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2020.03.30

dファッションが成長けん引【マガシークの井上社長に聞く ファッションECの差別化戦略㊤】 自社カードの新規会員も拡大

 

 マガシークは、ファッション通販サイト「マガシーク」と「dファッション」の2サイトを軸に成長を目指す。2020年3月期の取扱高は暖冬などの影響があったものの、前年比10%近い伸びとなる290億円程度で着地する見通しだ。マガシークサイトについては「ヘビーユーザーを大事にしていく」と語る井上直也社長(=写真)に、足もとの事業環境や差別化戦略などを聞いた。
 
――ファッションECの事業環境は。

 「ファッションECではポイントやクーポン施策が当たり前になってしまい、お客様もちょっとやそっとでは反応してくれない。そういう意味でも、かなりのポイントを付与している『dファッション』と、楽天さんに勢いがある」

 ――「dファッション」は堅調か。

 「『dファッション』は1年を通じて堅調に伸びて全体をけん引した結果、全社でも前年比10%近い伸びを確保できている。ただ、2020年3月期の取扱高として300億円乗せを目指していたが、少しショートして290億円程度で着地する見込みだ」

 ――足もとではコロナウィルスの問題も。

 「コロナウィルスの問題で一番大きいのは消費ムードが下がっていること。出かけないとか、イベントがないということで消費意欲がかなり落ちている。ふたつ目は(ブランド側に)中国生産の一部商品で納期遅れの影響があると見ていて、昨年に比べるとセールの売り上げ比率が高い」

 ――どのくらいか。

 「昨年で言うと、3月中旬では新作などのプロパー品が受注の60%~65%を占めていたが、今年は50%くらいにとどまっていて、セール品が多い印象だ。アパレル各社にヒアリングしているが、品番の半分以上が中国生産という企業も少なくない。ブランドによっては4月からゴールデンウィークくらいまで納期遅延がありそうだ。とくに実店舗を持たない安価なウェブブランドは中国生産が大半で、そうしたブランドが苦戦している。大手でも予約商品をとれる状況にない。例年であれば予約商品がもっと多く、春コートも売れる時期だが出足が悪い」

 ――暖冬のインパクトもあった。

 「業界全体として秋冬物のダウンやアウターへのマイナス影響が大きかった。当社もアウター不振の影響が想定より大きく、今期の取扱高がショートした要因だ」

 ――送料を3月3日から再値上げした。

 「運送会社の運賃値上げに伴って昨年4月に送料を税別200円から300円に、今回も300円から400円に100円ずつ値上げさせて頂いた。一方でお客様都合の返品であっても返送料が無料になる『おうちde試着』施策は継続している。返品送料無料はゾゾさんにはないため、当社独自の強みとして取り組んでいきたい」

 ――ECでは送料無料のニーズが高い。

 「今回、送料を値上げさせて頂いたが、マガシークカード会員はいつでも全品送料無料で、入会金も年会費もかからずメリットしかないマガシークカード会員を増やしていきたい。とくに『マガシーク』ではコアなファンを増やしていく方針だ。カード会員は送料無料ということを打ち出していく」

 ――カード会員の伸び率は。

 「かなり増えてきている。19年度はマガシークカードの新規獲得に注力し、前年比50%くらい増えた。引き続き、カード会員の獲得を進めて顧客数に占める割合を高めていきたい。マガシークカード会員は全品送料無料だけでなく、年4回開催の全品10%オフなどの特典が受けられる。来年度はロイヤルティプログラムもテコ入れする。よく買って頂いているお客様により恩恵があるようにし、ヘビーユーザーに手厚いサイトにしていく」

 ――既存顧客は大事だ。

 「ゾゾさんの伸びも止まってきた中で、ファッションをECで買う消費者は一通りどこかのサイトで買った経験があると思う。そのため、完全な新規客というよりは、休眠客や購入頻度の低いユーザーにより買ってもらうことが大事になる」

 ――新規は「dファッション」の役割か。

 「その通りだ。『dファッション』ではライトユーザーを大量に獲得していく戦略だ。dポイントを軸にドコモからのさまざまな導線もあり、引き続き『dファッション』は新規比率が高い」

 ――物流費の上昇や値引き合戦などもあって小さいモールは生き残れない。

 「以前は100億円の取扱高がないと厳しいと思っていたが、より体力勝負になってきて300億円規模でも大変だ。ブランディングのためにあるサイトは別にして、ECで利益を出していくという意味では、この1~2年は難しい環境にある。当社としてはブランドの自社EC支援を行うBto事業も合わせて戦っていかないと利益拡大は難しい」

 ――運営する2サイトではどんな価値を提供していくのか。

 「『dファッション』についてはdポイントとともにドコモの戦略の中で大きな役割があり、もはやファッションECは携帯キャリアを中心としたポイント経済圏の戦いになってきている。ソフトバンクとヤフーのPayPay、ドコモのdポイント、キャリアに参入する楽天は楽天ポイントと、大きくはこの3つが戦っている。『dファッション』はdポイント経済圏の中のファッション領域の位置づけで意義がある」

 ――「マガシーク」については。

 「ゾゾさんはマス化が進み客単価も下がっている中で、『マガシーク』は空白地帯になりつつある高単価でファッションにこだわりがある層にフォーカスする。ふたつのサイトを運営している意味もある」(つづく)

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