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2023.01.16
【2023秋冬 展示会レポート ピッティウォモ】来場者倍増 カジュアル化がさらに進む
第103回ピッティ・ウオモが2023年1月10日から13日まで、伊フィレンツェのフォルテッツァ・ダ・バッソで開催された。まだ新型コロナウィルスの影響が残っていた昨年6月の前回よりも出展数、来場客とも増えてコロナ前のような雰囲気が戻りつつある。中国やロシアなど一部を除く状況ではあるが、欧米からの来場者は昔の勢いを戻しており、日本人バイヤーやメディアもかなり来ていた様子。
そして日本からの出展も多かった(後述)。ピッティ協会の報告によると、総来場者数は18,000人、出展ブランド数は約800で、昨年の1月比では200%増だとか。
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Courtesy of Pitti Imagine
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「PITTIWAY」をテーマに巡回ルートにフォーカスした構成となっている今回は、会場の案内が大きく矢印で示されていてわかりやすく、中央パビリオンの前の広場に集中的に人が群がっていたこれまでより、全体的に導線がばらけた感じだ。
そういえば、今回は中央の広場に群がるPAVONE(クジャク)、またはPITTONE(パイソン)と呼ばれるコスプレ系の方々が少なくなっていたような気がする。一般的な来場客の着こなしもますますカジュアルというか普段着傾向で、“お洒落を頑張りすぎるほうがカッコ悪い”というムードさえ感じた。
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Courtesy of Pitti Imagine
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スポーツ、カジュアル、アメカジをクラシコやエレガンスと融合
会場内で発表されていた新作たちにも、ますますカジュアル&スポーティー傾向がみられる。とはいえ、クラシックな品の良さや上質なモノづくりが背景にある実力派イタリアンブランド達を中心に、カジュアルの中にクラシックのテイストを入れ込む流れが見られた。
例えばフィールドジャケットやカジュアルなアイテムにカシミアやビキューナなどより高級な素材を使用したり、テーラードパンツのディテールをスポーティなパンツやジーンズに使用。
または、テーラードジャケットはジャージーやストレッチ素材、しわにならない素材など、快適で手入れのしやすい素材で作られ、スラックスのウエスト部分はドローストリングスやゴム、アジャスターなどを使うなど、見た目はクラシックながら、着心地はリラックス感を重視したアイテムも継続している。
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高級素材カジュアル「ブルネロクチネリ」
そんな中、ニットは相変わらず勢いがあり、手作業が生きた複雑な編みを施したり、カウチンセーターを始めとした柄ニットなど、ニット自体に重要性を持たせる傾向も。ポロニットやニットジャケットなど、クラシックに着こなせるニットアイテムはさらに充実している。
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ニットが主役に「グランサッソ」
また、最近の世界的な古着ブームの影響か、ヴィンテージ加工やからのインスピレーションも各所に見られる。特にカレッジやプレッピー的な古き良きアメリカ的なテイストが印象的だ。
そもそもイタリア人は、けなしながらも結局のところアメリカンファッションが好きなのだが、シンボリックなアメリカンアイテムをイタリアらしく上質に品よく作り直して新しいカテゴリーを作っている。
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「ジャンネット」のヴィンテージテイストのシャツ
そして、2026年に開催されるミラノ冬季オリンピックをすでに意識してか、スキーウエアを発表したり、アフタースキーのためのアイテムをコレクションに入れているブランドが目立った。こちらも本格的スポーツギアというよりは、高級素材を使い、テーラードテイストも盛り込んだ、あくまで上品さ重視のものが多い。
オータムカラーとともにライトブルーなどのサマーカラーも目立つ
色は王道のネイビーとグレーは健在だが、くすんだオレンジ、焦げたブラウン、深めのボルドーやテラコッタなどニュアンスのある暖色系のオータムカラーが目立っていた。その一方でオフホワイトや特徴のある水色系(ごく薄いスカイブルー、ターコイズなど)の秋冬らしくない色も多く登場していた。
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オータムカラー「ピアチェンツァ」
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オータムカラー「スティーレ ラティーノ」
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オータムカラー「ブリリア」
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ニュアンスブルー「ポール&シャーク」
