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2019.07.16
高い技術・デザイン力で独自性を発揮 「香港ファッション・ウィーク春/夏」に参加した日本勢4組
4日間に渡り開かれたアジア最大級のファッション合同見本市「第26回香港ファッション・ウィーク春/夏」(香港貿易発展局主催)が2018年7月11日に閉幕した。12カ国・地域から1,020社が参加。日本からは全4社が出展したが、このうち3社が設立1年前後の新ブランド。国内アパレル市場の縮小を背景に、高い品質や技術、デザイン力を強みに独自性を打ち出している。海外への販路拡大を目指すなか、中国や東南アジアへの貿易ハブとしての香港に魅力を感じ同展に参加したという声が多かった。初日は会場全体で来場者の出足が鈍ったものの、幅広い国・地域のバイヤーとの商機やニーズを掴む機会となった。
繊維商社大手の豊島が手がける自社メンズウエアブランド――3/2WORKS(スリーツーワークス)
デザイナーの内尾義彦氏(写真上)
繊維専門商社の豊島が2018年春に立ち上げたメンズウエアブランドが、「3/2WORKS(スリーツーワークス)」だ。ブランド名の由来にもなっている東京二部三課が、ワークウエア事業における長年の経験を生かし、街着としてのワークスタイルを提案。米国の骨太でクラシックなワークスタイルをモチーフに、機能性の高い素材やディテールを取り込んだ。ポリコットン素材を使ったペインターパンツやTシャツ、後染め加工のオールインワンやワークジャケット、キャンバス地のエプロンなどを揃えた。トップスで3,000円台~と高機能でありながら値ごろ感もあるため、有力セレクトショップを中心に受注や引き合いも増えている。「ヘビーウェイトな生地を使った骨太なアイテムは女性にも人気がある」(内尾義彦デザイナー)という。
競争が激化するアパレル市場での差別化を図るため、独自の強みを生かした新ブランドを立ち上げた。海外進出は設立当初から視野に入れていたという。会期中は、タイやインドネシア、ニュージーランド、露、仏など幅広い地域のバイヤーが興味を示した。「スタートしたばかりのブランド。香港ファッション・ウィークへの参加は、どういうニーズがあるかを把握するためにもいい機会となった」(同社)という。
靴の街・東京都台東区から発信する個性派ドレスシューズ――JETMANN(ジェットマン)
「JETMANN」デザイナーの菊田悠氏(写真上)
手染めしたグラデーションカラーのレザー、特殊な溶剤で凹凸を出したレザーなど癖のある素材を
すべて職人による手仕事で仕上げていく
紳士靴ブランド「JETMANN(ジェットマン)」(東京・台東区)は、2019年1月展に続き2回目の出展。香港をハブに中国や東南アジアなどに市場を広げたいと参加した。同ブランドを運営するブロンズマスターの代表でデザイナーでもある菊田悠氏は、靴のメーカーや企画会社などを経て独立。2018年に「JETMANN」を始動した。「靴メーカーや職人さんの閉業が重なり、国内の靴業界が衰退してしまう危機感を感じていた。自分でブランドをコントロールできる環境のなかで、市場を広げていかなければならないと考えた」と独立した経緯について語る。ブロンズマスターでは、自身のブランドとOEM企画生産などを手がける。
自社ブランド「JETMANN」の魅力は、日本の熟練した靴職人による質の高い手仕事と、エッジの効いたデザイン。ミュージシャンやアーティストからオーダーを受けることも増えている。ドレスシューズの中心価格は約10万円。「価格は決して安くはないが、それだけの価値と個性をしっかり打ち出さなければ生き残れない」(菊田氏)と話す。
今回の出展では、中国をはじめ、スイスやロシアなどのバイヤーから引き合いがあった。「靴はサイズ展開が細かいので慎重に取引を進めたい」と菊田氏。今後も海外出展は継続したい意向で、1月展での商談でつながりができたタイやインドネシアへの市場開拓にも興味があるという。
スタイリッシュでエコな新バッグブランド――MICHIE(ミチエ)
株式会社サラ企画営業部長の譜久島悟氏(写真上)
アフリカの自然をイメージしたプリント柄のトート(同下左)やミニ財布なども人気
バッグ・帽子・雑貨などのOEM企画製造を手がける株式会社サラ(東京、岡邊美智榮社長)が2018年4月にスタートしたウィメンズバッグブランドの「MICHIE(ミチエ)」。シンプルなフォルムとトレンドを抑えたディテールが、20~40代の感度の高い女性から支持されている。上質な牛革を使ったショルダーバッグ(2万~3万円台)やミニ財布、TPU素材を使ったビッグトートバッグなどが主力商品。カラフルなグラフィック柄をプリントした取外し可能な太ストラップも人気だ。
レザーは、メキシコの有力タンナー「Le Farc(ラ ファルク)」によるエコレザーを使用するなど、サステナブルな側面も持つ。会期中はスペインや台湾、香港などのバイヤーから引き合いがあり、OEM生産やアーティストとのコラボレーションなどのオファーもあったが、「国内のファッション業界が全体的に苦戦するなか、OEMだけでは生き残れないと自社ブランドをスタートした。デザイン性とサステナビリティを兼ね備えた「MICHIE」の魅力をさらに強く打ち出していきたい」(譜久島悟・企画営業部長)。7月末には都内で店頭販売も行う計画。海外への展示会にも引き続き積極的に出展していく。
ジャカードやプリントを主力に――宇仁繊維
同展に継続参加している宇仁繊維はすでにアジア各国のクライアントを持つが、東南アジアなどの新規顧客開拓を目指し出展した。今回は、ジャカードやプリントを主力に提案。アジアやオセアニアなど幅広い地域のバイヤーがブースに足を止めた。「目的が明確な来場者が多く提案がしやすい」と同社。タイの既存クライアントがアポイントメントなしにブースを訪れるなど、さまざまなバイヤーとの商談が実現できた。