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2024.06.16

【2025春夏ピッティウォモ ハイライト】イベントが活発化 クラシコ系はライトネスやスポーティ要素が増加

Courtesy of Pitti imagine

 

 第106回ピッティ・ウオモが2024年6月11日から14日まで、フィレンツェのフォルテッツァ・ダ・バッソで開催された。エントランス部分からのメイン館の間の導線上に、カジュアル、スポーティ系ブランドの屋外ブースが充実し、カラフルで華やかな雰囲気。そしてそれにさらなる色を添えるのが、テーマである“PITTILEMON”に因んだ、一面レモンイエローのインスタレーション。シンプルでありながら多くのセグメントで構成され、甘みと酸味の両方で、はじけるようなエネルギーを与えてくれる象徴としてレモンを主役としたのだとか。今回も展示スペースは、「Fantastic Classic」、「Futuro Maschile」、「Dynamic Attitude」、「Superstyling」、「I Go Out」という5つのセクション、そしてサステナビリティファッションに強化した「S|Style」が復活。

 

 事前のピッティ協会の報告によると、出展ブランド数は790で、そのうち43%が海外からの出展だった。

 

 

活発化するショーやイベントの見所

 

プラン C(Plan C)

Photo by Miki Tanaka

 

 主要なイベントとしては、11日には「プラン C」が初のメンズカプセルコレクションを発表した。初日のお披露目日にはルック着用のパフォーマーたちも登場。「私はメンズウェアの機能性やシルエット、ワークウェアやユニフォームが好きで、元々ウィメンズコレクションがメンズウェアからのリサーチから始まっているため、今回は逆にウィメンズを再考察してメンズに落とし込みました」とカロリーナ・カスティリオーニ。テクニカル素材によるハンティングジャケットや、ロープなどのディテール使いなどサイクリング、ハイキングなどのスポーツの要素が加えられ、また娘のイラストや自分が撮影した写真などアーティスティックなプリントなども生かされている。

 

ポール・スミス(Paul Smith)

Courtesy of Paul Smith

 

 同日夜にはスペシャルイベントとして、「ポール・スミス」が31年ぶりにピッティ・ウオモでコレクションを発表。本人の登場は2017 年に「PS ポール・スミス」で参加して以来だ。新古典主義の19世紀の貴族の私邸、ヴィラ・ファヴァールを、1960年代にポールがソーホーで通っていたイタリアのカフェの雰囲気で作った「バー・ポール」に変身させ、本人自らが解説する形でプレゼンテーションを行った。「皆がより盛大に、美しく、高価になろうとする中で、今回は服についてだけ語ってみようと思いました」とポールは語る。

 

 コレクションはこのバーで繰り広げられるソーホーのアーティストたちの夜の集いのイメージで、ノンシャランな雰囲気が漂う。千鳥格子やチェックなど英国風のクラシックテイストのジャケットやスーツに、プリントオンプリントでシャツとネクタイや「リー(Lee)」とのコラボレーション(来年カプセルコレクションを販売)のデニムを合わせたり、リネンやフレッシュウールなど軽量素材を使い、ライトでリラックスしたシルエットに仕上げている。プリンス・オブ・ウェールズのオーバーサイズのトレンチコートやスーツなど、自身のアーカイブからの再解釈も。ロックスターを意識したという、襟に刺繍が施されたタキシードジャケットやサイドシームにフラワーモチーフが施されたパンツなど華やかな要素も加わる。解説の中で、ポールがこれらのアイテム同士を着まわす提案をしていたのも印象的だった。

 

マリーン セル(Marine Serre)

Courtesy of Marine Serre

 

 12日には、ゲストデザイナーの「マリーン セル」のショーがフィエーゾレ(フィレンツェ郊外)の15世紀の宮殿、ヴィラ・ディ・マイアーノにて開催された。コレクションテーマの“Always Bonded”は、平和と絆への呼びかけを象徴しているとか。メンズコレクションではあるが、ウィメンズのファーストルックに始まり、半数近くは女性モデルが登場した。

 

 メンズに関しては、ダブルブレストのスーツやコート、タイドアップなどテーラリングの要素が強いが、それを紫、赤×黒などの強い色を使ったり、カラフルなコサージュを白いコートに施したり、襟を強調した開襟シャツとスーツやジャケットをコーディネートすることで、パンチを効かせている。またシグニチャーである三日月モチーフをあしらった光沢レザーのトータルルックや、ホームリネンに使われる刺繍を施したシリーズも登場。バックパックから再構成されたアイテム、パッチワークパターンなどお得意のサステナビリティの要素も加わっている。

 

ピエール ルイ マシア(PIERRE LOUIS MASCIA)

