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2019.06.19

【2020春夏ミラノメンズ ハイライト】アルマーニ、ゼニア、フェンディ、ドルチェ&ガッバーナ・・・大物が圧巻のショーを開催 サステナビリティは不可欠、アウトドアトレンドはミリタリー、サファリに移行

 2019年6月14日から17日まで、2020春夏ミラノファッションウィークメンズ(以下ミラノメンズ)が開催された。今回は上海でショーを発表した「プラダ(PRADA)」やピッティにてショーを行った「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」や「エムエスジーエム(MSGM)」、ウイメンズ混合で9月にショーを行う「ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)」など重鎮ブランドを欠いたミラノメンズだが、「エトロ(ETRO)」がランウェイに復活、「ステラ マッカートニー(Stella McCartney)」がミラノ2回目となるプレゼンテーションを行うなど明るい話題も。また今回はあまり使われていないところをショー会場に選んだり、セットに趣向を凝らした形でショーを行うブランドも多く、濃厚な4日間となった。

ミラノメンズで発表を続けるビッグネームは大掛かりなショーを開催

エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)

 毎回、ショー会場のルーツがコレクションのテーマと深くリンクする「エルメネジルド ゼニア」。今回、ショーの舞台として選んだのは「Ex Aree falck(旧FALCK社地区)」という20世紀前半に製鉄工場地帯として栄え、95年に閉鎖して以来廃墟になっていたゾーン。現在では地帯はバイオテクノロジーの拠点として見直され、都市再開発ゾーンとしての計画が進められている。

 この“再生”というキーワードが、今コレクションのテーマ「#UseTheExisting」、ひいてはサスティナビリティに注力するゼニアの会社理念に繋がる。このコレクションの大部分は、製造工程で廃棄される切れ端を新たに混紡し織り上げられたウール生地等、すでにある原材料からの革新的な工程により生まれたリサイクル素材が使われているという。

 それをアーティスティックディレクター、アレッサンドロ・サルトリが都会的でスタイリッシュなコレクションとして実現化する。目を引くのはシワ加工やミネラルダイ、フォトプリント、そして素材や織りによって生まれる独特のニュアンスだ。グラデーションやムラ染めのような効果や、あえて不規則なイメージを与えるストライプやパターン柄によって、テーラリングが活きたスーツやジャケットにモダンなイメージを与える。また逆にカジュアルなニットやブルゾンを同生地または同系色でコーディネートすることで、スーツのようにフォーマルに見える提案も。

 サステナビリティと言う視点からもクリエイティビティにおいても、素材が持つ重要性がますます注目されている昨今、生地メーカーという強みをふんだんに活かし、かつメッセージ性の強い「エルメネジルド ゼニア」のショーはミラノメンズの幕開けにふさわしい圧巻の存在感を放っていた。

エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)

 今回のコレクション全体に広がるのがシャイニーな光沢感とエアリーな透明感。オーガンジー、リネンとジュート、シルクとコールドダイのビスコース、ラメ織り、PVCなどを使うことにより、素材の独特の表情がコレクションに個性を与える。それをアンコンジャケットにワイドなパラッツォパンツやパラシュートパンツとコーディネートしたり、シャツにタイドアップしたスタイルにスポーティなジレやパーカを合わせたり。またはクラシックなスーツに極太ベルトでウエストマークしたりハーネスをつけたりといった個性的な演出でカジュアルダウンする一方で、ウォッシュドスエードを使った品のあるトラックスーツが登場したり・・・という感じで、クラシックとスポーツを微妙なバランスで交錯させている。

 最後には「夢とヴィジョン」という今回のポジティブなコレクションテーマに繋がるかのように、「EA7」のユニフォームに身をつつんだオリンピックとパラリンピックの選手達がランウェイに登場しフィナーレを飾った。ちなみに「アルマーニ」は2020年の東京オリンピックとパラリンピックのイタリアナショナルチームのユニフォームを提供することが決まっている。同アイテムは2020年5月から全世界の「エンポリオ アルマーニ」の店舗およびマルチブランドの店舗で購入可能だ。

「エンポリオ アルマーニ」2020春夏コレクション

ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)

