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2025.03.04
【2025秋冬ミラノ ハイライト1】メンズとの合同開催やアニバーサリーショーなど見所満載のミラノ

写真左から「グッチ」「フェンディ」「ヌメロ ヴェントゥーノ」「ディースクエアード」
2025年2月25日から3月3日、ミラノ・ウィメンズ・ファッションウイークが開催され、2025秋冬コレクションが発表された。イタリアファッション協会の発表によると、フィジカルショー56、デジタルショー6、プレゼンテーション65、その他のイベント23件の計153件が開催された。
今シーズンは創立アニバーサリーブランドが多く、「フェンディ(FENDI)」の100周年を筆頭に、「ケーウェイ(K-WAY)」は 60周年、「ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)」と「サントーニ(SANTONI)」は50周年、「ディースクエアード(DSQUARED2)」は30周年を迎え、お祝いムード溢れるショーやイベントを開催。
また「エトロ(ETRO)」や「モスキーノ(MOSCHINO)」などメンズファッションウィークにコレクションを発表せず、ウィメンズで合同ショーをするブランドも多く、カレンダーは盛りだくさんだ。クリエイティブディレクターが退任し後任が決まっていない「グッチ(GUCCI)」や「フェンディ」など、今後が気になるブランドのショーにも注目が集まった。
ハイライト1では、ファッションウィーク前半に発表を行ったブランドのコレクションをピックアップする。
グッチ(GUCCI)


ミラノファッションウィークの幕開けとなった「グッチ」。サバト・デ・サルノの直前の退任により、デザインチームによって手掛けられた今回のコレクションには大きな注目が集まった。会場はロッソ アンコーラから一転した一面のダークグリーンで、今年、誕生50周年を迎える、ブランド創設者グッチオ・グッチのイニシャルをモチーフにしたエンブレム、インターロッキングGを模したインフィニティのマークのようなランウェイを設置。メンズとウィメンズのモデルたちが交差し合うように歩く仕組みだ。そこに、アカデミー賞受賞作曲家であり指揮者のジャスティン・ハーウィッツが手がけた楽曲を、オーケストラがライブ演奏して華を添える。
コレクションでは「グッチ」が60年代後半にショーを始めてから現在に至るまでの様々な年代のアイコン的スタイルを集合させた。それはトム・フォード、アレッサンドロ・ミケーレ、そして前任のサバト・デ・サルノなど、代々のクリエイティブディレクターへのリスペクトでもある。そしてそこには「完璧さの中にある意図的な抜け感、計算された自然体「を意図する「スプレッツァトゥーラ(sprezzatura)」と呼ばれるイタリアらしいスタイルを入れ込んでいる。
ウィメンズは60 年代風の大きなボタンやポケットの付いたミニコートドレス、ファーやモヘアのコート、サイドスリットの入った膝丈スカートから、90年代のスリップドレスやヴェロアのドレス、袖の部分に裏地の生地を使ったエコファーのコート、スパンコールのセットアップまで。また今年70周年を迎えるホースビットにフォーカスし、ネックレスやベルト、そしてもちろんバッグやスリッパにもこのモチーフが使われている。
メンズはテーラードスタイルがメインだが、タイドアップの代わりにタートルネックを合わせたり、一方タイドアップのスーツスタイルはタイやシャツもスーツとワントーンでコーディネートしたりして、ひねりを加えている。
ドネガルツイードやパールの光沢仕上げを施したナッパレザーなど、ウィメンズとメンズ両方で同じ素材が使われ、グリーン、グレー、モーブ、ブラウンのグラデーションカラーやペールカラーなどの色使いのトーンも合わせて、ジェンダー間にも共通性を持たせている。
ショーのフィナーレにはダークグリーンのトレーナーを着たデザインチームが登場。後任デザイナーについてブランド側はまだ沈黙を守っており、発表は近日中とのことだが、今回のデザインチームによる中継ぎはかなりの傑作であり、新しい「グッチ」のスタートに向けてのポジティブなムードが漂っていた。
フェンディ(FENDI)


