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2017.12.14

読者が選ぶ2017年10大ニュース 「宅配値上げ」が1位

 
 残りわずかとなった2017年。今年も通販業界では様々な出来事が起きている。注目すべきキーワードとなったのは「値上げ」で、大方の予想通り宅配運賃や郵便料金の値上げが上位に食い込むなど、通販企業にとってはあまり歓迎できない話題が目立ったようだ。その一方で、AIなどを起点とした新しいサービスも次々と誕生しており、通販の新時代到来も予感させている。今年1年間に通販業界で起きた主な出来事を読者と共に振り返ってみた。
 

 「2017年の通販業界10大ニュース」は、今年の通販業界で起きた主な出来事やニュース、トレンドなどを本紙編集部が20項目程度に絞り込んで、読者アンケートを受けてランキング化したもの。アンケートは今後の市場動向にとって重要だと思う項目から順番に3つまで受け付けており、合わせてその理由も聞いている。

 
運賃値上げがコストに直撃
 
 圧倒的な大差で今回1位となったのが、「再配達問題と宅配運賃値上げ」で226ポイント。2位の5倍以上となるポイントを獲得している。通販サービスの根幹を支える配送に関するニュースということもあって、多くの企業が最重要項目として捉えており、回答が集中した。
 
 再配達などに伴う作業員の負担増加に伴って、ヤマト運輸が10月1日に宅急便の一般向け基本運賃値上げに踏み切り、並行して他の大手宅配便会社も含め大口取引先に対する運賃引き上げ要請を実施している。対応する通販企業では顧客から徴収する配送料の引き上げを行ってコスト吸収を顧客に転嫁する動きも見られるが、大幅な引き上げは難しく、配送コストの増加が進んでいる。
 

 

 読者からの意見としては「まさに死活問題。送料無料が当たり前の風潮を180度転換させて、顧客へ送料ありきを浸透させていく必要がある。業界全体でのルール・枠組み作りも必要」をはじめ、「通販企業にとって物流コスト増は影響度が高い。損益を直撃する問題かつ、物流なくしてはビジネスが成り立たないため、どうやってコストを吸収するか重要度の高い検討課題である」、「時間帯の変更など、直接業務にかかわる出来事だった。今後も再配達の負担を減らすサービスが増えるだろうと予測する」、「2017年は運賃・運送問題が表面化した1年だった。これを契機に業界全体が健全な方向へ進むことを望む」、「流通に大きな変化はないと考えるが、売価アップなどで通販の優位性が薄れる」、「通販の普及に宅配が追い付いていない。もしくは大手通販の独占状態。各社大きな課題になっている」といった声が聞かれた。
 
 また、「今年の4月に運賃値上げに応じたが、来年以降も再値上げの要請が推測される」や「EC各社の配送料値上げにより、消費者がEC利用に慎重になる」との声もあり、来年以降も尾を引く問題として捉える意見も数多く見られた。
 

 

 
機能性表示食品で初の措置命令
 
 
 2位となったのは「機能性表示食品で初、『葛の花』に措置命令」で39ポイント。
 
 11月7日に消費者庁が「葛の花由来イソフラボン」を配合する機能性表示食品を販売する16社に、景品表示法に基づく措置命令を下したもので、機能性表示食品に対する処分はこれが初めてとなる。摂取するだけであたかも容易に痩身効果が得られるかのように表示していたとして「優良誤認」と判断している。
 
 元々、機能性表示食品制度は安倍首相の「表示解禁」宣言を受けて、成長戦略の一環として始まったものだが、今回の一斉大量処分によって一転、同市場の信頼を揺るがす事態に発展した。規制に舵を切る消費者庁に対して、事業者からは困惑の声も上がっている。
 
 主な回答としては「機能性表示食品であったとしても、広告表現など、より一層慎重に対応する必要がある」といった意見に加え、「規制強化、ガイドライン強化につながる」や「この問題というよりも、健康食品の広告表現に関する規制が今年大きく変わったので、長年健康食品の販売を行っているが、正直、現状でどういった広告であればよいのかがよく分からない」など、健食行政の規制を巡る姿勢に対して不安を感じている声がいくつか見られた。
 
 回答企業の中にも実際に行政処分を受けて広告表示の見直しを行ったところがあり、「健食企業にとって『機能性』や『トクホ』というお墨付きが意味をなさなくなっていくとエビデンスなど独自の情報の管理、表現の規制に対する社内管理体制の整備が急務であると考えられる」という回答があった。
 
6月にははがき料金も値上がり
 
 
 1位の宅配運賃と同様にコストアップに直結する話題として、「郵便料金値上げ」が3位にランクインした。
 
 日本郵便が6月1日よりはがきの料金を52円から62円へ値上げ。郵便料金の値上げは23年ぶりとなり、はがきの他に定形外郵便やメール便のそれぞれの一部も引き上げている。
 