 今シーズンの舞台には熱帯のジャングルのようにうっそうと茂る植物と花。それをかき分けるようにモデルが登場しレオパード柄の生地がひかれたランウェイを歩く。

 「Sicilian Tropical」をテーマに、シチリアのバロックとキューバ風のトロピカルテイストに1950年代の雰囲気を融合したコレクション。メインモチーフとなるレオパード柄に加え、バナナやパイナップル、花や植物、トリや動物などの南国情緒あふれるモチーフがプリントや刺繍で登場。そこにポルカドットや様々な太さのストライプ、50年代テイストを添えるピンナップガールのプリントやハンドペイントが加わる。これらの柄はプリントonプリントのパンチの効いたコーディネートからパーツのみのものまで様々に登場。

 オープニングは舞台セットのイメージにふさわしいフィールドジャケットやトレンチなど、ミリタリーやサファリテイスト。そこからはボックスシルエットのシャツにハイウエストのタックトラウザー、シャツをパンツからオーバーにしたり長めのシルエットのコートとのレイヤードなど今年風のコーディネートも見られる。そんな中で、オーガンザや薄く透けるプリントナイロン、コットンなど軽い素材のガウン、マクラメレースのランニングやベースボールシャツやバスケットボールシャツ、ジャカードで色むらをあえて出したジャケットやスーツなど、素材を活かした個性的なアイテムも目に付いた。

 このところブランドのDNAを結集したコレクションが続いていたが、確固たるテーマに沿って魅せた久々の王道的なショーで、改めてブランドの力を見せつけた感じがした。

「ドルチェ&ガッバーナ」2020春夏コレクション

 

ヴェルサーチェ(Versace)

 今回の「ヴェルサーチェ」は“コンテンポラリーな男性像への賛美”を捧げ、年齢を重ねるごとに自信を付けていく一人の若者のパーソナルな旅をイメージしているという。舞台セットとして置かれたランボルギーニ(?)はそんな自由でゴージャスな男性像を象徴しているかのようだ。

 パーツごとに無地とグレンチェックが混ざったジャケット、レオパード柄と無地が半分ずつになったラミネート加工によるコート、ハイウエストでベルトマークされたスーツやレザージャケットなどのミックステイストが映える。またエレクトリックバンド「ザ・プロディジー」等1990年代のカルチャーからのインスピレーションはフリンジ付きレザーアウター、バイクベスト、ダークデニムなどに現れ、それをタイドアップしたクラシックなスタイルとミックス。レオパード柄やスポーツカー、ヴェルサーチェのアイコン的モチーフを使ったプリント、ル―レックス素材など豪華で煌びやかなアイテムも多数。

 女性デザイナーとして常々女性の解放を謳うドナテラだが、今回は男性にも自由と自信に溢れた自己表現を提案した力強いコレクションとなった。

 

エトロ(ETRO)

 今シーズンの「エトロ」のニュースは、この秋公開される映画「スターウォーズ」シリーズの完結作、エピソード9「スター・ウォーズ/ザ・ライズ・オブ・スカイウォーカー」(原題)に因んだ、ルーカスフィルムとのエクスクルーシブコラボレーション。それはこのシリーズに流れる家族、愛、勇気と寛容と言う要素がエトロというブランドやエトロ一家に共通するものからだとか。このユニセックスコレクションは70年代、80年代のスター・ウォーズの代表的なキャラクター(それも善玉キャラのみ)をデジタルプリントしたフーディー、クルーネックのスウェットシャツ、2種類のシャツ、5種類のT-シャツとボマーで登場。

 これに絡み合うコレクションのインピレーションは“砂漠”。これはスターウォーズにも登場する荒涼とした未来世界にもつながるのかも。ゴビ砂漠やサハラ砂漠など世界中各地の砂漠をさまようノマドをイメージしたようなエスニック色の強いコレクションだ。会場となったガレージの床に描かれた世界地図を蹴散らすようにモデル達が歩く。

 オープニングから登場するカシミール模様のポンチョやチュニックシャツ、サファリジャケットから、ジャングル風のパターンを作ったり、透け素材と合わせたジャカード使い、パーツごと素材を変えたパッチワークのようなジャケット、ミニフリンジ付きのジャケットやシャツ、民族衣装のようにも見えるジョガーパンツ、そしてベルベル族が身に着けるようなアクセサリー類に至るまで、ボーダレスなフォークロアテイストが漂う。

