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2019.07.12
【ベルーナの安野清社長に聞く②】 「ネットはセール依存を脱却」、リュリュモールは“徐行運転”
前回に続き、ベルーナの安野清社長に今後のネット販売戦略などを聞いた。
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――リュリュモールの立ち上がりに関して。
「システムの安定稼働を重視しており、集客はこれから。まずは顧客にストレスをかけないための基盤づくりが重要だと思っている。あまり無理はせず、体制が整って『いける』となったらアクセルを踏み込むつもりで、トップスピードを出すためにも現段階では徐行運転を心がけている」
「もう一つ重要なのは、ライバルが多いだけに、いかに『らしさ』を出すか。これから考えたいと思っているが、やっていくうちに出てくると思う。他社と同じことをやっていては埋没してしまう」
「現状は大きいサイズが強く、3Lや4Lの割合が高いという特徴がある。ただ、それだけでは不十分なので、これから勝ちパターンをしっかり作っていかなければならない」
――参加ブランド数は約40だ。
「まだあまり増やすなとは言っている。出店料は固定費がなく、売り上げの35%を徴収する。商品は当社の倉庫からまとめて出荷する」
――ジーラの商品もリュリュモールにおける1ショップとなっている。
「当然、競争に負ければ売れなくなるわけだ。社内でもその辺りの意識は高まっている」
――システム面で工夫している部分は。
「返品交換をネットで完結するようにしている。今までは、まずコールセンターに電話する必要があった。また、ブランド別に商品を探すことが難しかったので、スムーズに探せるように変更した。競合モールと同様に、ブランドごとのクーポンも発行できる仕組みなので、テストして結果が出れば拡大していきたい」
――顧客の属性上、スマートフォンからのアクセスが中心となるが、専用アプリは出さないのか。
「これから用意したいと思っている。集客面でも、インスタグラムなどの活用も考えたい」
――総合通販事業におけるネット販売の取り組みは。
「当社は後発ということもあり、当初は成果が出なかったが、4年前から2年前にかけて、顧客が買いやすいサイトに作り変えたほか、それを求めている顧客がどこにいるのか、どうすればサイトに来てもらえるのか、つまり集客と連動させる仕組みを作った。これにより、2年連続で前期比約25%増を達成した。しかし、19年3月期に関しては売り上げが横ばいだった。2年ほど前から、セールで顧客を集めて売り上げを上積みするという形になっており、セール商品の売上比率がどんどん高まっていった。その結果、昨夏は売り上げは伸びても利益は減るという構造に陥った。原価率が大幅に悪化しているので媒体費率を絞り、採算を合わせる必要が出てくるが、そうなると売り上げが伸びない」
――具体的に、どんな工夫をしているのか。
「『ミセスのためのコーディネート提案』や『体型カバーなど、ミセスのお悩み解消』など、特集コンテンツにかなり力を入れており、顧客をしっかり引っ張ってきて、着実に買ってもらうというサイクルが機能し始めた。コンバージョン率も向上している。これまでマス媒体の広告では商品を絞って勝負してきたわけだが、ネットは『いろいろな商品があります』という見せ方をしていた。マス媒体と同じく定番商品を定め、目立たせる形とした」
――セールの回数をかなり減らした。
「毎週土日にセールをする、というようなことは控えている。以前は夏商戦のスタートで昨年売れ残った夏物をセールで販売していた。ただ、処分品を買った顧客は新商品を買ってくれないわけで、一時的には良くても、長い目で見たら自殺行為になりかねないようなことをやってしまっていたわけだ。昨夏の売れ残りはシーズンの山を超えてから処分するようにするなど、セールの設計を全般的に見直した」
――ネット専用商品の比率は。
「順調に増えており、ネット売り上げの約20%がネット専用商品だ。総合通販における前期のEC比率は23・3%だが、専門通販においては、化粧品の『オージオ』やワイン、看護師向けの『ナースリー』のEC比率は40%ほどあり、総合通販事業でももっと伸ばせると思っている」
―― 総合通販事業全体の客単価については。
「下げ止まってきた感じだ。ただ、今後は安いものだけでなく、中価格帯にチャレンジしようと思っている。低価格のラインから5割ほど高い、4500円程度のラインを考えている」
――低価格帯商品が占める割合は。
「媒体にもよるが、品番数では半分くらいとなっている。あまりにも下がりすぎたので、歯止めをかけるためにも、商品価格を上げた新しい媒体を立ち上げる予定だ。安売りで集めた顧客リストでは合わないので、通用するリストの収集から始めないといけない。中高年をターゲットとする予定だが、具体的なコンセプトはこれから決める」
――既存のカタログでは単価を上げる工夫をしないのか。
「それもやっている。今年は客単価をプラスに転じたいと思っており、ここが上がれば運賃値上げの負担も軽減される。売り上げを増やしながら単価も上げる方法を模索したい」 (つづく)