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2020.09.03

盛り上がりをみせるライブコマースの現状 コロナ禍で各社注目、成功例も

 

 数年前から徐々に取り組みが始まっていたライブコマース。顧客とリアルタイムでやり取りでき、訴求力も高い同手法は注目されてはいたが、生配信ならではの独特な訴求方法や継続視聴を促す理由付けの難しさなどから一部の事業者を除き、手を出しにくかったようだ。しかし、このコロナ禍により再び展開を模索し始めた企業は増え、盛り上がりを見せている。ライブコマースを展開し始めた各社の事例を見つつ、成果や現状を見ていく。(姉妹誌「月刊ネット販売」9月号に詳細)

 

配信動画の二次活用に着手

シップス


 セレクトショップ運営のシップスは5月22日から自社通販サイト内でライブコマース「SHIPS SHOPPING TV」に取り組んでおり、視聴者数などで一定の成果を得ている。今後はライブ動画の二次活用を進め、動画経由の売り上げ拡大につなげるという。

 同社はウェブでも従来以上に商品の魅力を伝えられるライブコマースの可能性を検討していたが、コロナ禍で実店舗の休業を余儀なくされる中、顧客へのオンライン接客や商品訴求、店舗スタッフの活用といった目的でライブコマースをスタート。実店舗再開後も継続し、7月末までに12回の番組を配信した。

 シップスはクラウド型ライブコマースサービス「TAGsAPI」を採用。パソコンサイトはライブ映像の右側に紹介商品の一覧が表示され、スマホサイトの場合は映像の下をスクロールするとアイテム一覧を確認でき、各商品をクリックすると自社ECの詳細ページに遷移して購入できるようにした。

 7月末までは、今春始動した新ブランド「シップスエニィ」の認知拡大を図る狙いもあって同ブランドで10回、残り2回は主力の「シップス」で実施。両ブランドの店舗販売員とPR担当者などが出演した。スタート当初は金曜と土曜の午後9時から約1時間の尺で配信したが、最近では曜日、時間帯、尺などを変えながらテストを繰り返している。

 同社はライブ配信の醍醐味である視聴者とのインタラクティブなやりとりを重視。ライブ配信自体が初めてだったこともあり、担当者それぞれの役割分担を明確にすることでスムーズに番組を進行できるようにした。

 例えば、基本的には出演者が視聴者の質問に直接答えるものの、ライブ配信であっても実際にオンラインで流れる映像との間に時間のズレが生じるため、ライブで次の話題に移っているときなどは、前の質問に裏方のスタッフが画面上で回答するなどした。また、番組では毎回、初めてライブ配信を視聴するユーザーを意識し、サイトの見方やEC購入の方法なども丁寧に説明している。

 同社では「声から生まれる説得力は動画配信ならではの強み」(萩原千春デジタルマーケティング課課長)とし、商品の細かい機能や素材などは視聴後に自社ECで確認してもらい、ライブ配信では商品の質感やコーディネートの組み方、商品に対する思いなどをメインに発信している。

 視聴してもらうための集客面では、オウンドメディアやメール、SNSでの告知に加え、SNS広告などの活用も試している。

 ライブコマースの視聴者数は想定よりも多く、エンゲージメントの高いユーザーが多いのが特徴で、実店舗でも「ライブコマースを見た」という話題になるという。また、平均視聴時間は約20分と長く、飽きさせないような番組構成の成果も出ているようだ。一方、売り上げは当初、ライブ配信中や配信直後に重きを置いていたが、実際にはアーカイブ経由が多いことから、今後は配信動画の二次活用を推進し、少し長いスパンでライブの効果を検証していく。

 現状、シップスのインスタグラムアカウントのIGTVにライブ配信の動画を展開しており、インスタグラム内の写真や動画をハッシュタグで収集して自社ECに表示するツール「visumo」を介してIGVT動画を自社ECの商品ページに出せるようにしたり、IGVTの特集ページを作ることで、視聴数のさらなる拡大や購入率向上につなげる狙いだ。

 また、足もとではライブコマース以外でもインスタライブに取り組んでおり、今後はユーチューブでの動画配信も含めて各チャネルの特性を生かしながらさまざま顧客層にリーチしていくとともに、動画コンテンツの充実を図る考えだ。

 なお、8月もライブコマースを毎週のように実施しており、引き続き「シップス」と「シップスエニィ」の商品を提案する。

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