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2025.07.16

「シンヤコヅカ」2026春夏コレクション “The moon is floating in the room(月が部屋に浮かぶ)”をテーマに

 「シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)」が2025年7月14日、2026春夏コレクションを発表した。”The moon is floating in the room(月が部屋に浮かぶ)”をテーマにした今シーズン。夜と月、カーネーションをモチーフに、ノスタルジックかつ詩的な世界を展開した。

 

 コレクションは、夜の闇を思わせる黒を基調にスタートした。朧月夜のようににじむ白の中に月を浮かべたコート、黒からグレー、白へと変わる左身頃に、暗闇に浮かび上がるようなカーネーションを描いた黒いシャツ。胸部分を白いシースルーにした黒のプルオーバーにも、窓から外を見るように月が浮かび、白いパンツは下に行くにつれて黒に変わっていく。夜の深みに似た静かなトーンが全体を包む。

 

 モデルたちは皆、ひとつずつ「月」をまとって登場した。月や、フランス語で月を意味するというクロワッサンのようでもあり、抱き枕のようにも見えるそのオブジェは、スタッフの手作りによるもの。モデルたちの頭や顔に付けたり、腕に持ったりすることで、月が静かに寄り添い、夏の夜の夢のようなムードを強調していた。

 

 今シーズンのポイントは、部屋とユニフォーム。ミリタリー風のジャケットや黒いジャケットには、花の刺繍などが施されている。エプロンやコートには夜の街が描かれ、パジャマのようなデザインのシャツやジャケットとパンツ、ガウンやバスローブ風のコートなど、私的な空間である部屋の中で身にまとうアイテムを彷彿とさせるデザインも目を引く。

 

 西洋絵画の静物画のように、クロワッサンや夜の薄暗い部屋の一角を描いたような絵などを加えたデザイン。絵本の1ページを思わせるような懐かしさと、どこか非現実的な詩情を漂わせる。

 

 画家ヴィルヘルム・ハマスホイの部屋を、写真家・画家のソール・ライターが撮ったら——というイメージから、色は黒、白、グレー、黒から白へのグラデーションなどモノトーンを中心に、カーネーションのような赤を使ったパンツや、カーネーションを描いた赤いエプロンが加えられた。青は意識的に排されたという。

 

 デザイナーが実体験や、パジャマ、バスローブ、ミリタリー、ユニフォームといったリアルな要素に、絵画のようなグラフィックを融合させ、まるでデザイナーの「夢の部屋」を覗き見るような物語を織り込んだコレクション。日常性と私小説のような詩情、アートと機能の交差が、同ブランドらしい独自の世界観を際立たせた。

 

 小塚信哉は今回のテーマについて、「屋上で月を見るのが好きで、実家に帰ったときに、母の部屋で昔の写真や、母の日に自分が贈ったカーネーションのパッチワークを眺めていたんです。そのときの感覚が、月を見るときの気持ちと重なった」と説明した。

 

 また、部屋とユニフォームを軸に展開したことについては、「ユニフォームという言葉と、部屋というキーワードから、どんどん膨らませていきました。ワークウエアやユニフォームが好きなんですが、機能から解放した、もっと心にフィットするような、服が心に機能するものにしたかった」と話した。

 

取材・文:樋口真一

 

Courtesy of SHINYAKOZUKA

 

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