NEWS
2025.01.06
2025秋冬欧州メンズファッションウィークはどうなる? ショーは減少傾向に
2025秋冬欧州メンズコレクションサーキットがもうすぐ始まる。2025年1月14日からピッティ・イマージネ・ウォモの開催を皮切りに、1月17日からはミラノメンズファッションウィーク、1月21日からはパリメンズファッションウィークと続き、世界で最も早く2025秋冬シーズンのコレクションが発表されることとなる。
これらのファッションウィークの仮カレンダーを見て思うのは「ショーが減った」ということだ。これから追加参加もあり得るが、これまでよりショーの数が減るのは残念だろう。パンデミックからの復調への揺り返しで、これがメンズコレクションの常態化と言えるのかもしれない。この背景には何があるのだろうか。
メンズでショーが減る理由とは
大きな要因は、ラグジュアリーブランドがメンズ単体のショーをやめ、ウィメンズウィークでのショーに統合したことである。その結果、参加するのはメンズに強いラグジュアリーブランドと新進や気鋭系のブランドに限られる。ミラノメンズでは、ピッティで発表してきたブランドが参加するようになっているが、その多くはショーではなくプレゼンテーション方式である。
それではパリやミラノのファッションウィークでショーをやる意義は何があるのだろうか。まず挙げられるのは「世界に伝播する」ことだ。新進系はクリエイティビティを世界のバイヤーやジャーナリストに認めてもらい、ラグジュアリーは新規性と世界観を伝えることでセールスに結びつけることだ。
そして欧州でよく言われるのが「ファッションウィーク」自体が伝統であり、大きなビジネスとなっていることだ。ショーに携わるクリエーター、ホテルやレストラン、航空会社などファッションウィークへの恩恵を受ける事業者を支えてきたと言える。そしてそのことが新たな文化や機会を生み伝統となってきたのだ。
しかし、この点では参加するファッションブランドにとってはメリットが少ない。そのため、すでに多くの顧客を抱えるようなブランドにとってはファッションウィークに参加する意味は見出せないのであろう。
この傾向はパンデミック以前よりうかがえ、特にビジネスの街であるニューヨークではメンズウィークがなくなり、ロンドンもそれに続いた。また、ミラノメンズを支えてきたクラシコ系やリアルクローズ系などは元々ショー向きではないため展示会比率が高まった。
より高い志を持つブランドが集まるファッションウィークに
Milano Fashion Week Men’s 公式サイト
このように逆風とも言える環境を鑑みると、今シーズン参加しているブランドは、ファッションウィークにより高い志を持っているブランドと言える。その中で特に見所となるショーは何だろうか。
「ディオール(DIOR)」や「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」、「プラダ(PRADA)」など世の中のトレンドを創り出すトップメゾンはその第一人者であるが、それに次ぐのはやはり新ディレクターにより刷新されるブランドのショーであろう。パリメンズのラストを飾る「ランバン(LANVIN)」はピーター・コッピングによるメンズ・ウィメンズの合同ショーを行う。またパリメンズで「オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)」のショーを行ってきた「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」は、2021年にスタートした「アイム メン(IM MEN)」のショーを行う。
そして新進気鋭デザイナーにも注目が集まる。新進デザイナーが集う欧州のファッションウィークといえばロンドンであったが、ここ数シーズンはミラノメンズでの伸び盛りのデザイナーが見られる。今シーズンも参加するドメニコ・フォルミケッティによる「ピーディーエフ(PDF)」、そしてロンドンから発表の場を移した「カシミ(QASIMI)」や「サウル ナッシュ(SAUL NASH)」などがそうだ。パリメンズを支える日本人デザイナーのコレクションはますます存在感を増すであろう。
近年、ファッションにおけるローカリティが重要視され、日本のマーケットでは日韓のリアルトレンドやセレブリティ着用が話題となるが、その大元は欧州のファッションウィークであることが多い。そのようなことからも今シーズンも欧州メンズファッションウィークを注視していくことが必要であろう。
文:山中健