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2019.06.13
【2020春夏ロンドンメンズ ハイライト】アートとの融合を強めるデザイナーたち アレキサンダーマックィーンも帰還
2019年6月6日から10日まで、2020春夏ロンドンファッションウィークメンズ(以下ロンドンメンズ)が開催された。会場は前回と同じロンドンのイーストエンドで、新進気鋭のデザイナーらがコレクションを発表。オフスケジュールながら、「アレキサンダー マックィーン(Alexander McQueen)」もロンドンメンズ期間にコレクションを発表した。
アレキサンダー マックイーン(Alexander McQueen)
「アレキサンダー マックィーン」がロンドンに帰ってきた。オフスケジュールながら現地メディアがそう報じるなど、注目が集まった。今回はランウェイではなく、プレゼンテーション方式でのコレクション発表だ。
場所は、かつての修道院で歴史的建築物として著名な「チャーターハウス」。見事な庭園に囲まれた建物内で発表したのは、90年代の日本からインスパイアしたという華麗なメンズコレクションだ。和花のようなハンドペイントやドラゴンのジャカート、墨絵風アイテム、フーシャピンクやレッドなど鮮やかなカラーなどでメンズとは思えない華やぎを醸し出した。
同ブランドらしいテーラリングの再構築も健在で、ウィメンズコレクションとシンクロ。スカートをレーヤードしたルックや、クリスタルをふんだんに使ったタキシード、英国刺繍やラッフルづかいなどジェンダーミックスを実現した。アクセサリーは、クリスタルのネックレスやシルバーのスタッズやチェーンづかいのウェアなどを発表した。
ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)
「ジョン ローレンス サリバン」は、メイン会場から少し離れたオールドストリートのアンダーグラウンドなムード漂うスペースでランウェイを開催。“DEEPER THAN NIGHT”と言うテーマを掲げ、パンチの効いたコレクションを発表した。同ブランドが得意とするテーラリング、レザー、反骨精神を洗練して仕上げた。
洗練さを生んでいるのは素材づかいとシルエット。素材はマットやダルなものを抑え、シャイニーやシャープなものを使用した。シルエットは、膨らみを持ちながらもルーズにならないもの。ブーツインやレイヤードが生む、かすかな抜け感も今の時代の空気にぴったりだ。
リアム ホッジス(Liam Fodges)
第5世代(5G)を見据え、フューチャリズムとサイバーパンク要素をミックスしたコレクションを発表。
パステルのアートオブジェを設置した会場に登場したのは、POPなルックの数々。ピンクやブルーを切り替えたり、組み合わせたりしてチアフルでユースなムードが漂う。またデジタルやアングラ要素も散見。ユーザーの気持ちでスピーディーに切り替えられる5G時代を表現しているのであろうか。
着こなしで目立つのは無造作テクニック。服を着かけた子供のように、めくり上がったようなクロップドトップス、アシンメトリーなケープのようなニット、途中で柄が消えたかのようにぼかしを入れたチェックシャツなど、計算された抜け感が全体を包んでいる。
柄やモチーフは、レトロなストライプやチェックとデジタルなモチーフやイラストミックス。また、80年代のエレガントスポーツのアイコン「エレッセ」のマークなどもリアム風にアレンジした。
クレイグ・グリーン(Craig Green)
「J.W.アンダーソン」がパリメンズで発表する今、ロンドンメンズを担う存在である「クレイグ・グリーン」。ロンドンメンズ最終日に、バンクエリアのホールでコレクションを発表した。
レンガで造られた会場の中に、ミラー張りのランウェイを設置。レトロ要素とフューチャー要素が共存する中、ショーを開催した。ショー前半はワークデザインが効いたクレイグらしいルック。レザー要素を組み込んだことで、洗練を引き寄せた。ワークディテールを強調したり、トライバルなアクセサリーを取り入れたりしても浮き上がらない点はさすがだ。
ショーの中盤からは、レッドやグリーン、イエローといった鮮やかなルックが登場。紙細工のようにカッティングしたアイテムなどもありクラフト感が際立つ。しかし、それはあくまでしなやかなもので、風にそよぐ。クレイグの象徴である紐づかいがより軽さを感じるコレクションだ。
今回より感じたのは、「ロンドン=若さ」であるという点。以前は、英国を代表するデザイナーやサヴィルロウのテーラリング、商業ブランドなどもあったが、それらはパリなどに発表の場を移し、ファッションウィークでの発表そのものをしなくっている。しかし、そのことでストリートブランドや新進気鋭ブランドが前面に押し出され、「若いデザイナーを見つけるならロンドン」という長所を印象づけている。
一方で、パリを始めとするコレクションシーンではストリートトレンドがピークアウトとなっている。ロンドンを見ることで、ストリートトレンドの行き先を占うこともできる。ロゴ依存のストリートトレンドがますますマス化している今、デザイナーたちが打ち出しているのは「オトナ化」と「アートとの融合」だ。
「オトナ化」の流れでは、「レトロテーマ」がさらに続いている。ミッドセンチュリーや大戦前のユースファッションを現代に解釈するというアプローチはロンドンで生まれたが、現在リアルクローズに広がっている。オープンシャツ、ポロシャツ、スウィングトップ、スラックスという「レトロテーマ」でデフォルト化したアイテムに、ステンカラーコートやテーラードジャケット、レギュラーシャツなどが加わり大人が着られるルックに磨きあげている。まさに「レトロテーマ」を直球で提案した「ルー ダルトン(Lou Dalton)」、ブライトカラーを取り入れて詩情豊かなコレクションを見せた「イートウツ(E. TAUTZ)」、デザイナーのバックボーンである中近東要素を取り入れながら美しいドレープのルックを見せた「カシミ(QASIMI)」などがこの流れにある。
一方、ロンドンらしい「アートとの融合」の流れにあるのが先に挙げた「リアム ホッジス」、ロンドン最大の注目株「チャールズ ジェフリー ラバーボーイ(CHARLES JEFFREY LOVERBOY)」、ジェームス・ロング率いる「アイスバーグ(ICEBERG)」などだ。この「アートとの融合」こそがロンドンの本筋。多くのショーが行われたイーストエンドというローケーション特性と相まって、ロンドンメンズの立ち位置を全世界に発信したと言えよう。