PICK UP

2022.12.20

ファッションの裏技拝見「TOKYO BRAND PICK UP」amok 大嶋 祐輝デザイナー

音楽やアートのように「残る服」を作っていきたい

 

 

 2015年にスタートした「amok(アモク)」は、見慣れたモチーフをパロディーにしたグラフィック、インパクトのある刺繍表現やドッキングデザイン、アーティストとのコラボレーションなど、そのアートな世界観が話題のメンズブランド。デザイナーの大嶋祐輝さんに会うため、10月に移転したばかりというアトリエを訪ねた。

<PROFILE>
amok(アモク)デザイナー/大嶋 祐輝さん
1986年、群馬県高崎市生まれ。東京モード学園卒業。「MIHARA YASUHIRO」、「ANREALAGE」でパタンナーを経験したのち、2015年より自身 のブランド「amok」をスタート。
Website:http://www.amok-tokyo.com Instagram:@amok_inc

 

■ファッションに興味を持ったきっかけは?

 

 高校生の時、地元の古本屋で見つけた雑誌『ジャップ』を読んだのがきっかけで、ファッションの世界に魅了されました。それから雑誌を読み漁るようになり、お金を貯めて洋服を買うようになりました。当時の高崎はドメスティックブランドやブランド古着のお店も多くて、どんどん服の面白さにのめり込みました。

 その頃からデザイナーになりたいという思いはありましたが、憧ればかりで現実味がなかったんです。そのまま高校を卒業して、進学もせずフラフラ過ごしていたのですが、半年経って「やっぱり服が作りたい」と東京モード学園へ秋期入学。行くからには一番になろうと腹をくくりました。

 まず秋期入学生は、時間的に半期分の課題しかできないので、自宅で勉強するからと先生に頼み込んで、半年で一年分の課題をこなしました。二年次は、ひたすらコンテストに挑戦。審査員の傾向まで調べて制作したのを覚えています。三年次になると一ヶ月間のインターンシップ制度があり、憧れの「ミハラヤスヒロ」に参加。期間後も通いたいと申し出て、以降ずっと通い続けました。

 同じ頃、東京モード学園の先輩、天津憂さんが「エーディグリーファーレンハイト」のショーをやるからサポートして欲しいと声が掛かり、パターンを手伝いに行きました。その時に引かせてもらった服が東コレのランウェイを歩いたんです。学生時代にこの経験ができたのは、自分の中ですごく大きかったです。

amok 2023SS COLLECTION “MY ROOM”

 

 

■ブランドを立ち上げるまでの道のりは?

 

 卒業後は、粘り続けていたミハラヤスヒロにパタンナーアシスタントとして就職。トワルを組むのがメインでしたが、三原さんと一緒に行動して、メンズもレディスもアシストしていたのでかなり力が付きました。

 一年後に退職して、海外へ行くことも視野に入れていたのですが、決断する前に後悔しないようにと、働きたいブランドへ面接して欲しいと電話を掛けたんです。その電話に出てくれたのが「アンリアレイジ」の森永さんでした。「すぐ面接に来て」と言われて事務所に着くと、「これを引いて」とパターンを渡されました。「試験だから」とその後も何度かパターンを引きに行って、そのシーズンのコレクション発表日に名刺をもらい就職が決まりました。

 それからアンリアレイジがパリに行くまでチーフパタンナーとして任せてもらい、寝る間も惜しむ猛勉強の日々でしたが、すごく刺激的でした。三原さん、森永さんの背中を追い、だんだん自分に自信が持てるようになってきたこと、憧れだったデザイナーという存在が近くなっていると感じて独立を決意しました。

amok 2023SS COLLECTION “MY ROOM”

 

 

■ブランドのこだわりは?

 

 時代をまたいで新しい技術を追求すること。長い歴史の中で何万通りのファッションが作られてきたと思うけど、視点を変えればまだまだ違う作り方はあると思うんです。職人さんと模索しながら、その可能性にアプローチしていくのがアモクの服作りです。

 あとは、僕がそうだったように、誰かのファッションに興味を持つ「きっかけ」に、自分自身がならないといけないなと思っていて。アパレルには流行というサイクルがあるから、芸術とは切り離されているけど、そこに惹かれているからこそ、音楽やアート作品のように「残る服」を作っていきたいんです。

 例えば職人さんがハンドペイントで描く作業はアートになり得るし、一点一点の重みを大事にしていきたいです。

  • 古着を使ったアートピースを生み出すアーティストKOTA KAWAI(コウタカワイ)とのコラボレーションチェアとMA-1(トップ画像)。

amok 2023SS COLLECTION “MY ROOM”

 

 

■今後の目標は?

 

 国内の卸先をもっと増やして、ビジネスの基盤をしっかり築いていくこと。国内で売れることが、海外につながると思っています。また近年、ルックブックの作り込みに力を入れてきてすごく好評だったので、今のアモクだからこそできる見せ方、ランウェイやインスタレーションなど、枠にとらわれない新しい表現方法を見つけたいです。

  • ハンドペイントを施したトロンプルイユ(だまし絵)のスカジャンは、遠くから見るとGジャンのように見える。

  • 着るのに少し抵抗がある骨柄は、amokらしいカラーリングとニット表現でポップに仕上げた。

  • 毎シーズン登場するステッチシリーズは、縫い目に見立てた波線をくり抜き、裏からテープで補強する新しいステッチのアプローチ。

amok 2023SS COLLECTION “MY ROOM”

 

 

■若者へメッセージを。

 

 困難を乗り越えた先の美しい景色を想像しながら、目標へと突き進んでほしいです。ダメだったとしても、その過程や努力は違う形で必ず自分に返ってきます。当初の目標よりいいものが返ってくることもあると思います。

 

Interview : Masahiro Kubo, Sakura Tsuchiya Photo : Sakura Tsuchiya

 

■「ファッション力 (Fashion Ryoku)」

杉野学園出版部が発行しているフリーマガジン。2008 年 6 月より、毎回パリ プレタポルテ、オートクチュール終了時を目安に年 4 回発行。
デザイナーインタビュー、コレクション報告、スナップ、座談会などを掲載している。

 

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