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2019.03.07

ヤフーの仮想モール 上位出店者の優遇強化、特別販促や検索上位表示など

 「”良い店”が売れる仕組みを強化していく」。ヤフーは運営する仮想モール「ヤフーショッピング」で今後、売上上位の出店者を優遇する施策を強化していく。3月1日に都内で開催した優良店を表彰する「ヤフーショッピングベストストアアワード2018」の受賞式に登壇したヤフーの仮想モール事業を統括する小澤隆生常務が言及した。すでに昨年から大規模セールの際に上位店のみが参加できる販促企画などを展開しているが、このほかにも、「ヤフーショッピング」での商品検索結果で上位店の商品の表示順位を上げるなどの”えこひいき”を進める。上位店は配送スピードやユーザー評価などが総じて高く、こうした出店者をより優遇していくことが、流通総額の拡大に直結する効果的な施策だと判断した模様。「これまでは何となく(出店者は)公平にとやってきたが、良いお店で買った方がユーザーは満足する。今後は(上位店優遇策を)どんどん打ち出し、『良いお店』が売れる仕組みを強化していく」(小澤常務)とした。また、昨年から計画を示唆していた出店者向けの新たな物流サービスの構想は「話したいが話せないこともいっぱいあり、まだできない」と言及を避けた。

 小澤常務(=写真)は授賞式終了後に「ヤフーショッピング」の有力出店者らに戦略共有会と題して、「ヤフーショッピング」の方向性について説明した。まず昨年の「ヤフーショッピング」については一昨年2月からの開始以来、継続しているグループの携帯電話キャリア、ソフトバンク(SB)のスマホ契約者を対象に、「ヤフーショッピング」での商品購入時に付与する「Tポイント」を10%(通常は1%)とする試みが「若い人や女性などこれまでヤフーショッピングには少なかった顧客層を連れてきた」として多くの新規ユーザーを呼び込むなど引き続き成長の大きな原動力となり、1年前に比べてSB契約者による注文者数、取扱高ともに1・7倍超と拡大していると説明。また、毎月5・15・25日に実施する「5のつく日キャンペーン」の取扱高が前年比21%増、11・22日に実施する「ゾロ目の日クーポン」が同18%増、11月1~11日に行なった大型セール「いい買物の日セール」が同31%増などの各販促キャンペーンの効果も奏功するなどで「ヤフーショッピング」のユニークユーザー数は前年比8%増、ユーザーあたりの月ベースの訪問回数は同29%増、コンバージョンレートは同20%増、注文回数は同30%増となり、「ヤフーショッピング」の昨年の取扱高は前年比で23%増となるなど「すべての指標がどんどん増えてきている」(小澤常務)とした。

 その上で今年も「効果の出ている取り組みは継続する」(同)として、各種キャンペーン施策を引き続き継続していくほか、SB契約者へのポイント10%付与についても「今年もしっかり予算確保に成功した。いつ辞めるのかと聞かれるが4月以降も継続する」(同)とし、いまだ45%にとどまるSB契約者のヤフーショッピングの利用率を高めていく考え。同様に有料会員「ヤフープレミアム会員」の5%のポイント付与策も継続する。

 これらに加えて、新たな新規顧客獲得策として昨秋からSBとの合弁会社でスタートさせたQRコードなどを活用したスマートフォン決済サービス「PayPay」の利用者を「ヤフーショッピング」に誘導する試みも始める。具体的には「ヤフーショッピング」で「PayPay」を決済手段として利用できるようにする。当初は2月からのスタートを予定していたが、開発が遅れており延期しているが近々にも対応する模様。「PayPay」は昨年12月に実施した大規模キャッシュバックキャンペーンなどで急速に利用者および「PayPay」のボーナス用電子マネー「PayPayボーナス」の保有者が増えており、”ネット上での利用先”として「ヤフーショッピング」を提示することで「PayPay」利用者を誘導する考え。「PayPayにはすでに400万人を超える利用者がいるが、今も第2弾キャンペーンを行っていることもあり、どんどん増えており、恐らく1000~2000万人規模に最速で行くと思う。PayPayは決済ツールのため、利用者は買い物する気満々の方々だ。こうした買う気があり、かつこれまでアプローチが難しかったユーザーがどんどん『ヤフーショッピング』に入ってくる」(同)とした。

 また、「ヤフーショッピング」のUI・UXの改善に引き続き、取り組むとし、トップページや検索ページを「無限スクロール化」して表示商品数をそれまでの10倍としたり、商品ページの表示速度を20%アップさせたなど昨年実施した具体的な取り組みを説明した上で、近々にも実店舗を持つ出店者などが顧客への商品の引き渡し拠点として店舗を選択できるよう「店頭受け取り機能」やこれまで店舗一括でのみで商品ごとや配送方法ごとにはできなかった配送日の設定を可能にする機能の実装を行うほか、セール価格で販売する期間を設定できる「価格予約機能」や「定期購入機能」なども導入していく考えを示した。

 一方で今後の「ヤフーショッピング」の成長戦略の一環として、売り上げ上位の優良出店者を優遇していく方針を説明。同社によると上位500店は商品の出荷までにかかる時間が全出店者の平均が3・2日に対して、0・9日。出荷遅延率は平均10%に対して1・3%。出店者都合のキャンセル率では平均が0・9%に対して0%。出店者への低評価率は平均0・07%に対して0%。商品レビュー低評価率は平均0・2%に対して0・01%。商品レビューの平均点も平均4・3点に対して4・7点となっており、アマゾンや楽天市場など競合に伍していくために、配送サービスや商品面などで一定レベルに達した上位店での購入を促進していく。

 昨年11月に開催した「いい買物の日セール」からすでにスタートしている上位店のみが表示可能な販促企画「ビッグマーチャント」などの上位店優遇策を今後、複数、展開していく考え。具体的な言及は避けたが、商品検索の表示結果の順位について、上位店の商品を優遇する試みなどを行っていくとしている。

 なお、ソフトバンクが今秋をメドに物流事業へ参入するという一部報道もあり、昨年から言及していた出店者向けの新たな物流サービス構想の具体策が提示されると思われたが「話したいが、まだ準備が整っていないので話せない」(小澤常務)として明言は避けた。ただ計画自体は進捗していることを示唆した。

 なお、「ヤフーショッピング ベストストアアワード2018」のその年1年での成長率などを勘案して選出した「Yahoo!ショッピング大賞」は「オシャレウォーカー」(運営・mighty)が受賞。総合グランプリは9年連続で「Joshin web」(上新電機)、その年に出店した店舗の中で優れた店舗を選ぶ「新人賞」の1位には「デンキチWEBYahoo!店」(同・デンキチ)が選ばれた。

 

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