Courtesy of Pitti imagine

 

 13日には、「ピエール ルイ マシア」が初のランウェイショーをテピダリウム・ジャコモ・ロステルという温室にて開催。変わった観葉植物と蝶を収容するために作られたこの場所は、自然からのインスピレーションでデザインされる生地たちとリンクする。「ファッションだけでなくアート、ダンス、哲学など様々な文化を表現するというアイデアから生まれています」とピエール・ルイ・マシアが語るように、ショーはパフォーマンスとライブミュージックと共に繰り広げられた。

 

 スタートはカンディンスキーらによる芸術運動、ブラウエ・ライター(青騎士)からインスパイアされたブルーだったが、それがその他のあらゆる色とモチーフに広がっていったという。花、木、幾何学模様などのプリントやビーズに溢れ、それらには鮮やかなものから、グラデーションやかすれたような効果も使われている。またイヴ・サンローランからのインスピレーションの東洋的な赤とオレンジが取り入れられている。コレクションは最初に生地ありきで、そこから洋服が生まれたのだそうで、コーディネートのほとんどはプリントオンプリント。シャツやローブ、ドローストリングスパンツなどジェンダーレスなアイテムたちがゆったりとしたシルエットで繰り広げられる。

 

クラシコ系ブランドはカラフルにシフト

 

 クラシックやエレガンスへの回帰、クワイエットラグジュアリー(という言葉自体はいまやさほど使わなくなったが)は今シーズンも続いているが、春夏ということもあり、それをより軽く、やさしく、涼し気にする傾向が強くみられる。特に軽さはどこもマストな条件で、そのための素材の開発にも力を入れている。

 

  • 「サルトリオ(Sartorio)」

  • 「ルビアム(Lubiam)」

  • 「マニュエル リッツ(Manuel Ritz)」

Photo by Miki Tanaka

 

 また2025春夏の最大のトレンドはカラーで、エネルギッシュで明るい色を優しいイメージのパステル系やニュアンスカラーで打ち出すところが多い。具体的には薄いブルー、そしてピッティのテーマ“ピッティレモン”の影響か黄色が注目色となり、ピンク、オレンジ系、様々なトーンの白、そして夏には珍しいブラウンや黒も。これらの色を同トーンでコーディネートすることでスーツやセットアップのように見せる提案が多くみられた。エレガントな中にもリラックスやカジュアルさが見られる傾向も続き、見た目はクラシックだが実は快適、という仕立ての工夫も進化している。

 

 またスポーツがキーワードになっており、テニスやゴルフなどの要素がエレガントスタイルの中に加えられたり、カプセルコレクションを出すブランドも。またサステナビリティは今や当たり前となっているが、特に来年からヨーロッパのPSFA(フッ素)規定が変わることから、PSFAフリーに注力するブランドが多かった。

 

Courtesy of BRUNELLO CUCINELLI

 

 例えば「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」は“ACTS OF INSTINCT”というテーマで、直感的に心で感じたままのスタイル作りが大事だと言う考えのもと、ノンシャランなエレガンス提案をする。ピンク、アプリコット、パパイヤなどのパステルやニュートラルカラーが今年のキーワードとなっている。そしてテニスに続き、ゴルフのカプセルコレクションを発表した。

 

Courtesy of HERNO

 

 さらにトータルブランドとして充実度を増す「ヘルノ(HERNO)」は軽さ、機能性、ディテールへのこだわりを軸に、より汎用性と卓越性に力を入れたコレクションを発表。今のトレンドを反映するかのように、テニスの要素を入れたアイテムも登場している。
 テニスの要素は「タトラス(TATRAS)」にもみられるが、それは70年代のちょっとレトロな雰囲気。トータルファッションを強化すべく、軽めのインナーやボトムスも充実させている。

 

Courtesy of Kiton

 

 また「キートン(Kiton)」のカジュアルブランド「ケイエヌティー(KNT)」 はテニスのカプセル コレクション「A Grand Journey」を発表。ポロ シャツや T シャツなどコットンニットウェアを主流にベスト、カーディガン、バミューダ、チームジャケットなどクラブハウスのディテールをプラスしている。

 

取材・文:田中美貴

 

田中 美貴

大学卒業後、雑誌編集者として女性誌、男性ファッション誌等にたずさった後、イタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、カルチャー、旅、食、デザイン&インテリアなどの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。apparel-web.comでは、コレクション取材歴約15年の経験を活かし、メンズ、ウイメンズのミラノコレクションのハイライト記事やインタビュー等を担当。 TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントのオーガナイズやPR、企業カタログ作成やプレスリリースの翻訳なども行う。 副業はベリーダンサー、ベリーダンス講師。

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