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ニュアンスブルー「ベルベスト」
日本のモノづくりの技術を駆使した逸品
さて今回のピッティでは、日本の企業の進出が目立った。まずはJ∞QUALITY認定の日本の最高峰の技術を持つ繊維産業のメーカー11社が、「ポステレガント(POSTELEGANT)」の中田 優也をデザインディレクターとして共同発表した「J∞QUALITY FACTORY BRAND PROJECT」。
生地を丈夫にする刺し子二重織りの技術を駆使した中国繊維株式会社のトラッカージャケット、立体的なフォルムを生む圧縮無縫製で作られたサンディ株式会社のチェスターコート、スーパーハイゲージで伸縮性が高く、品の良い光沢感がある第一ニットマーケティング株式会社のファインウールクルーネック、強圧縮バランサーキュラーツイルで軽く立体的に作られた丸和ニット株式会社のパーカなど、日本のモノづくりの技術を駆使した逸品たちが並んだ。
そしてJLIA(一般社団法人日本皮革産業連合会)による、「JLIA Japan leather booth」にて皮革産業界のトップブランド6社が作品を発表。参加したのは、ソールづくりの技術からの立体的なプレスを小物に活かした「カド プレス(Kado-Press)」, すでに海外でも認知度が高い「カンペキナ(Kanpekina)」、手作業やアイデアを駆使したユニークな一点物の靴「ヌメロ ウノ(Numero Uno)」、履きやすさや服との相性を考えたスニーカー「オーエーオー(OAO)」、見た目はクラシックながらゴアテックスやビブラムソールなど機能性とファッション性を追求した「リーガル」の海外向けライン「リーガル シュー&カンパニー(REGAL Shoe&Co)」、シューリペアで培った経験を活かし、より長く履くためのこだわりの靴「シュー ライフ オブ ライフ バイ エイチ カツムラ(The Shoe of Life by H.Katsukawa)」。
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カド プレス(Kado-Press)
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カンペキナ(Kanpekina)
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ヌメロ ウノ(Numero Uno)
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オーエーオー(OAO)
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リーガル シュー&カンパニー(REGAL Shoe&Co
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シュー ライフ オブ ライフ バイ エイチ カツムラ(The Shoe of Life by H.Katsukawa)
「マーティン ローズ」ら招聘デザイナーのイベントにも注目
「マーティン ローズ」2023秋冬コレクション Courtesy of Pitti Imagine
今回も数々のピッティ・ウオモ主催のイベントが開かれた。ゲストデザイナーの「マーティン ローズ(Martine Rose)」は、メルカート・ヌオヴォ広場にてショーを開催。80~90年代に流行したイタリアンハウスのルーツである70年代のイタリアのディスコシーンからのインスピレーション。日常的なアイテムをディテールやボリュームで遊びつつ、イタリアらしいテーラードテイストがちょっぴり効いている。
「ヤン・ヤン・ヴァン・エシュ」2023秋冬コレクション Courtesy of Pitti Imagine
さらにデザインプロジェクトとして「ヤン・ヤン・ヴァン・エシュ(Jan-Jan Van Essche)」は、サンタマリアノヴェッラ教会にてダンスパフォーマンスを交えたショーを行い、ショーの後には和太鼓奏者、堀つぐみによる演奏が行われた。
それは「Rite」というテーマで、マントやポンチョ、マキシロングのコート、ワイドパンツやラップコートなど、オリエンタルでノマドな雰囲気に溢れるコレクションともリンクする。
「ピエール・ルイ・マシア」イベント風景 Courtesy of Pitti Imagine
さらにスペシャルプロジェクトとして、「ピエール・ルイ・マシア(Pierre-Louis Mascia)」がアキーレ・ピントとのパートナーシップ15周年を祝い、アンテノーリ宮にてファブリックでアンソロジーをファブリックで表現するスペシャルイベントを開催した。
取材・文:田中美貴
田中 美貴
大学卒業後、雑誌編集者として女性誌、男性ファッション誌等にたずさった後、イタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、カルチャー、旅、食、デザイン&インテリアなどの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。アパレルWEBでは、コレクション取材歴約15年の経験を活かし、メンズ、ウイメンズのミラノコレクションのハイライト記事やインタビュー等を担当。 TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントのオーガナイズやPR、企業カタログ作成やプレスリリースの翻訳なども行う。 副業はベリーダンサー、ベリーダンス講師。