1925年、アデーレ・フェンディとエドアルド・フェンディによって毛皮と皮革製品の店としてローマで創業した「フェンディ」は今年100周年を迎える。そのアニバーサリーを祝うべく、増築リニューアルしたばかりのミラノ本社にて、今回のショーが行われた。
昨年、キム・ジョーンズがウィメンズのクリエイティブ ディレクターを退任したため、今回のショーは、フェンディ家3代目で、アクセサリーおよびメンズウェア部門のアーティスティック ディレクターであるシルヴィア・フェンディが手掛けた。
ファーというブランドのオリジンを再アピールすべく、ファーストルックはハイカラーのデザインが気品を感じさせつつワイルドなフォックスファーのフレアコート。その後もロングコートやロングジレ、レースとファーを組み合わせたランジェリードレス、ペカン柄のミンクコートなど、ファーはふんだんに登場する。メンズでもファーのチェスターコートやロングストール、襟のディテールなど様々に使われる。
同様に、ブランドのオリジンであるレザーアイテムも多い。今シーズン特にイールが目立っており、ペカン柄のスカートと同柄のブーツやフレアドレスなどに使われる。「セレリア」ステッチがさりげなく入ったレザースカートや、全体にプリーツ上の加工がなされたドレスやセットアップも登場。ウールやファーとの切り替えが施されたレザーコートもある。
ファーやレザー以外には、アコーディオンプリーツのシルクカクテルドレス、ラインストーンがちりばめられたツイードのコクーンコートやセットアップ、不規則な波状にキルティングされたサテンスカートなど、上品なフェミニンさが漂うアイテムが多数登場。ランジェリードレスやビジューやフェザーをあしらったチュールドレスなど透け感のあるアイテムも差し込まれる。ラインストーンを施したニットや、レースやチュールのシャツやポロシャツはメンズでも登場した。
小物では、ひねって開閉する月形のバッグ「フェンディ ジャーノ」、2005年にローンチされたバッグ「フェンディ スパイ」など。遊び心を加える、「フェンディ マキシ チャーム」も各所に登場。「フェンディ」のファブリックで作られたコレクションピースを纏っている。
ちなみにショーは、同家4代目のデルフィナ・デレトレズ・フェンディの7歳の双子の息子、ダルドとタツィオが、1967 年に カール・ラガーフェルドがデザインし、7 歳のシルヴィアが着用した乗馬用アンサンブルのレプリカを着用して登場し、木製の扉を開いてスタート。すでに歴史は5代目に受け継がれているという「フェンディ」の明るい未来を予言していた。
ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)


今シーズンも自社施設、ガレージヴェントゥーノにてショーを行った「ヌメロ ヴェントゥーノ」。コレクションでは“Intrusive Bows (でしゃばりなボウ)”というテーマで、 ボウ(リボン)に焦点を当てた。
今シーズンは、ソフィア・コッポラの3本の映画「ロスト・イン・トランスレーション」、「ヴァージン・スーサイズ」、「マリー・アントワネット」を再解釈しているが、その際にアレッサンドロ・デラクアはリボンがムードを表現すると考えたのだとか。「リボンは邪魔な構造で、きれいな線の上に設置すると不格好に見える場合もあるが、驚きの魅力を生み出す要素」だと言う。そして(前出の)「最初の作品からは、構築されたカットのミニマルさとリトルブラックドレスの不変の魅力を、2番目の作品からは、透明感、マスキュリンとフェミニン、重厚と軽やかさのミックスの官能性を、3番目の作品からは、シャープでありながらパステルカラーで表現された遊び心を取り入れた」と言う。
そんなコレクションでは、デコルテ部分にハートカットのようにあしらったリボンや細いボウを施したミニマルなドレスから、大きなリボンをフロントに施したミニドレスやスカートまでが登場する。素材はネオプレン、レザー、スパンコール、メンズスーツに使われるようなプリンスオブウェールズ柄のウールまで様々だ。
透け感のあるチュールドレスやランジェリードレスも登場。裾にフェザーやフリンジのディテールを加えて、ミニマルにフェミニンさをプラスしている。ウエスト部分を絞った砂時計フォルムのコートやファーのダッフルコート、コクーンシルエットのトレンチやニットのボンバージャケットなどひとひねりあるアウター類も揃う。そんな足元には複数のリボンをあしらったサテンサボやバレリーナを合わせた。
キュート、可憐というイメージの象徴的存在であるリボンという一つのモチーフを、形やボリュームを変えることで、官能性や強さなどの多様な異なる側面を表現し、実験的なアプローチの中に「ヌメロ ヴェントゥーノ」らしさを盛り込んだ。
ディースクエアード(DSQUARED2)


