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2019.06.20
【ニューバランスジャパンのEC戦略㊤】 顧客視点でサービス拡充、ワンクリック購入や電話注文など、チャットもテスト導入
ニューバランスジャパンは、顧客に寄り添ったサービス設計で公式通販サイト(画像)の会員数を大きく伸ばしており、自社EC売上高も2ケタ成長を続けているようだ。
同社は、顔の見えない販売チャネルであってもメーカーとして”信頼されるEC”を目指した運営体制を構築。公式通販サイトに対する顧客の声を直接聞く機会の多いコールセンターは全社のお客様相談室が対応するのではなく、Eコマース部の専用コールセンターを構えており、VOC(ボイスオブカスタマー)レポートを部内で共有できるようにしている。
公式ECには「お客様からの声」ページを設け、ユーザーの声から生まれた新しいサービスを当該ページに掲載することをカスタマーケアチームのKPIのひとつに設定。改善事例を見える化し、事例が増えれば増えるほど利便性が高まっていることの指標となるようにした。
また、倉庫にはECの専任スタッフを常駐させ、目検による出荷品質の確認や返品商品の分析などを行うことで、物流品質の改善や新たなサービス立案につなげているようだ。
公式ECは売るだけのサイトではなく、正確なブランド情報を届ける場として運営。ECはコンバージョン率を重視する企業もある中、「メーカーの公式ECはブランド好きな人にとってのファーストデスティネーションであるべき」(牧嶋琢実Eコマース部シニアマネージャー)とし、購入目的ではない人が来ても楽しいサイト作りに切り替えてからトラフィックが格段に増えたという。
著名人を起用した大型キャンペーンなどを実施するとトラフィックが急激に増え、コンバージョン率は下がるが、キャンペーンなどで初めてECとの接点を持つユーザーも大事にする。一方で、購入目的のユーザーに対するコンバージョン率は決済サービスの充実などで補完していく考え。
昨年夏頃には多様化するユーザーに対応し、公式ECで電話注文をスタート。ネットリテラシーが高くなくても「ニューバランス」の商品に興味がある人には買い物が楽しめる環境を整備している。最近では、有人対応によるチャットサービスもロイヤルカスタマー向けに試運転中で、半年ほどテストを行った後、少しずつチャットを表示する対象顧客を増やしていく。現状、AIによる返信は行っておらず、FAQが貯まった段階で想定質問と自動回答を用意することは検討しているが、現時点ではすぐに回答できない質問がどれくらいあるかも含めて傾向を把握しているところだ。
買いやすさの面では、昨年秋口から事前にクレジットカード情報を登録しておくことで、ワンクリックで注文できる「1ステップde注文完了サービス」を開始。電車に乗って目的地に着くまでの間に決済まで完了できるスピード感を目指した。例えば、前に座っている人の靴を見て欲しいと思った時に電車内でカード情報を入力することなく買える。同サービスは購入後10分間程度のキャンセル可能時間を設け、衝動買いをしてしまったユーザーが再考できるようにしている。
また、公式ECではコンシェルジュ機能のひとつとして、ウェブ接客ツールを活用してトップページに「カテゴリーサーチはこちら」というポップアップを表示。ショッピングセンターや百貨店の入り口にあるフロアガイドのイメージで、買い物の目的に合わせて探している商品がどこにあるのかをガイドする。今後はさらに検索まわりを強化して利便性の向上に努める考え。
また、人気スニーカーのカスタマイズサービス「NB1」は、ロイヤルカスタマー向けのサービスとしてスタートしたが、最近では贈答品として利用してもらう仕掛けをしている。例えば、Aさんが定年退職するときに、同じ部署の人たちが1パーツずつAさんを思いながらデザインしていける”デザインリレー”のコンテンツを用意。1パーツをデザインして保存するとデザインIDが付与され、当該IDを次にデザインする人が入力してデザインしていく流れで、デザインリレーを続けていくとひとつの靴ができあがる。かかと部分にメッセージ刺繍を入れることもできる。
同社では、「贈る人をイメージしてデザインするような使い方であれば、もっと幅広い層がターゲットになる」(牧嶋シニアマネージャー)としている。(つづく)