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2021.07.15
オンワード樫山の「ハッシュニュアンス」 消費者参加のプロジェクト、服作りの各段階で座談会など、人気投票で生産数決定も
オンワード樫山はD2Cブランド「#Newans(ハッシュニュアンス)」で、消費者のリアルな声を拾い上げて商品企画を行う”共につくるプロジェクト”を3月から始動しており、このほど開催した今秋冬物の展示会で完成したシャツ13型を披露した。
昨年秋に立ち上がった「ハッシュニュアンス」はディレクターやデザイナーがいないオンワードでは珍しいブランドで、消費者の意見に耳を傾けながら、世の中で本当に求められている服を形にしてきた。
今回のプロジェクトではブランドのキー商材である白シャツを対象に、企画構成からデザイン、生産数の決定まで、服作りのすべての段階に消費者が参加するという独自工程に挑戦した。
同社では2月に、コロナ禍でのファッションに対する意識の変化やニーズを把握するためにリサーチ会社と共同でアンケート調査を実施。約1000人の回答から、コロナ前と比べてファッションの消費行動が消極化したことに加え、洋服には「自宅で洗える」「ベーシックで長く着られる」といった要素が求められることが分かったという。
調査結果を踏まえて3月にはリモート座談会を開催(画像(上))。ブランドのターゲット層である20代後半~40代の女性20人が参加してコロナ禍でのファッションやライフスタイル、価値観の変化を議論した。
全国の消費者が参加できるようにリモート座談会とし、インスタグラムで「#白シャツコーデ」などを付けて投稿している人にメッセージを送るなどして参加者を募った。
座談会では「画面越しでも着映えしてほしい」「手洗い消毒を何度もするので袖をまくりやすい服がいい」「アクセサリーいらずで華やぐものがほしい」などの声が上った。
座談会で得た意見などをもとにプロジェクトチームが商品のデザインを考案。使用する素材の選定とデザイン画作成を進め、何度も打ち合わせを重ねてデザインを決めた。
最初のサンプル検討会では出来上がった商品サンプルを消費者9人が実際に着用して着心地やサイズ感、価格などを意見交換し、「ポケットがないのは不便」「襟がもっと大きい方が可愛い」などの意見が出たため、そうした意見も参考に何度もサンプルを作った。
その後、各色サンプル検討会や商品プロモーションに関する座談会を実施。座談会では「骨格タイプやパーソナルカラー診断で新しい発見ができる体験型のポップアップストアはどうか」などの意見が出たという。
6月末に都内で開催したブランドの展示会では、共につくるプロジェクトの商品13型も披露した。各商品の横には人気投票のシールを貼れるようにしており、事前のSNS投票の数を含めて各商品の初回生産数を決める。
これまでも予約数や各商品のページビュー数、SNSでの拡散数などを参考に生産数を決めてきたが、需要予測の精度を高める方法のひとつとして投票数を参考にする。
展示会で披露した商品それぞれに「簡単に袖をまくりたい」「ステイホームでも気分が上るものを着たい」などの吹き出し風のボードがついており、商品開発の決め手になった消費者の声を表現した(画像(下))。
プロジェクトを通じて、「消費者から得たさまざまな声を編集して商品に落とし込む作業は大変だった」(田野井哉恵プロジェクトリーダー=写真)としながらも、今後もリアルとウェブで消費者の声を拾うことで”今”のニーズに応えていく。
なお、展示会では消費者を招いた受注会も実施。同時に22年春夏企画の座談会も開催したようで、共につくるプロジェクトは継続的に取り組む。