今年で30周年を迎える「ディースクエアード」。男女混合のショーを行うようになってからは、コレクションをメンズファッションウィークに発表していたので、ウィメンズファッションウィークでのショーは久しぶりだ。
今回はアニバーサリーを祝うべく、ミラノの中心からかなり離れたイベント施設に旧倉庫街のクラブのようなセットを作り、パーティムード満載のショーを開催。ドル札でいっぱいの装甲戦車から現れたラッパーのドーチがファーストルックを飾ったのを始め、NELチョッパーを始めとするその他の有名ラッパーや有名モデルたちがランウェイに登場。ヴィンテージカーやバイクで会場に乗り込むモデル、ローラースケートでランウェイを駆けめぐるモデルなど、それぞれのパフォーマンスが華やかだ。カナダのカウボーイやディスコクイーン、グラムロッカー、パーティピープルなど、「ディースクエアード」というブランドを象徴するキャラクターたちが勢揃いし、ブランドのアイコニックなアイテムを纏う。
ウィメンズはオーバーボリュームなボンバーにトレインの付いたセクシーなチュールドレス、ゴージャスなマキシファーコートにハードなレザーパンツやスポーティなボディスーツ、テーラードテイストのブレザーにブロークンデニム・・・といった、「ディースクエアード」らしいテイストをミックスしたレイヤードスタイルが登場。
または、サイドが全開のチュニックドレスや大きくスリットの入ったアシンメトリーなドレス、チュールにフリンジやフェザーを施した透け感のあるドレス、ルーレックスのセカンドスキンなどパンチの効いたセクシーなスタイルも揃う。
メンズもタイドアップにボリューミーなボンバーやシアリングのアウター、またはスパンコールのジレとメタリックなハイヒールを合わせたり、テーラードコートにシルバーのパンツを合わせるなどのミックスが見られる。ブランドお得意のレザー、ブロークンデニム、ショーツなどのアイテム、そしてボクサースタイルも。
また、30周年を記念して5つのブランドとのコラボレーションを発表。アーガイル柄のニットが特徴的な「マリアーノ(Magliano)」 、「I♡DSQUARED2」と描かれたパーカーにバレリーナスカートを合わせた「ヴァケラ(Vaquera)」、キャップをジャケットの肩にあしらってアップサイクルした 「ベター(BETTTER)」などのコラボアイテムをはじめ、ドゥカティ(Ducati)、キッス(KISS)とのアイテムも登場。
最後はブリジット・ニールセンが警察官に扮して現れ、ディーンとダンを逮捕するものの二人は脱走する、という演出でショーはフィナーレに。凝ったショーの演出も長年のお馴染みだが、フルパワーの茶目っ気とセンスで彼らが30年を積み重ねてきたことを改めて感じさせる。そしてこのショーでは、次のステージへのさらなる躍進を予見するような、パワフルでハッピーなエネルギーを発していた。
オニツカタイガー(Onitsuka Tiger)


レオナルド・ダ・ヴィンチ国立科学技術博物館にてショーを行った「オニツカタイガー」。今シーズンは伝統と現代が交わる東京の二面性からインスパイアされた“アーバンデュアリティ”というテーマを掲げた。渋谷、新宿、原宿の賑やかなエネルギーと周辺地域の落ち着き、人々の生活がすさまじいペースで動いている大都市でありながらそこに残る日本文化の本質ともいえる親密で黙想的な側面など、対照的な要素や個性の美的融合を表現している。
そんなコレクションでは、現代的英国紳士的なルックから西洋からインスパイアされたディテール、パンクのスタッズのアクセントからロマンティックな華やかさまで、さまざまなスタイルが融合される。
キャミソールドレスやタッセルのアクセントが付いたガーリーなドレスにはマスキュリンなブルゾンをコーディネートしたり、足元にはブーツを合わせたり。千鳥格子のトラウザーやカントリー風のオイルレザージャケットなど英国調の要素もあれば、手刺繍を施したノルディック柄のセーターもある。1980年代のポップミュージックのきらびやかさを添えるアイコニックな「MEXICO 66」を再解釈したクリスタルスタッズ付きのブラックスニーカーやメタルのスクエアトゥのバレエシューズも登場。
ナローシルエットのPコートから、ユニセックスに着こなせるボリューミーなボンバーやハンドニットのローゲージカーディガンなどサイズ感も様々。個々のスタイルによって、自分らしいルックを作り上げることができるラインナップで、都会の多様性にマッチするコレクションとなっている。
ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)


Courtesy of BRUNELLO CUCINELLI
今シーズンもミラノショールーム「カーザクチネリ」にて展示会を開催した「ブルネロ クチネリ」。“INSTINCT & REASON(直観と理性)”というテーマで、自己の内面において、あるいは自己とその外側との調和についての考察を続ける。それは同ブランドが常に追求する「相反する要素が調和する森羅万象のバランス」の考え方に基づいている。そんな中、本能や直感で行動する動物と、直感的なものは持ちつつも理性でそれを抑える人間が、相対しながらも互いをリスペクトし合い、一つの方向に動的に向かっている例えとして「乗馬」をキーワードとした。
コレクションでは、ホースライディングブレザー、ジョッパー帽、ライディング風トラウザーなどの具体的な乗馬アイテムから、伝統やスタイルのルール、それを形作るテーラリングやクラフツマンシップ、英国調のパターンなど乗馬が持つ抽象的なイメージへと繰り広げられる。そこには理性を直感でどうくずすかという、はずしのエッセンスや相反するもののミックスを取り入れた、ミスマッチ感や意外性と言った要素も加わる。
プリンスオブウェールズのメンズスーツ生地にスパンコールあしらったセットアップや、同生地のジレにシフォンスカートを合わせるなど、マスキュリンとフェミニンをミックス、シアリングのアウターに品のあるプリーツスカートを合わせてワイルドと正統をミックスしたり、またはメタルボタンのブレザーにデニムを合わせ足元はパンプスをコーディネートしてカジュアルとシックをミックスしたものもある。
クラフツマンシップとテーラリングの技術をデイリーユース向けにアレンジし、そこにイレギュラーなはずしを入れることで、ノンシャランなスタイルを提案した。
ブリオーニ(BRIONI)


