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2020.02.27

ファッション通販売上高ランキング 100億円以上の通販会社8社に、有店舗アパレルの存在感高まる、モールはゾゾが話題独占

 通販新聞社が行ったファッション商材の通販売上高調査では、総合系通販企業の苦戦が目立つ一方、有店舗アパレルのECは高成長が続き、依然として伸びしろが感じられるなど好不調の差が鮮明だ。モール運営企業を除き、ファッション領域で100億円以上を売る通販会社は8社と見られ、ユニクロを筆頭に、自社ECを中心に売り上げを伸ばす有店舗アパレルに通販市場でも主役の座を奪われつつある。当該市場における潮流や注目企業の動向などについて見ていく。(表の見方:通販会社は衣料品分野の売上高、アパレル企業はECモール経由も含めた通販売上高 ※表は週刊通販新聞本紙で掲載した1~75位までの売上高ランキングの中から上位20位のみを掲載。21位~75位は本紙のみに掲載しております)

 

総合通販企業は得意分野に特化

 

 総合系の通販企業は、アマゾンなどに代表されるECプラットフォーマーが圧倒的な品ぞろえで支持される中、全方位的な商品展開で勝負するのは分が悪く、手間とコストのかかるカタログを縮小しつつ、個性的な商品を持つ得意分野に注力する傾向が強まっている。

 千趣会は、赤字が続く通販事業の抜本改革に向け事業規模の適正化を促進。仕入れ先を絞って協業体制を強化し、商品型数の削減を進めてきた。ファッション商材ではとくにアウター類を減らして子供服や機能性インナー、フォーマルウエア、大きいサイズ衣料などの戦える商品を充実させ、従来は競合と捉えていたアマゾンや楽天市場など総合モールの売り場も活用している。

 ニッセンも強みのある大きいサイズ衣料など特殊サイズアパレルを強化して経営再建を進めており、大きいサイズ衣料に特化したECモール「アリノマ」を運営。自社商品だけでなく、人気ブランドや他の通販企業の大きいサイズ衣料や下着、ファッション雑貨などを扱っているほか、昨年2月には大きいサイズの女性向けアパレル通販サイト「クレット」を運営するマロンスタイルを完全子会社化するなど、特殊サイズアパレルの領域で存在感を高めようとしている。

 一方、中高年向け衣料では根強いファンに支えられているベルーナだが、若年層向けは苦戦しており、テコ入れに着手。昨年1月に当該層向けのファッションブランド「リュリュ」を「ジーナ」に刷新した。ギャル向けのイメージを脱却し、ネットを主軸にした顧客開拓を本格化。中心価格帯も下げ、より手頃に購入できる商品を増やす一方で、”高見え”を重視した見せ方や商品作りを心がけ、商品の企画開始時期は従来よりも2カ月後ろ倒ししてトレンドを盛り込めるようにした。また、若年層向けのファッション通販モール「リュリュモール」を昨年6月に開設。試行錯誤の段階ながら、豊富なサイズ展開と他のECモールにも出店する人気店を誘致している。

 近年は力強さを欠いていたオットージャパンは、昨年5月にリブランディングを実施した。認知度の高い「オットー」の傘の下に新ブランドを含めた4つのブランドを配置。ブランド間の波及効果が期待でき、リソースの効率運用につながる”マスターブランド戦略”に切り替えるとともに、60代以上の既存顧客を大事にしながらも、40~50代女性をターゲットの中心に据えて新客開拓に取り組んでいる。

 

 テレビでは、通販専門放送大手のジュピターショップチャンネルとQVCジャパンがそろってファッション通販売上高ランキングの5位以内を守った。前者は売上高の3割を、後者は同5割強を衣料品および服飾雑貨、ジュエリーが占めていると見られる。

 また、楽天市場などの総合モールを主戦場としてきたネット専業ブランドはモール内の競争が加熱し、浮き沈みも激しい。近年は品ぞろえと顧客層のマス化を進めるファッションECモールの戦略と合致し、「ゾゾタウン」や「ショップリスト」などに出店して一定の認知と成果を上げるブランドが出てきたが、衣料品ECモールの低価格化につながっている。

 

ゾゾがPB失敗迷走し身売りへ

 

 ファッションECモール(※売上高推移は表㊦を参照)については昨年もゾゾが、常時10%オフで販売する「ゾゾアリガトー割引」やヤフー(Zホールディングス)への身売り、前澤前社長の退任などで話題をさらった。

 ゾゾは人気ショップのサイト誘致が進み、商品取扱高拡大への起爆剤になり得る新規ショップが少なくなる中、18年1月には自社プライベートブランド(PB)事業で初めての物作りに挑戦。幅広いユーザー層の開拓と海外展開を同時に進める計画だったが、PB事業は採寸スーツによる計測の手間や一部商品の生産不具合もあって縮小を余儀なくされ、PBを軸にした海外展開は練り直すことになった。そうした状況下、18年12月にゾゾが抜いた諸刃の剣が、同社負担で常時10%割引を行う有料会員サービスだった。

 

 ECチャネルではファッション商材も品ぞろえと価格で選ばれやすく、ECモールとアパレル側とでユーザー獲得の綱引きを繰り返してきた経緯がある。ゾゾが対象ブランドの商品を期間限定で安く購入できるブランドクーポンをいち早く導入して成果を出すと、競合のモールやアパレル自社ECもそれに追随。クーポン施策をさらに強化するゾゾに対し、ブランド側は”ささやきセール”で対抗する。

 当該セールはアパレル店頭で実施していた会員向けの先行セールで、店頭価格は定価でも会員証を提示することで割引が受けられる。これを自社ECにも適用。ECモールがセール前に定価で販売している時期にブランド側は店頭と自社ECで先に顧客を囲い込む。最近は自社ECだけでタイムセールなどの施策を打つ企業もあり、アパレル側が価格のコントロールを強化し始めたことで、ECモールに影響が出ている。

 そのタイミングで発表されたのがゾゾのアリガトー割引で、店頭で見た商品をゾゾで買う顧客が増えることを嫌ったアパレル企業の一部が「ゾゾタウン」から離れたり、提供する商品のコントロールを強化する動きが広まったこともあり、ゾゾは昨年5月末に同会員制度を終了した。

 PB失敗以降の迷走を受けてゾゾの株価・時価総額は大幅に下落。昨年9月のヤフーによるゾゾ買収の発表、社長交代につながり、課題だった新たなユーザー層の獲得はヤフーが新設したECモール「PayPayモール」内の売り場が担うことになった。

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