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2017.10.23

2年で2割減った出展者数 パリ・レディス・トレードショー

 2018年春夏のパリ・レディス・ファッションウイークが終わった。テロ事件以降の沈滞ムードを払拭して、このところ景気の戻りが取り沙汰されている南欧諸国の気分が反映することを期待したが、市内各所で開かれたトレードショーやショールームは、総じて低調に終わったようだ。一方で日本人来場者の増加を口にする出展者の声が多く聞かれたのも大きな特徴だった。

カプセルはレディス・セカンドセッション撤退

(上段左から)パリ・シュールモード、プルミエールクラス/(下段左から)ヴァンドーム・ラグジュアリー、ウーマン

 主要なトレードショーは、アパレルの「パリ・シュールモード(SUR)」(77ブランド)と主催者が同じWSNディベロップモンの服飾雑貨展「プルミエールクラス(PC)」(454ブランド)が9月28日~10月1日の4日間にコンコルド広場とチュイルリー公園に建てられたテントで、「トラノイ(TRANOI)」(455ブランド)が9月29日~10月2日の4日間にパレ・ド・ラ・ブルスとカルーゼル・デュ・ルーブルの2会場、「ウーマン(WOMAN)」(80ブランド)が9月29日~10月1日の3日間にヴァンドーム広場で開かれ、この他に「ヴァンドーム・ラグジュアリー」「ジップゾーン」なども開催された。またマレ地区で従来からウーマンの主催者が開いてきた「マン/ウーマン・ショールーム(MAN/WOMAN SHOWROOM)」(9月28日~10月2日)も開かれたが、トラノイもショールーム形式で「トラノイウィーク(TRANOI WEEK)」(9月27日~10月3日)と題し、14年以来の復活を果たした。このトラノイウィークには英国ファッション・テキスタイル協会がサポートする「ロンドンショールーム(LONDON SHOWROOM)」が包摂される形となった。

トラノイ

先進国の停滞と新興国の隆盛を感じるシーズンに

トラノイのカルーゼル会場には昨年マレ地区にオープンして話題のフランス工芸家組合の店舗「アンプラント(EMPREINTES)」が出展

 初日には比較的賑わったトレードショーだったが、後半に失速し、多くの出展者の口からは「来場者数の低迷」が指摘された。特に7月のIMF(国際通貨基金)による経済成長見通しで0.5%の上方修正がなされたスペインとイタリアに期待する声もあったが、総じて低成長の先進国よりは、中国、韓国、香港などのアジア圏や中東、ロシア、ウクライナといった新興国の来場者の強さが目立った格好だ。

グラフ① 

表①

 ①のグラフ&表は、この2年の16SSと18SSシーズンを比較したデータだが、総出展者数が約1400ブランドから約1100ブランドへと21.7%も減ったことになる。またシーズンが異なるため、単純には比較できないが、②の通り、前回比でも総出展者数で7.8%減となった。

グラフ② 

表②

トレードショー本来の役割に期待

 今年6月のパリ・メンズ・ファッションウイークのトレードショー分析を行ったアパログ記事においても、主要3展(トラノイ、カプセル、マン)の4年間のSSシーズン総出展者数推移で、31%減となっており、前述レディスの16SSとの同時期比較でも570ブランドから422ブランドへと26%減っていることが明らかになっている。

ロンドンショールームを取り込んで始めたトラノイウイーク

 レディスが21.7%減、メンズが26%減という数字が物語っているように、16SSシーズンが終わった直後の15年11月にあの忌まわしい同時多発テロ事件が起こったわけだが、その影響が2年経っても続いており、出展者、来場者双方に重くのしかかっているようだ。 こうした中で各主催者はマン/ウーマン、トラノイのようにショールーム形式のミニ合同展を開催するなど新たな手を打ってきている。

 

 しかし、この数年高止まりしているトレードショー出展料とそれに見合う投資効果という点で、アンバランスが生まれてきているのは明らかだ。本来は、始めたばかりで取引先リストを持たないブラントが、最初に顔見せするところがトレードショーだったはずで、未知のブランドと効率良く、かつ数多く出会えるからとバイヤーは足を運んだわけだ。だが前述のように出展料の高さゆえに小さなスタートアップしたばかりのブランドが出られなくなり、新規を見つける魅力が減り、しかも一部ではあるが入場料も取ることから、来場者にとってもハードルが高くなり、出向く意欲が減退する「負のスパイラル」が起こっている。出展者に渡されるパスの数にも制限がかかっており、出展者も主催者も知らないスタートアップしたばかりの伝手のない店にとっては、更にハードルが高くなっているといえる。主催者によって考え方の違いはあると思うが、人が人を連れてきたり、繋がりが新たな繋がりを生むというシンプルな考えに立てば、「枯れ木も山の賑わい」でトレードショー自体の活性化にも繋がると考えられる。

 

 とは言え、「パリに来れば、他の都市をスキップしてもほとんど見ることができる」と言われる程プラットフォームが整っているのもまた事実だ。多くのブランドが個別のショールームを開催し、パリで一堂に会する仕組みには一日の長がある。トレードショーの出展者が減り、テロの影響が続くとはいえ、「たゆたゆとも沈まぬ」パリの強かさに対し、右に出る者は居ない。だからこそ、スタートアップをサポートするというトレードショー本来の意義に立ち返って、再構築する事が求められている。

■ トラノイ http://www.tranoi.com/

■ プルミエールクラス https://www.premiere-classe.com/en

■ パリ・シュールモード http://www.parissurmode.com/

■ ウーマン http://manwomanshows.com/shows/woman-paris

■ ジップゾーン http://www.zipzonefrance.com/

■ ヴァンドーム・ラグジュアリー http://www.vendomeluxury-paris.com/


 

 

久保 雅裕(くぼ・まさひろ)
アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

 

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。複数のメディアに執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストア、国内合同展の企画なども行い、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。

 

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