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2018.12.10
【イタリア現地レポート】トップメゾンを魅了する伊ニットメーカー「リネアピュー」がミュージアム級のレースコレクションエリアをオープン
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イタリアらしい色使いと革新的で創造性の高いファンシーヤーンを得意とするニットメーカー「リネアピュー(LINEA PIU’)」。同社が提供するニットは多くのデザイナーに愛され、顧客には「シャネル」、「アライア」、「ジョルジョ・アルマーニ」、「ラルフ・ローレン」、「ルイ・ヴィト」ン等々、世界中のトップメゾンが名を連ねている。
これらの一流メゾンの過去のコレクションの一部や、1975年に同社が創業以来、これまで発表してきた糸やステッチは、元倉庫だった部分を改装して2016年にオープンしたアーカイブに収められている。その糸の種類は3561種、ステッチパターンは9136種。これらが年代とシーズンごとに整理されて展示されている。さらに同社と特にゆかりのある「シャネル」と「アライア」のために設けられた特別展示や、2005年のニッティングヤーン・ウィービングヤーン・ニット地見本市「ピッティ フィラーティ」の際に展示したモネの絵に登場する衣装をモチーフにしたピースなどの常設展示コーナーや、シーズンごとに入れ替えられる一流メゾンから提供されたアーカイブピースやリネアピューのオリジナルピース、アクセサリーやインテリアにいたる様々な品のディスプレイも。総計5万点を超える品を所蔵している。
去る11月29日、このアーカイブスペースに「Sala dei Rari」という150㎡の新しいスペースがオープンした。これは日本語だと“レアものの部屋”というようなニュアンスだが、ここには主に同社社長のアレッサンドロ・バスタリがコレクションした、希少なレースのコレクションや服飾に関する本や資料が展示されている。その数は1800年代から1970年代にいたるまでの服飾文化に関する書物460冊、1500年代のヴェネチアやジェノヴァのレースから、ロシア、フランス、イギリスなど外国の貴重なレースにいたるアンティークレース1570種、さらに編み物にまつわるかぎ針や編み棒などの昔の道具や、古い生地見本帳等も所蔵されている。
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「美しいものを手あたり次第コレクションしているうちに、これをきちんと分類・整理し、研究材料にすべきだと思ったのです。新しいクリエーションへのヒントとしてアンティーク品に価値を見出すべきだと思いました。次のアイデアを生む美に対してのセンスは、衣装やアートといった偉大なる美の歴史のリサーチから生まれてくると思うのです」とバスタリは語る。
メゾンたちがコレクションを発表する2年前に新作をプレゼンテーションするというサイクルで進むため、トレンドの先の先を行くような多方面への綿密なリサーチが常に行われているリネアピュー社。美意識を根本から養うという点で、同社がこのような博物館級のアーカイブを所有するのには大きな意味がある。
(画像:Massimo Listri)