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2019.08.01
【マガシークの井上直也社長に聞く ファッションECモールの成長戦略㊤】 dファッションのマス化推進、新客開拓のメインエンジンに
マガシークは、ファッション通販サイト「マガシーク」と、親会社であるNTTドコモと共同運営の「dファッション」の2サイトを軸に規模拡大を図り、2020年3月期の取扱高は前年比約2割増となる320億円を目指す。「新客開拓のメインエンジンは『dファッション』になる」と語る井上直也社長(=写真)に、前期の総括や成長戦略などについて聞いた。
――ゾゾの常時10%割引が話題となった。
「率直に言って、ファッションECで最大の取扱高があるゾゾさんが常時値引きを行うと巻き返しは厳しいと思ったのと同時に、ついにそこに手をつけたかという印象だった。ポイント還元ではなく値引きというのは直接的で、通常、トップシェアの企業が選択しない手だ。しかも、常時値引きはブランドさんからの反発が強いだろうと見ていたので、サービス終了までの流れはほぼ予想通り。当社からすると、常にゾゾさんの方が安いという状況にならなかったのは良かった」
――今回の一件でモールへの風当たりは。
「当社にはプラスの影響しかなかった。ゾゾさんが常時値下げを実施したことで、新商品を『ゾゾタウン』から引き上げたブランドさんの取扱高がかなり伸びた。ゾゾさんと当社には品ぞろえの差がまだあって、品ぞろえが増えれば伸びしろが結構あると感じた」
――複数のモールを利用する消費者が多い。
「ゾゾさんと当社で同じ商品を扱っている場合、当社がポイント施策を実施していれば消費者は比較検討して『今回はお得なマガシークで買おう』となるのだろう。ただ、最初は品ぞろえが豊富なゾゾさんに行くというのが消費者心理としては当たり前。私も欲しいものをネットで買う場合、まずは『アマゾン』に行き、その後で『楽天市場』や『ヤフー!ショッピング』『dショッピング』などで価格比較してから購入している」
――物流費の上昇がEC各社の利益を圧迫している。御社も4月下旬に送料を改訂した。
「当社はゆうパックを利用しているが、運賃の上げ幅が大きかったため、お客様に多少の負担を頂かないといけない状況だ。ある程度の規模がないとECモールの収益構造は成り立たなくなってきている。当社は今期、取扱高320億円を目標にしているが、100億円を切るようなモールは厳しいのではないか」
――EC支援事業も物流費がかさむのでは。
「ある程度の”しきい値”を超える必要はある。もちろん預かっている商品の回転率は見なければいけないが、当社は積極的に倉庫を拡大し、売れる商品の在庫をしっかり確保して取扱高の拡大につなげていく」
――ドコモからも引き続き期待されている。
「利益面はもちろんだが、ドコモとしてはファッションや日用品、マガジン、ゲームなど各ジャンルで行動履歴を収集して1to1コミュニケーションに生かそうとしていて、当社も利用者数を増やしてトップラインを上げる必要がある」
――前期の業績は。
「売上高は前年比18・2%増の241億円、取扱高は約20億円増の270億円程度だった」
――引き続き「dファッション」が新客開拓に貢献している。
「『dファッション』はドコモが原資負担するプロモーションの影響が大きい。毎月10日、20日、30日はdポイントの付与率が20倍になる『dポイントデー』を実施していて、普段は服を他社サイトで買っているユーザーもそのときは『dファッション』で賢くdポイントを貯める傾向にある。競合の『楽天ブランドアベニュー』も伸びていると思うが、ポイント施策が効いているというのは全体感としてある」
――「マガシーク」の新客開拓は。
「かなり費用をかけたが、競合モールがテレビCMなどに大きな投資を行っていて、販促による新規獲得は計画値ほど伸びなかった。新規開拓は『dファッション』がメインエンジンになる」
――両サイトの品ぞろえについては。
「『dファッション』は老若男女たくさんのユーザーにアパレルから身に着けるもの全般を買ってもらえるようにマス化を進める。『マガシーク』は30~40代を中心にファッションへのこだわりがある女性に支持されるサイトを目指していて、マス化はせずにどちらかというと狭めていく」
――取引先の開拓は。
「『dファッション』専用の新規ブランド開拓チームを作り、前期は220以上のショップを誘致するなど成果が出ている。世の中全体としてはリーズナブルなファッションに流れているため、変化もとらえながら買いやすい価格帯の商品は『dファッション』でフォローする。また、国内市場ではスポーツカテゴリーが好調で、スポーツ用品やスニーカーなどの商品構成比が増えている」
――「マガシーク」が強化している領域は。
「『マガシーク』は、マーケットでは苦戦が続いているキャリアやフェミニンテイストのブランドが強い。大手セレクトショップも含めて当社の核となるブランドにフォーカスしながら成長を目指す。『dファッション』と『マガシーク』は在庫連携しているが、打ち出し方に差をつけていて、『dファッション』用に開拓したブランドは『マガシーク』でも扱うが、目立たせてはいない」
――前期取扱高の両サイトの割合は。
「詳細は言えないが、客単価が安定している『マガシーク』の方がまだ大きい」(つづく)