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2019.11.14
【検証 欧米向け越境EC イーベイ・ジャパン】 消費増税で還付メリット拡大、国内事業で伸び悩む企業にも狙い
越境ECプラットフォームを運営するイーベイ・ジャパンでは、日本出店者の欧米向け越境ECが順調に成長している。現地での日本商品の人気は高く、大型商戦期も多い米国市場の特性を背景に、中国向け越境ECとはまた違った切り口から市場が広がっている(写真㊤は佐藤社長)。
同社が公表した今第3四半期(7月~9月)での日本出店者の販売動向を見ると、玩具やカメラ関連商材、ビデオゲームなどが大きく伸長。「マジック‥ザ・ギャザリング」(日本版)や「ポケモン」などのカードゲームが右肩上がりで推移したほか、カメラでは40万~70万円前後といった単価の高いレンズ類が伸びた。また、直近の傾向としてメーカーが販売を終了した商品の需要が急激に伸びるということがあり、携帯ゲーム機の「PS Vita PCH―2000」や、腕時計の「セイコー メカニカル SARB033」がともに好調だった。
日本商品自体の魅力に加え、サイト内での販促メニューを強化したことも奏功している。以前は出店者が活用する広告メニューを積極的に推進していなかったが、今年から本格展開している「プロモーテッドリスティング」は、埋もれている商品に販売機会を与えるという面で大きな効果があったという。同広告は成果報酬型で料率も出店者が自由に設定できる内容で、まずは売りたい商品一つを商品検索結果に広告として出すことでトラフィックや閲覧を集め、その後の購買につなげるという仕組み。実際に日本の出店者も商品点数ベースでは昨年の2倍ほど同広告を活用するなど、その評価は高かった。
“州税”強化の逆風も影響無し
結果を見れば盛況だった3Qだが、懸念材料が無かったわけではない。売り上げの大多数を占める米国は今年から州別の税制の中で、実店舗だけでなく越境を含むECにおいても徴収を強化するように規制が進んでいた。そのため、カリフォルニアの場合は10%近い価格上昇になるなど、同社では買い控えの影響も懸念していたという。しかし、「日本からしか買えない商材については全く影響がなく、逆に数字が伸び続けた。今後もこの流れは変わらないだろう」(佐藤社長)と説明。逆風も感じさせない、米国越境EC市場の強さが際立つ結果となった。
関連して、今年は日本の税制が出店者にとってプラスに働いている面もあるという。それが「輸出免税」で、輸出のために仕入れた商品に課せられた消費税や輸出業務のために支出した諸経費への国内消費税は後に還付が受けられるというもの。これまでは8%分の還付だったが、この10月からは10%になったため2%分増えたことになり、価格調整やマーケティングに投下できるコストの原資などが増えることにもなるようだ。「(消費増税で)国内の需要が落ちる懸念もある中、海外に挑戦すると還付されるというポジティブな面がある。長くやっているセラーさんが気づいていないケースもあるので改めて認知を広めたい」(佐藤社長)とした。
今後についてはクリスマス向け商戦とも重なる11月後半~12月前半にかけて、「サンクスギビングデー」「サイバーマンデー」といった大型商戦期が控えている。加えて、3月には「タックスリターン」もあることから、出店者にとってはこの時期に向けて人気商品を確保しておくことが必要となる。国内需要が高まっている商品もあることから、中古品の買い取りも含めて、夏頃から出店者側に調達の準備を強化するよう促している。
中国向けとは違うメリット
日本の場合、越境ECと聞くと、中国向けを連想するケースがまだまだ多い。しかし、欧米を得意とする同社では中国とはまた違った市場特性や良さがあると考えている。
「独身の日」に代表されるようにそのスケールメリットが魅力となっている中国向け越境ECだが、一方で現地の大手モールへの出店・広告費や、KOLといったインフルエンサーの活用による販促など、露出するためにはマーケティングコストの割合が大きく比例することも指摘されている。
また、ECに関わる規制が頻繁に変化するという事情もあり、「その都度インフラも含めて合わせていったり、内容を深く理解してオペレーションを変えていくなど、ボリュームがある代わりにそこに労力やコストがかかる」(同)と分析する。同社の場合、前述の”州税”の規制に関しても、必要な処理をマーケットプレイス側ですべて行ったため、出店者側は従来のオペレーションを変える手間はなかった。新たな負担が生じることなく、ビジネスを継続できる仕組みができているという。
加えて、イーベイでは米国向けが大半を占めているが、1つのアカウントで欧州圏をはじめとする様々な国にもアプローチできるメリットがあることから、チャンスを生み出せる機会が多くなるとしている。
同社では今後も引き続き欧米向け越境EC市場の拡大を見込んでおり、シュリンクする国内市場を補うための新規事業として挑戦する日本企業のニーズも開拓していく考え。