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2016.07.27

【第23回香港ファッションウィーク春/夏(4)】主催者に聞く「香港ファッションウィーク」の今と「センターステージ」のこれから

ローレンス・リョン氏(左)とバイロン・リー氏

 香港最大の見本市会場である香港コンベンション&エキシビションセンターで7月4~7日の4日間に行われた「第23回香港ファッションウィーク春/夏」。アジア最大規模を誇る国際ファッション見本市としての強み、また、これまで1月に開催されていた「ワールドブティック香港」をアップデートし、9月に初開催する「センターステージ」のねらいは何か。主催者である香港貿易発展局・展覧会事業部のシニア・マネージャーを務めるバイロン・リー氏と、香港特別行政区の立法評議会メンバーでもあるニットウエア・イノベーション&デザイン協会会長のローレンス・リョン氏に聞いた。

ファッションテックからクリエーションまでバラエティーに富む構成

――香港ファッションウィークの強みは。

バイロン・リー氏(以下リー):香港ファッションウィークは、1月の秋冬展と7月の春夏展と年2回開催しているが、今回の出展者は1,200社と前回展(2015年7月)と比べてわずかだが増加した。世界の市況が芳しくないなか、勇気づけられる数値だと考えている。アジアを中心に初出展をしてくれた国もある。日本の出展状況も、国際ファッションセンター協力のもと、継続参加してくれる企業もあり安定している。より規模の大きい1月展には約1,500社が参加しており、仕入れ・調達のためのトレードショーとして、アジアで最大規模を維持している。
 出展カテゴリーの幅が広がっている点にも注目してほしい。例えば今回出展しているエプソン香港のデジタルプリンターのようなアパレル機器や、実力派から若手まで揃ったデザイナーブランドなど、バラエティーに富んだ構成になっている。

――今回から、ファッションテック、フットウエア、レギンス&ソックス、ニットウエア、ウィメンズウエアの5つの新しいゾーンが増えた。

リー:衣料品は以前、「ガーメントマート」という1つのゾーンにまとめていたのだが、カテゴリーが細分化されることによって欲しいものが見つけづらくなっていた。そこで、ゾーンを分けカテゴリーをより明確にすることに注力し、バイヤーがより簡単かつ便利に仕入れができる環境を整えた。
 新しいゾーンの1つに、「ファッションテック」があるが、製造やデザイン、販売など、ファッションのどの分野においても非常に重要な要素だととらえ、新たに加えた。ソフトウエアやテクノロジー、アプリなどが含まれるが、香港ファッションウィークの強みとしてしっかりとプロモーションしたい。

ローレンス・リョン氏(以下リョン):ファッションテックについて言えば、バイヤーたちが最も重視しているといえるのが、“GO GREEN(環境保護)”なもの。例えば製造過程での汚染削減など、テクノロジー開発が環境保護に寄与できる面も多い。若い世代は、“エコフレンドリー”への関心がより高まっているため、今後ますます注目されるだろう。
 ぜひおすすめしたいのが、香港紡織及び成衣研究中心(HKRITA)のブースだ。ジュネーブ国際発明展示会でも高く評価されたものなのだが、食品廃棄物を生分解性のポリ乳酸繊維に変えるメソッドや、織物を染める際に水の消費量を従来の約90%減少させることができるリサイクル溶媒の応用技術などを紹介している。HKRITAや香港理工大学は、技術開発や研究において日本や欧米の企業とも様々なコラボレーションを進めている。香港政府も補助金を出すなどして支援しており、私たちも、最先端の技術がデザイナーたちのクリエイティビティーを支えるプラットフォームになると考え重視している。

賑いを見せた香港エプソンのブース

HKRITAの取り組みを紹介するブース

――近年の数値的成果や力を入れている点は?

リー:世界経済の厳しさから輸出については厳しい状況にある。これはアパレル業界にもいえることだが、この見本市では、有力バイヤーたちを世界各地から誘致することで成果をあげている。前回展の例をあげると、世界大手のオンラインショッピングモールであるタイの「ザローラ(ZALORA)」は20社以上のバイヤーから10万USドル、韓国のロッテ百貨店はタイやインドネシアのサプライヤーから60万USドルの仕入れをそれぞれ行ったと聞いている。

リョン:香港は、世界でも重要な”仕入れの中心地“として機能している。中国だけではなく、ベトナムやカンボジア、バングラデシュなどに工場を持つ企業の多くが香港にオフィスを持つが、税率が低いことや法の手続きが簡単であることなどバイヤーとサプライヤー双方にとってメリットも多い。またそうした背景から、ファッションビジネスの経験が豊富で優秀な人材も集まっている。“ファッションランゲージ”がわかる人が多いというのは、非常に重要だ。

アジアのファッションに徹底的にフォーカス「センターステージ」

香港ファッションウィーク会場内の至る所に置かれたパンフレット。「ATSURO TAYAMA」の参加が決定している

――9月に「センターステージ(CENTRESTAGE)」を初めて開催する。

リー:これまでは「ワールドブティック香港」という名前で、1月の香港ファッションウィーク秋冬展と併催していたが、サプライヤーとバイヤー双方から、1月はブランドやデザイナーたちのコレクションをプロモーションする時期としてふさわしくないと指摘されていた。実際、1月はセール期にもあたる。そこでまず、開催時期を変えるという結論に至った。トレードショーである香港ファッションウィークと併催していたことから、コンセプトがわかりづらく混乱してしまう来場者もいた。そこで時期を変えるだけでなく、これまでと全く違うファッションイベントにしたいと考えた。9月に開催するのは、世界のトレードカレンダーに合わせたからだ。
 「センターステージ」の特徴は、アジアにフォーカスしたイベントであること。アジアのファッションは今、世界のファッション産業の中でも大きく台頭している。実際、アジアのデザイナーたちの多くが近年、世界的活躍をみせ注目されている。フランスやイタリア、アメリカのブランドとは違う、アジアのブランドならではの魅力を引き出せるイベントにしたいと考えている。日本はアジアのファッションのなかで重要な位置を占めているし、韓国のファッションも世界的に人気が高まっている。そのほかにもタイやベトナム、シンガポールなど、アジア各地に才能あるデザイナーやブランドの魅力に焦点を当てた、全く新しいフォーマットを構築したい。

