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2023.09.21
「サウンドオブ生け花」京都大学が産学連携した日本のアートテクノロジーをNYコレでお披露目
2023年9月11日ニューヨーク・ファッションウィーク(NYFW)期間に行われた、世界から参加するデザイナーたちのプラットホーム「グローバルファッションコレクティブ」で、「サウンドオブ生け花(Sound of Ikebana)」のランウェイが披露された。
これは京都大学防災研究所アートイノベーション産学共同研究部門の代表を務める土佐尚子特定教授が開発したアートテクノロジーを活用したものだ。赤ちゃんの産声などの声の振動を、鮮やかな色彩の絵具、オイルなどの粘性液体に与えることによって、色が融合しつつ飛び上がるようすを、ハイスピードカメラ2000フレーム/秒の高速で撮影したビデオアートとなる。その造形がいけばなの型に似ていたので、「サウンドオブ生け花」と名前をつけた。
土佐特定教授が、1985年に作成した映像作品は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に所蔵されており、文化庁文化交流使の際には、タイムズスクエアのビルボード60台に1か月毎夜3分間映像を流す文化交流も行った。
2021年より、セイコーエプソン株式会社(以下エプソン)は、土佐特定教授が推進してきた「アートイノベーション」とエプソンのデジタル捺染技術を融合させて新たなインクジェット技術の価値創造を目指すための共同研究を開始した。 本研究は、アートとデジタル捺染技術を融合した「アートをまとう」のコンセプトのもと、デジタル捺染の特長を生かした方法で、オリジナルデザインの服飾品を、必要な量だけ生産、販売できるビジネスモデルの実現を目指している。
今季グローバルファッションコレクティブのランウェイでは、24ルックを披露。登場したルックの多くは、ジェンダーフリーの服であり、エイジレスに男女が着られるようなデザインとなっている。今季NYFWに参加したきっかけは、昨年ニューヨークのブルックリンのアートスペースでのファッションショーに参加したことから、NYFWに関心を持ったことだという。
アートをファッションに落とし込む時にもっともこだわったのは、「生命力を感じる動きをファッションに落とし込むことです。Sound of Ikebanaの動きが、人の動きと合体して美しいシルエットが出るように工夫しました」と土佐教授は語る。今回のランウェイでは「日本の美を感じる」と観客に多くの拍手を浴びたが、「私の創造性の鋭い美を理解してくれるのがNYです。最高でした」(土佐教授)と、手応えのある成果を残した。
産学連携として、売れるまでのビジネスモデルがエプソンとの共同研究となっており、ランウェイに出たアイテムは、「ショピファイ」を通じてオンライン販売されている。また10月からニューヨークのチェルシー地区にあるブティック「ラッキーセレクトイズム(LUCKY SELECTISM)」に置かれることになる。
取材・文:黒部エリ