 こんなエトロの王道を行くようなワールドワイドな民族的テイストとスターウォーズの宇宙まで広がるボーダレスなイメージがオーバーラップした壮大なコレクションとなった。

 

フェンディ(FENDI)

 今回、ヴィラ・レアーレ庭園 (Villa Reale)にてショーを行った「フェンディ」。この緑あふれる美しい庭園が「en plein air(戸外)」という今シーズンのコレクションテーマにリンクする。それは“バーチャルな空間や、実体性のない現代的な生き方から抜け出そう”というクリエイティブ・ディレクター、シルヴィア・フェンディからの提案だ。

 客席に置かれていた朝食入りのピクニックバッグが物語るように、牧歌的でラグジュアリーなアウトドアウエアがメインとなっている。ジャケットやタイドアップにカーゴパンツやバミューダを合わせたり、フィールドジャケットにトラウザーを合わせるなど品よくミリタリーテイストをプラス。さりげなく編みこまれたファーやネット状になったレザーのニット、ジャケットに施されたシルクのパイピングなどにフェンディの職人技が光る。シルクやコットン、ウール、カシミア、レザー、スエード、デニムといった自然素材を組み合わせ、それをグリーンやベージュ、ブラウンといったアースカラーを基調として展開。映画監督のルカ・グァダニーノが特別にデザインした植物プリントやFF ロゴとペカンストライプがアクセントを添えている。

 現代社会への警告も含めたメッセージ性のあるテーマながらその打ち出しはあくまでエレガント。アウトドアテイスト満載なのにラグジュアリー感が前面に出るのはやはりフェンディだからこそ。

ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)

 今回は通常ショー会場となる「アルマーニ/テアトロ」ではなく、「ジョルジオ アルマーニ」社の本社である、かつて17世紀のミラノで最も権威のある貴族邸宅の1つであったパラッツオ オルシー二でショーを行ったジョルジオ・アルマーニ。「アルマーニ/テアトロ」ができる前にはここがショー会場だったのだが、そんなオリジンに帰るべく、コレクションもアルマーニの王道を行くもの。特にコレクションテーマは掲げないという余裕も“ミラノの帝王”ならでは。

 登場したのはスーツやジャケット、シャツ、ニットなどアイテム的には正統派なのだが、素材やディテールの遊びで現代風にアレンジが加えられている。例えば素材にはむら染めやジャカード、ソラーロでニュアンスを入れたり、シャリ感やシワ感、透け素材や光沢素材・・・とバリエーションはかなり豊富で、遊びとひねりが加えられている。ジレが多く登場し着物の袷のようになったものから襟付きまで様々。またジレだけを肌に直接着たり、トレーナーの上にレイヤードしたりといった大胆なコーディネートも。シャツは後ろ身ごろだけにボリュームがありふんわりとしたドレープがついていたり、ニットは目が粗く穴が開いたようになったものなど、ユニークなデザインも目を引く。カラーパレットはアルマーニが愛するミッドナイトブルーやグレージュから後半の赤へ、そこに幾何学模様が重なり合う。

 ミラノコレクションの最後にショーを行ったジョルジオ・アルマーニ。それは自分が最後を締めくくることで、人々がパリに移動してしまうことを防ぎ、もっとミラノの若いデザイナーたちのコレクションを見てもらうための計らいだ。そんな貫録のショーは、今期は華に書けると言われたミラノメンズの悪評を払しょくするかのように鮮やかにフィナーレを飾った。

コレクションにメッセージ性のあるテーマを掲げ自らのアイデンティティを追求するデザイナーたち

 

マルニ(MARNI)

 今回の「マルニ」のショー会場は、ペットボトルが浮かぶ海の底。このセットからも容易に想像されるように、今シーズンの大きなキーワードになっているサステナビリティをにおわせてはいるが、アーティスティックなアプローチになっているために嫌みがない。このコレクションで、クリエイティブ・ディレクターのフランチェスコ・リッソが表現したのは、“自然vs環境汚染”を始めとした、相対するものの衝突から得る知識、そして反対の世界を混ぜ合わせることで生じる不均一な調和だ。

