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2019.05.23
【パル流オムニ戦略の現状は?㊤】 店頭販売を軸にウェブ強化、EC売上貢献度を賞与に加算
総合アパレル企業のパルは、店頭販売員を軸にしたウェブコンテンツの拡充で、自社通販サイト「パルクローゼット」と店頭への送客力を高めているようだ。
同社の前期(2019年2月期)のEC売上高は前年比38・2%増の152億3100万円となり、目標値をクリア。グループの衣料品売上高に占めるEC化率は同3・5ポイント増の15・8%に拡大した。EC売上高の内訳はゾゾタウン経由が同43・3%増の102億8900万円、自社ECが同48・5%増の29億5000万円、その他モール経由が同7・6%増の19億9000万円で、ゾゾの売り場がECチャネルでは主力なものの、自社ECの伸び率も高く、計画値の30億円に迫った。
前期は、店舗の人気スタッフが今着たいスタイリングを提案するコンテンツ「スタイル.」を始めたほか、最近では店頭販売員がトレンドスポットを散歩して回る企画「オサンポプラス」(画像)をスタート。散歩コーデも紹介するなど、さまざまな切り口でコンテンツを作成し、飽きられないように工夫している。こうした企画はショップスタッフからも出てきており、実店舗にも足を運んでもらうきっかけになっているようだ。
また、前期には販売員が撮影したコーディネート画像を簡単に通販サイトやSNSに投稿できる業務用ツール「スタッフスタート」を本格導入しているが、足もとでは直接または間接的にコーデ画像経由で販売につながった関与売り上げは自社EC売上高の6割を超えるという。すべてが直接要因ではないものの、スタッフコーデのコンテンツがEC売り上げに大きく貢献している。
ブランドごとにコーデ画像の投稿ルールは異なるが、「なるべく多くの販売スタッフが投稿する方がさまざまなタイプのお客様の参考になる」(堀田覚プロモーション推進部部長兼コミュニケーションデザイン室室長兼WEB事業推進室室長=顔写真)とし、各販売員が個性を生かしながら積極的に発信していく方針で、現在はアパレル系のほぼ全ブランドが同ツールを活用。1000人近い販売員が投稿している。
コーデ画像経由で商品が購入された場合、当該コーデを投稿したスタッフが分かるため、EC貢献度の高いスタッフにはECの企画作りにも参加してもらい、コンテンツの主役として登場してもらっている。また、同社では人事評価制度としてSNSのフォロワー数に応じた特別手当を支給しているのに加え、投稿画像を経由したEC売り上げについても今冬の賞与から加算することを決め、スタッフのモチベーションをさらに高めていく。
また、店頭スタッフが登場して旬のアイテムなどを生中継で提案するライブコマースについても前期からトライアルを始めており、現在は「ライブショップ」などを活用している。同サービスは一眼レフカメラなどの撮影用機器をそろえなくてもスマホで撮影してキレイな画質で配信できることから、グループの「ワンアフターアナザー ナイスクラップ」や「ダチュラ」など3~4ブランドでそれぞれ月2回程度配信している。
毎回、配信前にブランドや販売スタッフのインスタで告知し、「ライブショップ」の視聴を促しており、「ものすごく売れる分けではないが、手応えは少しずつ感じている」(堀田部長)とする。
同社によると、ライブコマースは継続することが大事で、そのためにも大がかりに始めるのではなく、スモールスタートで十分だという。また、コスト面だけでなく、商品に対する思い入れが強いショップスタッフなどが登場し、「一度に多くの視聴者に対して接客できるライブコマースの良さを追求していくことが大切」(堀田部長)としており、現状は運用面のブラッシュアップに力を注ぐ考え。(つづく)