ウィメンズの充実度をますますアップさせている「ブリオーニ」は、今回もミラノショールームにて展示会を開催。マスキュリンとフェミニン、伝統とモダンさがミックスされ、「ブリオーニ」らしいメンズウェアの仕立ての技に、ウィメンズのオートクチュールのテイストを加えた。
メインとなるシルエットは2つあり、まずは1960 年代メンズウェアのアーカイブから着想を得た直線的なでクリーンなHライン。ベルトでウエストマークしたパンツスーツやテーラードジャケットとニットのスリット入りスカートのコーディネートとして登場する。
もう一つは、メンズでも登場したラウンドショルダーのコクーンシルエットで、ケープコートやダブルスプリッタブルセーター、ニットドレスとして繰り広げられる。
素材はメンズでよく使われるシルクソラーロやバイカラーチェック、ヘリンボーンなども登場。クロップト丈のピーコートやミリタリーコートにスリムスカートをコーディネートしたり、ツィードのような堅めのジャッケットに柔らかなリバーシブルニットをあわせたり、サファリジャケットがフェミニンなコートドレスになったりと、対照的な要素の組み合わせが見られる。
アイコンとなっている、“マルテラート”の留め具は、様々に登場し、レザーサッチェルバッグの留め具として使われたり、洋服の金具部分などにもさりげなく使われる。
イブニングではシルクの軽いコートや、メンズでも登場していた、同社の職人たちの手仕事による伝統的なビーズ刺繍が施されたドレスなど、オートクチュールの要素を加えたアイテムが揃った。最高級のクラフトマンシップとメンズウェアの確かな土台をデザインに生かしたコレクションは、今シーズンもぶれることなく「ブリオーニ」らしい品格を漂わせていた。
ヘルノ(HERNO)


Courtesy of HERNO
ミラノショールームにて展示会を行った「ヘルノ」。メンズと同様、シーズン立ち上がりの秋の初めから冬の終わりにわたって、長い時期で着回しができるアイテムの充実に注力している。
テーマについてもメンズと連動した4つのスタイルで構成。まずはヘリテージとアヴァンギャルド、機能性と卓越性のバランスへのオマージュをテーマに、「ヘルノ」らしさのつまった“オリジン”。フランスのノルマンディー地方の風景にインスパイアされたフォレストグリーン、ベージュ、バーガンディ、オレンジ、パールグレーなどアースカラーやニュアンスカラーを使用し、ミリタリー風のアウターやバレルシルエットのパンツなどオーバーボリュームめのシルエットで登場。ロゴを前面に出したニットやパーカー、ポンチョ、シャツジャケットやビーズ刺繍付きのダウンなどアイテムのバリエーションも様々だ。
2つめはクラフツマンシップにフォーカスした“エクセレンス”。 英国調の千鳥格子のジャケットやスエード使いなどミニマルなカントリーサイドのインスピレーションで、包み込むようなラインが特徴だ。
3つ目はトレンドにフォーカスした“コンセプチュアル”で、 ラップジャケットや新しいタイプのキルティングジャケットなどが登場。そして展示会でのお披露目はなかったが、機能性と美しさを両立した“ファンクショナル ワードローブ”のテーマが加わり、デザイン的にはどんどんモダンになりつつも、汎用性や使いやすさへのケアを忘れない「ヘルノ」らしさを発揮していた。
取材・文:田中美貴
画像:各ブランド提供
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田中 美貴 大学卒業後、雑誌編集者として女性誌、男性ファッション誌等にたずさった後、イタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、カルチャー、旅、食、デザイン&インテリアなどの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。apparel-web.comでは、コレクション取材歴約15年の経験を活かし、メンズ、ウイメンズのミラノコレクションのハイライト記事やインタビュー等を担当。 TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントのオーガナイズやPR、企業カタログ作成やプレスリリースの翻訳なども行う。 副業はベリーダンサー、ベリーダンス講師。 |