 コレクションではチェ・ゲバラをイメージし、そんな問題と戦い、改革していこうというポジティブなメッセージが感じられる。ゆえにキューバやチェ・ゲバラを連想させるようなフィールドジャケットやカムフラ柄などのミリタリー的アイテム、開襟シャツとポロやニットのレイヤード、ペットボトルや水彩画のペイントのようなカラフルシャツ、ニクヴァシヴィリによる廃材でつくられた工作のようなベレー帽などが登場。そこに不規則なストライプ、ピースによって色や素材が違うパンツ、ハンドペインティングされたようなジャケット、切り裂かれた戦闘服などで不調和なイメージが添えられる。

 テーマはやや重いのだが、アーティスティックかつポジティブなコレクションはとても今の「マルニ」らしく、時代のキーワードをうまく入れ込みながらも、自分の土壌に持って行くうまさには脱帽。

ディースクエアード(DSQUARED2)

 今シーズンの「ディースクエアード」のインスピレーション源はハリウッド映画や70年代の香港シネマ。戦うポップカルチャーの平和主義者がイメージだそう。それを連想させるのがブルース・リーの映画のポスターが描かれたアイテムや、香港のネオンサイン、トラ、サル、菊の花などが大胆に描かれたオリエンタルなプリント、キモノスリーブのロングジャケットやマオカラーのデニムシャツなど、東洋テイスト満載だ。レースやチュールのランニングやプリントいっぱいのボクサーパンツ、ディテールに凝ったジャンプスーツは戦いの雰囲気に崩しを入れている。

 これまでもオリエンタルテイストは時々入れ込んできた「ディースクエアード」。彼らの手にかかると、欧米人デザイナーがオリエンタル風にするときにありがちな、東洋人の目から見ると滑稽・・・ということが全くなく、しっくりまとまるのが不思議。どんなテーマでも自分たちの世界に落とし込み、ベテランの域に入る彼らがエネルギッシュにカジュアルの王道を貫き続けるのには感服する。

マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN)

 今回の「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン」のキーワードは“TECHNOFOLK”。ブランドのオリジンを現代風に新解釈したという。それは体にフィットするサイクリングギアやジョグパン、キーウェイのパーカのような機能性の高いテクノ素材を活かし、ネオンカラーを多用したハイパーなイメージのスポーツルックで展開される。全体的にはマルセル・ブロンにしてはかなりシンプルなのだが、その中にタイダイ風プリント、EASY RIDERモチーフのデジタルプリントなどインパクトあるプリントでアクセントを加える。トレンドである“スポーツ”は多くのブランドがコレクションの要素に入れ込もうとする(えてして外してしまう)が、無理せず自分の世界観に持って行く完成度の高さはマルセロ・ブロンならでは。

ベッドフォード(BED J.W. FORD)

 前回ミラノコレクションに初参加し、今回が2回目となる「ベッドフォード」。コレクションのテーマは“BLIND FAITH”。デザイナーの山岸慎平の信条に基づいた、「自分が見るもの以外には盲目でいたい。証拠も明確な理由もなく、何かを信頼する」・・・つまりは他人の目や既存の概念に左右されることなく、自分が信じるものを貫くと言う姿勢のようだ。

 そんな意思が反映されたコレクションは、お得意の大胆なレイヤードや誇張したアシンメトリーといった要素は抑え気味で、もっと素材や本質にフォーカスしたイメージ。シルク、ベルベット、ウール、サテンなどの正統派の素材に加え、フロントに刺繍が入ったインドのコットンやむら染めのような効果のあるオゾンブリーチシルクなどを差し込み、オリエンタルな雰囲気も漂う。シルエットはロングジャケットやアノラックなど縦に長いラインを基調に、ルーズな感じのレイヤードを入れながら全体としてゆったり。

 トロピカル、エネルギッシュなファイター系が多い今シーズンにおいて、逆に新鮮に感じられた。

ステラ マッカートニー(Stella McCartney)

 ミラノにて2回目のプレゼンテーションを発表した「ステラ マッカートニー」。モデル達がプラカードを持ってデモ行進。ステラだけに環境問題などに対するシビアなメッセージかと思いきや「WE ARE THE WEATHER」、「MORE LIFE」、「WE ARE ENTIRELY FREE TO LIVE DIFFERENTLY」などといったポジティブムード。ジョナサン・サフラン・フォアの近日発売予定の環境問題をテーマとした小説から名づけられた「WE ARE THE WEATHER」と題したカプセルコレクションには“天気”のように様々なスタイルがあり、誰もが自由に楽しめるカラフルでポップなコレクションを展開。

