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2018.10.18
【アラタナの濵渦伸次社長に聞く ゾゾグループのBtoB事業の戦略は?㊦】 ゾゾ内で自社ECの広告配信、「情報と在庫を独り占めしない」
前号に引き続き、アラタナの濵渦伸次社長に、アパレル企業の自社ECを支援するBtoB事業の成長戦略を聞いた。
――マークスタイラーの自社ECに対して、どのような集客支援ができるのか。
「例えば、『ゾゾタウン』の中でマークスタイラーさんのブランドを好むユーザー層を絞り込んで、広告を表示することができる」
――自社ECに飛ばす広告を打つのか。
「『ゾゾタウン』からブランドさんの自社ECに飛ばす広告を打つのは不思議に思われるだろうが、レベニューシェアで取り組むことで、ちゃんと利益を得られる。ブランドさんが売りたい商品の広告を表示することもできる。その際、例えば昨年はブランドさんの自社ECでトレンチコートを買ったユーザーにはトレンチの広告を排除することもでき、『ゾゾタウン』の販売データだけでなく、自社ECのデータも組み合わせて広告を打つことで精度を高められる」
――広告以外では。
「『ゾゾタウン』で買い物をする前の情報、つまり各商品のコーディネート情報は『ウェア』に貯まっており、そのデータも使ってマーケティングしていく。また、『ゾゾタウン』の販売動向から、どのタイミングでマークダウンすれば消化率が上がるかなど、セールの最適なタイミングも導き出せる。販売開始後のコンバージョンを見ながら、まだ値下げしなくても売れるといったデータも予測できるため、ダイナミックプライシングに近いことをブランドさんの自社ECでもできるように情報提供したい」
「グループのデータを使えるのは来年4月からで、まずは物流支援からになるが、データを活用して商品のベストな投入時期だったり、将来的にはサプライチェーン全体にイノベーションを起こしたい」
――提供できるデータの範囲は。
「顧客データやサイズデータはオープンにしないが、販促に使えるデータは開放する。前澤も『ゾゾと戦略的パートナーシップを結ぶブランドさんの自社ECには同じ愛を注ぐ』と言っている。ゾゾでできるマーケティングは戦略的パートナーにも提供する」
――独り占めしない。
「情報だけでなく在庫も独り占めしない。今までは『ゾゾvs実店舗』だったと思うが、今後はゾゾもブランドさんの自社ECも実店舗もすべてのチャネルの売り上げを伸ばす取り組みを重視したい。もう、『対ゾゾ』『脱ゾゾ』ではなくなる。実店舗も含めて、売れるところに適正在庫を配分する。実店舗の方が売れるのであれば、ゾゾへの配分を減らすこともある」
――実店舗に在庫を届けることも行うのか。
「これまで『ゾゾタウン』からブランドさんの倉庫に在庫を返すことはあったが、今後は実店舗へも在庫補充用に商品を送る。今までは在庫を抱え込もうとしていたが、フェアに必要なところに配分していく。ユーザー目線で在庫切れのない状態を作ることが大事だ。ゾゾだけが儲かればいいという時代ではない」
「緩やかに縮小しているアパレル市場を回復させたいという思いが強く、そのためにはサプライチェーンを変えないといけない。アパレルを儲かる事業にするためにもデータを活用してもらい、どの売り場でも在庫切れのない世界を作りたい」
――BtoB事業のターゲットは。
「元々、当社は300くらいの通販サイトを管理していて、その取扱高は合計で250億円~300億円程度だった。そういう意味では割と小さいサイトが得意だ。マークスタイラーさんのような大きなサイトだけでなく、まだ売れていない小さなブランドを売れるようにする作業は楽しい。グループの仕組みやノウハウを活用して『0』から『1』にするケースにもしっかり取り組みたい」(おわり)