アンケートの実施や登録プロモーションも行われていた

――モードについても、アジアの中心地となることを目指している。

リー:まさにその通りだ。香港はすでにファッション都市として確立されている。多くの企業がファッションビジネスに関わっているし、日本と同様、ファッション関連の店舗も多い。最も重要なファッションの中心地だと言えるだろう。才能あるデザイナーたちも増えているが、彼らがきめ細かいサポートを享受できるプラットフォームも整っている。彼らは、自身のアイディアやコンセプトをバイヤーやメディアといった世界のオーディエンスに示す機会が用意されている。
 「センターステージ」はそのなかで、まさにキーになるイベントだ。香港貿易発展局だけではなく、香港デザインセンターや、香港ファッションデザイナーズアソシエーション、クリエイト香港など様々なパートナー機関とも協力し、キャンペーンを行って行く。ぜひ楽しみにしていてほしい。
 加えて「センターステージ」は、ニューヨークやコペンハーゲン、東京など海外のファッションウィークにも出向き、バイヤーや一般消費者に対してブランドを披露したいと考えている。

――香港政府は2015~2016年度の政府予算案で、香港のファッションデザイナーやブランドの育成に5億香港ドル(約80億円)を投じる計画を発表した。

リョン:香港はイタリアに次ぐファッション都市になれると考えている。香港にはまず才能あるデザイナーが多く、政府もプロモーションに乗り出した。香港貿易発展局が主催する「センターステージ」もその一環だ。このスキームを使って、ファッション産業をどう活性化できるかという点にも期待している。

リー:ファッション・キャピタルになるべく、政府がイニシアティブをとり、プロモーションとマーケティングを行うことになったが、これは活動の一部に過ぎない。教育やインキュベーション、研究開発も含め、様々な機関とコラボレーションしながら、このミッションを実行していく。

――7月の香港ファッションウィーク春夏展との間隔が短いため、バイヤーや出展者が分散してしまう懸念は?

リー:香港ファッションウィークは、ODM・OEMの企業を中心としたトレードショー。一方、センターステージは、デザイナーやブランドのコレクションを集めたもので、両者は全く異なる。「センターステージ」は、大きく分けて4つのキー・バイヤーをターゲットにしている。1つ目は、セレクトショップやコンセプトショップと言われるマルチブランドショップのバイヤーだ。彼らはこれまでの香港ファッションウィークには来場しなかったが、有力な小売り形態として世界的に台頭してきている。2つ目は、オンライン・リテイラーだ。彼らは香港ファッションウィークにも来場してくれるが、デザイナーブランドのアイテムも併せて買い付けている。3つ目が、百貨店のバイヤーだ。百貨店は、香港ファッションウィークに来場するODM・OEMの担当者もいるが、ブランド担当のバイヤーも非常に増えている。4つ目は、ブランドエージェント。彼らはバイヤーではないが、出展者たちは、彼らと出会う機会を強く求めている。そしてもちろん、メディアのサポートも大切だ。私たちは様々なタイプのバイヤーを集めることにより、「センターステージ」がより大きな成果を上げることに期待している。来場者インセンティブも多く設けているので(笑)、ぜひ多くの方に来てほしい。

世界のキーバイヤーたちを呼び込む

――アジアのファッション・キャピタルとして、特にアジア以外のバイヤーたちをどう集客していくか。

リー:見本市自体はアジアにフォーカスするものだが、ヨーロッパやアメリカのバイヤーたちは、以前と変わらず重要なターゲットだ。香港ファッションウィークでは、ぜひ招待したいキーとなるバイヤーたちに対し、スポンサーシッププログラムを設けている。特に英国は、アジア人の人口も多いため、アジアのデザイナーやブランドにとっては重要な市場だと見ている。また英国の百貨店の多くは、アジアのブランドに対する関心が高い。また私たちは、ロンドンや、フランクフルト、パリなど世界の主要都市にローカルオフィスがあり、有力バイヤーたちを常にリサーチしている。また、私たちが「センターステージ」に期待するのは、量ではなく、質であることも強調しておきたい。いかに出展者とバイヤーたちがマッチするかということが重要だ。

リョン:世界各地にオフィスがあることは大きな強みだ。ニューヨークやLA、東京にもオフィスがあり、実に幅広いネットワークを持っている。そうしたバイヤーたちにメールだけのやり取りだけではなく、フェイストゥーフェイスで見本市の魅力を伝えることができるし、有力なバイヤーはについてしっかりリサーチすることができる。

リー:エアチケットや宿泊の手配だけではなく、例えば9月の「センターステージ」では、事前に商談のアポイントができるマッチングサービスも行う。そのほかコレクションショーに優先的に招待したり、ネットワーキングのためのレセプションなども用意している。終了後も、関連イベントの案内を行うなど、トータルでサポートしていく。
 キーとなるバイヤーを集めているので、日本の出展者たちもぜひ参加してほしい。

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