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2018.02.16
【マーケティングの未来を語る トレジャーデータ 堀内健后 マーケティングディレクター×オイシックスドット大地 奥谷孝司 執行役員 統合マーケティング部部長COCO】 「エンゲージメント」を評価軸に、データは”使うため”に蓄積
「オムニチャネル」が浸透し、小売全体でデジタル化が進んでいる。消費者の購買と選択をオンライン上でできる企業が成長する傾向にあるとする見方もあり、マーケティングのデジタル化が急務になっている。今後、通販企業は顧客とどのようにつながるべきか。オイシックスドット大地の奥谷孝司執行役員統合マーケティング部部長COCOと、トレジャーデータの堀内健后マーケティングディレクターに聞いた。
――オムニチャネル化が進む小売の現状は。
奥谷孝司氏(以下、奥谷)「小売市場で成長しているのは、カスタマージャーニーといわれる消費者の行動において『選択』と『購買』をオンラインで提供している企業。AIスピーカーが登場し会話するだけで商品が買えるようになると、ますます店舗とネットの垣根はなくなる。そうなったときに、顧客のことを知っているオンライン企業が強さを発揮すると思う。ただ、これからお客様とデジタルでつながることが当たり前になる中で、通販企業はデータを分析するだけでは行き詰まるだろう。今後、通販企業であっても『体験』を提供することに、チャンスがあると考えている」
――「体験」とは。
奥谷「実店舗を、ブランドの体験ができる場所として考えることが適切だ。例えば、オイシックスドット大地では、食品を陳列して販売するスーパーという形にこだわらずに考えたい」
――通販の実店舗展開は成功事例が少なく、収益性が課題になりがちだ。
奥谷「収益性ではなく、お客様にとって店舗で良い体験を提供できるかが重要。企業はオンラインとオフラインで、どんな体験を提供するか考えるべきだ。米国の男性向けアパレル『ボノボス』は実店舗を試着できるガイドショップとして展開している。データ分析し顧客理解が進む中で、接点を持たなければお客様は離れてしまう」
――良い体験をどう評価する。
奥谷「顧客満足度や顧客ロイヤリティを超えた、お客様とのエンゲージメントに評価軸を移すことが重要。売り上げだけを追えば、インフルエンサーのような商品やブランドを紹介してくれる人や、企業に対して声を上げてくれる人がいなくなってしまう。小売のシェアの9割をオフライン企業が占める中、通販のようなオンライン企業はまだ伸びる。そのためには、エンゲージメントの構築は需要な課題だ」
――オイシックスドット大地ではどう取り組むか。
奥谷「自社商品のミールキット『キットオイシックス』では漫画とのコラボ商品を開発し販売したほか、ラーメン店とのコラボ商品も展開した。売り上げだけではなく話題性を狙った取り組みで、数ある競合の中から選ばれるためには話題作りは重要だと考える。お客様が発信する言葉の中に『オイシックスのミールキット』と所有格が付くことに意味がある。聞かれなければ語られない商品は多いが、日々の中で語られることこそ価値だと思っている。買った理由をお客様からすらすらと出てくる会社は、強い」
――トレジャーデータとの取り組みはどうか。
堀内健后氏(以下、堀内)「当社はカスタマーデータプラットフォームを提供し、顧客である生活者の行動をログとして集めて、企業とつなげている。デジタル化が進むとデータに偏りがちで顧客像は見えにくくなるが、われわれが顧客の行動をつなげることで見えるようにする。プラットフォームは、顧客を理解してどうコミュニケーションをとるべきか考える企業で活用されている」
奥谷「マーケティングのデジタル化ができるようになったのは、トレジャーデータのような会社がデータを蓄積しているため。消費者がデジタルを使えば使うほどデータは収集できるが、それをばらばらに置くのでは意味がない。将来使うために、しっかりとデータを蓄積することが重要だ。最近では多くの企業が、カスタマージャーニーの『検討』『購入』『使用』『消費』の視点で分析することの重要性に気づいている」
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トレジャーデータは2月19日~21日、イベント「トレジャーデータ プラズマ」を初開催する。マーケターなど2000人の来場を予定する。
基調講演では奥谷氏が大広の岩井琢磨プロジェクト・プランナーと、「『チャネルシフト』によるエンゲージメントコマース」をテーマに対談。事例紹介で、キリンやストライプインターナショナル、GMOペパボなどが登壇するほか、40社のスタートアップ企業を展示紹介する。会場は東京・丸の内エリアのカンファレンスルームで、「JPタワーホール&カンファレンス」や「フクラシア丸の内オアゾ」、「丸の内ビルディング」。講演の聴講は無料で、「トレジャーデータ プラズマ」の特設サイトで受け付ける。