ジミー チュウ(JIMMY CHOO)

 今シーズンの「ジミー チュウ」は60年代のカリスマ的ミュージシャン、マーヴィン・ゲイとカリフォルニアの洒落者がテーマ。カリフォルニアのサンセットのようなグラデーションは、エキゾチックな雰囲気を、マーヴィン・ゲイが着ていた、スタッズ付きダンガリーシャツからのインスピレーションやレオパードやゼブラなどアニマルプリントのダイナミックなコントラストも。

サントーニ(SANTONI)

 「サントーニ」は、4つのテーマでコレクションを展開。ヨットやセーリングのイメージのホリデーではデッキシューズやエスパドリーユ、クラシックのテーマではディープネスというソールからアッパーに向けて色が薄くなる新しいグラデーションを用いた「パティーナ」、ワイルドのテーマではデザートブーツ、ダウンタウンというテーマでは、80年代のブロードウェイダンサーのイメージの新しいスニーカー「ジム」が登場。

トッズ(TOD’S) 

 今回の「トッズ」のコレクションテーマは“The Ride”。ドライビングシューズにルーツを持つ同ブランドゆえに、クルマ、バイク、自転車等様々な乗り物をテーマにしたコレクションを展開。ペブルが大きめになったバッグや、アッパーにニットを使用したハイカットスニーカー、エスパドリーユなど夏らしいアイテムがたくさん登場。

「トッズ」2020春夏コレクション

ザネラート(ZANELLATO)

 今シーズンのテーマの一つは“アフリカ”。コットンやラフィアを使い、ところどころにトライバルモチーフをレザーに使ったものも。もう一つのテーマは“ジェンダー”。「ニーナ」などこれまでウイメンズとして発売していたモデルを大きめのサイズやスタイルを変えてメンズ展開。

ジュゼッペ・ザノッティ (GIUSEPPE ZANOTTI DESIGN)

 “All-over Crystals””The New Classics”の2つのテーマからアプローチ。得意とするクリスタル装飾やメタリックやジップづかいのアイテムの他に、タイダイのスリップオン、陽射しにより色が変わるスニーカーなども発表した。

トレンドキーワードはミリタリー、サファリ、トロピカル、むら染め、不規則ストライプ、チェック

 今回のミラノメンズでは、コレクションにメッセージ性のあるテーマを掲げるブランドが多かった。これはピッティにも通じるが、まずサステナビリティというのは外せないテーマだ。素材自体でリサイクルやアースコンシャスなアプローチをするブランドもあれば、そのスローガンをファッションに落とし込むブランドもあった。またサステナビリティに関わらず、現代社会の問題である“何か”と戦うブランドも多い。様々な問題に対してこのままではいけないという危機感がファッション界にも感じられ、それをブランドごとが自社の個性で提案していた。

 傾向として全体的にアウトドア的テイストは強く、それがミリタリーやサファリに反映され、フィールドジャケットやトレンチ、カーゴパンツやバミューダなどが多くみられた。同時にテクノ素材やネオンカラーなどスポーツテイストも依然として続いている。それを彩るものとしてトロピカルやジャングルのモチーフだったり、ジャカードによるデザインやパターンがたくさん登場していた。またむら染め、ブリーチ、不規則なストライプなチェックなども見られた。素材はシワ感、シャリ感、または光沢、その一方でレースやチュール、オーガンジーなど、ウイメンズによく使われる素材も多かった。全体的にあえて不均衡で不統一な感じをだしているが、それはピッティでも見られた楽ちんな着こなしの延長なのかもしれない。

 今回特に不在の大御所系が多かったのと、ウイメンズとの混合で9月にコレクションを発表するところも多いため、華がないと言われた今シーズンのミラノメンズだが、“量より質”で、それぞれが見ごたえのあるコレクションを展開したように思う。

ミラノメンズ2020春夏コレクション

 

取材・文:田中美貴、アパレルウェブ編集部

 

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