 通販企業などダイレクトメールや受注手段としてはがきを活用する事業者にとっては、昨年6月の大口利用の割引率引き下げによる"実質値上げ"に続く値上げとなった。一部では今回の値上げによって、はがきの利用数自体が減少を招く可能性も生じるとの見方もあり、そのために再度値上げされる恐れもあることから今後の動向についても大きく注目されている。
 
 なお、同社では宅配便「ゆうパック」の一般向け基本運賃を来年3月1日から平均12%値上げすることも発表しており、人件費の上昇などコストアップが背景にあるとしている。
 
 今回の郵便料金値上げについて読者からは、「DMなどの予算増になる」をはじめ、「経費としてウェイトが非常に高いため」や「DMや会員誌などが顧客との主な接点となっているため、投函数を減らすことが難しいから」という回答があった。
 
AI活用、今年も注目 人手不足問題は一層顕著に
 
 
 4位につけたのが「AIの通販利用に注目」。昨年の5位に引き続き、今年もまたランクイン。人力では賄いきれない作業を正確に行うことができ、マーケティングや自動接客など幅広い分野にも応用が効くことから、導入への期待が高まっている。「今後の人材不足と業務の効率化への対応にAIは欠かせないサービス。データ分析、コールセンターなど他社活用の動向を注視しながら検討したい」といった声があった。
 
 5位には「人手不足、今年も顕在化」がランクイン。近年は物流センターやコールセンター、IT現場といった通販に関係の深い分野で慢性的な人手不足が散見。アンケートでは「規模拡大において直面する問題のため」という切実な声も聞かれており、解決に向けては効率的な人員配置の見直しや、前述のAIを活用した省人化などが鍵となっていく。
 
 6位となったのは「アスクルの倉庫火災」。2月にアスクルの埼玉県内の大型物流拠点で火災が発生。13日目に鎮火したものの、発生直後より首都圏を含む東日本エリアからの受注・出荷を停止したこともあって、通販サイト「LOHACO(ロハコ)」の売上高が大幅に落ち込む深刻な被害があった。「外注しているロジで万一あのような火災が発生した場合の被害と、その先にある顧客ロスが経営に甚大な影響を及ぼす可能性がある」という回答が寄せられた。
 

 

 7位には「個人情報流出、ECで相次ぐ」が選出された。今年もまた起きてしまった個人情報を巡る不祥事。メルカリではサーバーの切り替えに伴う不具合により最大5万人分の個人情報誤表示があったほか、ジェネシスECでも通販サイト利用者のカード情報約9500件が流出した。アンケートでは「クレジット決済が一般化している中、PCI DSS対応は不可欠」との指摘があった。
 
 8位には「食品通販に大手参入相次ぐ」がランクイン。アマゾンの生鮮食品販売「Amazonフレッシュ」が4月にスタートし、11月にはセブン&アイ・ホールディングスがアスクルと組んで生鮮食品のネット販売を開始。大企業の相次ぐ参戦によりシェア争いの激化が予想されている。「食品通販部門に対し、参入各社がどの程度予算をつぎ込み拡大を図っていくか気になる」や「大手なら安心できると、近隣でも利用する顧客は多いと思われる」といった回答が見られた。
 
 9位は「『働き方改革』広がる」。政府主導による働く人の視点に立った労働環境の改善に向けた取り組みで、同一労働同一賃金、長時間労働の是正といった課題への対応が始まっている。「長時間労働の見直しや高齢者雇用など改めて人件費に関わる問題として気付かされた。政府の理想通りとはいかずとも、推進して経費の圧縮に努めたい」という回答があった。
 
 そして10位となったのが「リユース市場拡大へ」。成長目覚ましいメルカリのフリマアプリをはじめ、アパレル分野などで新規参入が拡大。以前と比べて古着・中古品に対する消費者の心理的ハードルが下がっていることもあり、市場の拡大を後押ししている。「すでに1兆円規模といわれる個人売買の市場が生まれたことでアパレル市場の(新品)販売機会がロスしてしまったこと。今後、よりリユース市場が活性化すると独自の価値を持たないアパレル業者はさらに苦戦する」との意見が聞かれた。
 
次点にはゾゾのPB
 
 
 なお、ベスト10からは圏外となってしまったが「ゾゾ、PB商品販売へ」が次点につけている。スタートトゥデイが立ち上げるプライベートブランド(PB)について、採寸用のボディースーツ「ゾゾスーツ」の無料配布受け付けを開始。予約が殺到し、一部では発送に遅れが生じている状況にもなっている。注目度は非常に高く、アンケートでも「20万件以上のサイズ情報を入手できるインパクトが非常に大きかった。今後、ファーストリテイリングの売上げを食ってしまうのかが気になる。タイトやオーバーサイズなどのニーズに応えることができるかも注目」との声があった。
 
 そのほか、「"ライブコマース"に脚光」「スマートスピーカー続々」といったネット販売やこれからの通販のデバイスとなる可能性を秘めた新サービスも下位に選ばれている。
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