、フィッティングが複雑であることや、サイズ展開の難しさなどから、大きな需要があるにも関わらず完全に不足してきた市場なのですが、ここに来て大手小売りチェーンでも急激に取り扱いが増えています。

「アンソロポロジー」が初のプラスサイズを展開

 アーバンアウトフィッターズの姉妹店「アンソロポロジー」は2015年に、スモールサイズコレクション(00P-14P)を始めており、小柄な女性向けのコレクションを展開しています。米国のデパートや専門チェーンなどでは、標準サイズとは別にペティートサイズを扱っているケースが多いのですが、ビッグサイズはほぼ見かけません。

 

 そんななか、3月15日にスタートする「APlus」コレクションでは、ワンピース、パンツ、スカートなど(16W-26W)約120点の展開が予定されており、今までリーチできなかったビッグサイズの消費者をカバー。商品はオンラインと一部の店舗で販売。マンハッタンロックフェラーセンター店ではウィンドウでフィーチャーされるようです。

マス市場から高級デパートまで 広がるプラスサイズ

 プラスサイズマーケットはデザインの選択肢もなく、売り場の隅っこに追いやられた肩身の狭いカテゴリーでしたが、消費者の意識の変化により確実に変化しつつあります。

 

 スタイリッシュなビッグサイズに注力した「モドクロス(MODCLOTH)」と「エロクイ(ELOQUII)」は昨年、2社ともに世界最大の小売りチェーン、ウォルマートが買収しました。ディスカウンターの「ターゲット」でも前年比の2倍にあたる300店舗でプラスサイズのアパレル、水着、アスレチックウエアを販売。マネキンのサイズも4−22と以前は使用していなかったサイズにまで積極的に広げています。

 

 また、サイズ00-40まで取り扱っているオンラインベースの小売り店「ユニバーサル・スタンダード」は昨年、Jクルーやノードストロームと協業。最近では、米女優グウィネス・パルトローのライフスタイルブランド、GOOP(グープ)とタッグを組み、ビッグサイズの展開をスタートしました。ナイキやレイ(REI)などのスポーツウエアブランドも例外ではありません。

78サイズ展開!注目のランジェリーブランド「THIRDLOVE(サードラブ)」

サードラブのホームページより

 フォーブス誌「次の1000億円スタートアップ企業」の1つに選出された「サードラブ」は、試着せずにぴったりのブラのサイズを見つけることができる、注目のオンライン・ランジェリーブランドです。6億のデーターポイントをベースにした「FitFinder」テクノロジーを使用しており、顧客はクイズに答えるだけで、自分のボデイにパーフェクトなサイズのブラを購入することができるのです。

 

 30日間使用し、気に入らなければ返品も可能です。そのサードラブが先日、ビッグサイズを加えることをアナウンスしました。通常のサイズ30~48に加え、ビッグサイズとなる78まで拡大します(カップはAA-I)。マーケテイングキャンペーンでは、サイズや国籍、年齢層の異なる78人の女性をモデルに起用しており、競合「ヴィクトリアズシークレット」の最大の弱点と言えるダイバーシティー戦略を打ち出しました。

 

 ヴィクトリアズシークレット社は長年の間、スーパーモデルのセクシー戦略を続け、全くの変化が見られません。昨今の消費者が求める、ありのままの自分“リアルボディー”から取り残された感があり、昨年の売り上げは3%減と大苦戦しています。年内に不採算店53店舗をスクラップすることも発表しています。

プラスサイズ女性が求めている売り場とは

 期待が高まるプラスサイズ市場に取り組む企業は増えてきましたが、将来的に求められているのは、“プラスサイズ市場”の拡大という概念ではなく、1つのブランドや企業で、同じアイテムで可能な限りのサイズ展開する売り場、 INCLUSIVE SIZING(インクルーシブ・サイジング)がポイントとなるでしょう。

 

 従来、“大きな人のための洋服市場”は、デザインも特殊で選択肢がなく、店舗の一部で細々と展開されてきました。今後は、どんな体型の女性も、友人と一緒に同じアイテムの買い物ができる売り場、という発想が必要になるでしょう。すべてのサイズにおいてフィット感を追求しなければならない製造工程の難しさに加え、在庫コストや欠品問題、複雑化するSKU、フロアスペースなど、多くの課題があるチャレンジですが、細分化するダイバーシティーに伴い、“プラスサイズ市場”から“インクルーシブ市場”へのシフトは進みそうです。

Showpo「HOW DID THESE SHOWPO STYLES LOOK ON 3 SIZES?」


 

 

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