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2021.07.01

ファッションレンタル、コロナ禍でもサービスが進化

 月額定額制のファッションレンタルサービスが日本で本格始動してから6年になる。その間、さまざまな企業が参入したが、中でも2015年にサービスを開始した「エアークローゼット」と「メチャカリ」は会員数や認知度も高い。前者はファッションテック企業が運営しスタイリストが商品を選ぶのに対し、後者は大手アパレルメーカーが運営する強みを生かしてすべて新品のアイテムが届く。ビジネスモデルは異なるが、コロナ禍では顧客ニーズに合わせてそれぞれサービスを進化させている。両社の取り組み状況を見ていく。

 

レンタルでも新品を届ける

<エアークローゼット>

 エアークローゼットが15年2月に開始した月額制ファッションレンタルサービス「エアークローゼット」の提供価値は、同社スタイリストが”新しいファッションとの出会い”を届けることだ。

 昔から貸衣装やウエディングドレスなどのレンタルはあったが、高単価の服ではなく”普段着”に特化したサービスだ。利用者が体型、服の好みや悩み、要望などを登録すると、300人以上在籍するスタイリストが服を選んでくれるため、時間や知識がなくても新しい洋服に出会える。

 知識やトレンドを理解している人でも着る服やテイストは偏ってしまいがちだが、パーソナルスタイリングを軸にすることで利用者の幅を広げている。サービスは月額制の借り放題で返却期限はなく、クリーニング不要で返却すれば新しい服を届けてくれる。気に入ったら会員価格で購入もできる。

 人気のレギュラープランは税込1万780円(初月6270円)で3着が届き、何度でも交換可能だが返送料330円がかかる。現在、無料会員を含めて会員数が50万人を突破し、顧客層の中心は30代後半。コロナによる外出機会減少もあって継続率や新規獲得数に若干の影響は出ているものの、サービスとしては順調に成長しているようだ。

 同社はシステムの内製化はもちろん、データサイエンティストを社内に抱えているほか、AIのアルゴリズムも自社で開発するファッションテック企業で、徹底的にデータを活用しているが強みだ。

 スタイリングの精度向上やユーザーとスタイリストのマッチング、商品の返却予測、在庫最適化など、さまざまな側面でAIやデータを活用。パーソナルスタイリングについては、感想をレーティングとコメントの形でフィードバックを得ており、それを元に提案の精度を高めている。

 同社サービスは返却期限がないため、今日何着の服が利用者から戻ってきて、明日は何着戻ってくるかを担当者の勘ではなくAIで予測。誤差を縮めることで人員不足による返却作業の遅延やスタッフ過多によるコスト増を防いでいる。

 また、同社はシーズンごとに大量の服を仕入れているが、最適な在庫量を維持するのにもデータ活用が不可欠だ。返却された商品はクリーニングや修繕を経て再度レンタルできる状態にするため、倉庫在庫とレンタル中、クリーニング中という3つの状態を総在庫としながら最適な仕入れ量を導き出している。

 同社は”新しいファッションとの出会い”を提供価値として掲げており、サービスを継続利用してもらうには、「スタイリストが選んだ服への満足度が大事になる」(天沼聰社長)とする。スタイリストの質を維持するために事前研修はもちろん、利用者からの評判を常に確認し、ユーザー評価が上がらないスタイリストには演習プログラムを受けてもらうなどして技術の底上げを図る。

 

ブランドとのコラボを展開

コロナ禍での顧客対応については、従来のコーディネート提案だけでなく、リモート会議で着用機会が増えたトップス3着のレンタルに対応したり、外出機会が減った利用者に向けて休会制度も導入した。

 同社はコロナ禍で既存顧客とのコミュニケーションを強化。シェアリングサービスに対する不安を払拭するために、クリーニングによって感染リスクを抑えられることなどを、天沼社長自らが顧客へのメールで説明した。新客向けの広告予算は既存客の休会対応など定着化施策に回した。休会を受けるときも、服を返却するための外出に不安を感じる利用者もいることや人流抑制の面からも、手元にある洋服は返却しなくて済むようにした。

 緊急事態宣言明け以降、一時休会していた顧客が利用を再開した割合は想定を大きく上回ったという。また、昨年6月にはZoomを活用してスタイリストに直接相談ができる1対1の遠隔パーソナルスタイリングサービス「エアクロトーク」も始めた。

 一方、取引先ブランドとの取り組みも強化。店舗とECに次ぐ顧客接点としてレンタルやサブスクに注目しているものの、コロナ禍の投資に二の足を踏む企業は多いことから、同社の物流を含めたシステム基盤を使ってもらい、単独ブランドのレンタルサービスを実施できるようにした。

 

今年2月には第1弾として「ミラオーウェン」および「ナノ・ユニバース」とトライアルを実施。単独ブランドの新作を3カ月間、毎月3着レンタルで楽しめるプランを展開した結果、数日で予定数に達するなどニーズも感じた。また、同プランの利用者アンケートから、当該ブランドの服を普段から購入していないユーザー(※1年以上前に買ったことがある人なども含む)が89%以上となり、特定ブランドとのコラボプランは新規客や再訪客にアプローチできることが分かったという。

 

スタイリストが商品を選定

<メチャカリ>

 

 アパレル大手のストライプインターナショナルが手がけるファッションレンタルアプリ「メチャカリ」は、「アースミュージックアンドエコロジー」など人気ブランドの新品の洋服を毎月定額で借りることができる。借り放題のサービスのため、借りた商品を返却すれば何度でも次のアイテムを借りることができる。

 返却時はクリーニング不要で、気に入った服は割引き価格で買い取ることができるほか、60日間借り続けた商品はもらえるというのも特徴だ。返却された商品は同社の通販サイト「ストライプクラブ」内の「オフィシャルユーズドショップ」で古着として販売することで、新品に近い状態の服を安く買いたいニーズにも応えている。

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