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2014.09.10

米国成長の鍵を握る最後のビッグコミュニティ“ヒスパニック市場”

 『ベビーブーマー』『ミレニアルズ』と並び、アメリカの3大消費者層に挙げられているのが、『ヒスパニック市場』。アメリカでは、大手企業が緊急に取り組んでおり、米国成長の鍵を握る最後のビッグコミュニティの一つとして大注目されています。“ヒスパニック”とは、メキシコ人を中心とする、プエルトリコ、キューバ等、スペイン語を母国語とする、アメリカに住む中南米の人々。ラティーノや、スパニッシュと表現する事もあります。(米国のヒスパニック人口の65%がメキシコ人)2012年7月時点の国勢調査によると、ヒスパニック人口は5300万人、大人では6人に1人、子供では4人に1人がヒスパニック。カリフォルニアでは既に白人の人口を超えていますが、2060年には全米でも、白人の人口を超す、1億2880万人に達すると予測されています。2013年のヒスパニックによる消費は、$1.3trillion(約130兆円)と、その消費パワーは大注目。米国のビジネスを牽引し、なぜ特別に注目されているのか、ヒスパニック市場をご紹介しようと思います。

ビッグ・スペンダー

 ひらべったく言うと、とにかくお金を使う。カトリック教徒の為、子だくさんの大家族が多く、一世帯の消費は自ずと多いのですが、元々、大のショッピング好き。41%のヒスパニックが、トレンド商品を追いかける、ブランド好き、新商品へのトライも旺盛、他の人種が14%に対して、31%が好んで行う。アルコール、子供用品、フレグランス、化粧品等、様々な分野で消費量が多い。家族や友人との結束が強く共に行動する事を好む為、週末になると、ファミリーや友人で集まり、BBQやホームパーテイで大賑わい、食料品をがんがん買ってがんがん消費するのがヒスパニックだ。貧困層が多いので、米国の福祉を目一杯利用しつつの消費、これはこれで、税金を使っているので不公平だと問題はあるのですが…モールで働いていた友人の話では、あまり悩む事無く、即決で買ってくれるので小売店にとって非常にいいお客さんなのです。

ハイブリッド

 海外で生まれた米国のヒスパニックの人口は35.5%で減少傾向、つまり、アメリカで生まれ育った人口が増えているのです。また、米国のミレニアルズの21%を占める2100万人以上がヒスパニック、そのうち65%は、自国の生活習慣に従って生活、米国育ちの彼らは決してヒスパニックフードのみを好んでいる訳ではなく、アメリカの食生活や、ライフスタイルに馴染んでいます。ラテンミュージックも聞くが、ラップやケイティ・ペリーも聞くのです。スペイン語と英語を話し、両方の文化に精通しているハイブリッド。そして、18歳以下の子供がいるヒスパニックカップルは65%と、非常に若い世代が多いのが特徴の民族。メイシーズやウォルマート等、大手小売店は、この市場を獲得する事が大きな使命となっている。

ソーシャル・ショッピングマスター

 NIELSENの調査では、ヒスパニックの72%がスマートフォンを所有しており、買い物前や買い物中には、48%の人がSNSでショッピング体験を家族や友人とシェア。買い物後は、商品に対するレビューを書く比率も36%で他の人種に比べ2倍以上。36%の人が、オンライン動画で、ショッピング体験をシェアしたり、商品に対するレビューを行う等、スマホに精通している彼らは、素早いリスポンスに、即座の回答を好む傾向のソーシャルショッピングマスターなのです。食への好奇心、デジタルソーシャルライフ共に、ヒスパニックが時代を牽引していると言われており、オンライン、オフライン共に、家族や友達との繋がりを好む、ピア・トゥ・ピアはビジネス成長の重要ポイント。ズンバエクササイズ等、ダンス系エクササイズも彼ら中心に流行。

『チポトレ』人気に見る、ヒスパニックパワー

  最近、非常に多く目にするのがメキシカングリル『チポトレ』の急成長に関する事。野菜や肉等、何十種類もある具材の中から好みを選び、ブリトーやタコスをその場で調理してくれる。スマホアプリを利用すれば、事前に注文し後でピックアップも可。ダイエットメニューや子供向け、グルテンフリー(小麦アレルギー対応)等ヘルシー指向が人気のファストフード店。これが現在、1700店舗で前年比70%増、昨年売り上げは$3.21B。(約3210億円)の急成長を遂げている。『エル・ポロ・ロコ』も、同じくメキシカンフードチェーンで、第2の『チポトレ』として注目。店舗数は、追いつかないものの、この現象で、『タコベル』や『マクドナルド』等のファストチェーンが大打撃の戦々恐々。急成長の要因として、ヒスパニック人口の増加、ハイブリッドのミレニアルズ世代は親達に比べ、ヘルシー指向でファンシーなレストランを好む、そして、食においても、“カスタマイズ”出来る事が人気を呼び、ファミリーや他の友人達を牽引する結果に繋がっている様です。

ヒスパニック系をターゲットにしたショッピングモールが大繁盛

 1956年から2005年の間に、1500ものショッピングモールが建てられ、黄金時代を築きましたが、2006年以降は、孤立した新規モールは設立されず。今後、10年以内に、その半分のモールがクローズするのではと予想される中、朽ち果てたモールの一つを改装し、年間のビジター数400万人の人気スポットへと大変革を遂げたモールがあります。ジョージア州、アトランタ、ヒスパニックをターゲットにして成長している『プラザ・フィエスタ』。280の小売店の他、ディスカウントストア、フィットネス、病院、歯医者、保険会社、美容院が併設したメキシカンビレッジ。スペイン語、英語の両方でのサービスがあり、生活に必要な全てが揃い、週末にはラテンミュージックイベントやコメディショーも行われる。上の動画、テキサス州の『ラ・グラン・プラザ』も同様の形態で繁盛しており、家族での行動を好むヒスパニックの人々が、ショッピングの目的だけでなく、自国の雰囲気に酔いしれながらリラックス、ウェブ上では得られない体験ができるスポットとして人気を博しています。“ファミリー”を意識したマーケティングにもヒットの要因があります。

 

 『プラザ・フィエスタ』と『ラ・グラン・プラザ』は極端な例とも言えますが、トラフィックの低下が伝えられるショッピングモールにとっても改善のヒントがあるのではないでしょうか。アパレル分野では、ユニクロが全米制覇に向け取り組んでいる、人種の体系に合わせた、3Dフィットは他の企業に取っても将来の売り上げを左右する緊急の重要課題。9/4のWWDには、日本のトゥモローランドが米国進出するという記事がでていましたが、米国市場を理解する上でも、急増するヒスパニック市場を獲得する為に、どの様に取り組んで行くのか、今後も注目して行きたいと思います。


 

 

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