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2018.07.20
【第25回香港ファッション・ウィーク春/夏】1万1,000人のバイヤーが来場―会期中のトピックをピックアップ(2)
#未来のデザイナーたちによるファッションショー
ファッション業界を目指す学生たちが、ランウェイショーを披露するのも、同展の特徴。今回は、香港中文大学の学生と、マカオから参加した「マコンセフ(MACONSEF)」の学生がショーを行った。
ミッキー・チェ(一番左)とジャック・リン(一番右)
マカオがファッション産業振興を目指し強化しているのが、デザイナーの育成。「マコンセフ」は、マカオ唯一のファッション&クリエイティビティーのスペシャリスト養成機関「ハウス・オブ・アパレル・テクノロジー」で18カ月間のディプロマプログラムを修了した生徒が、さらに2年間、ファッション業界における実践的なプログラムを学ぶ機関。今回は、ミッキー・チェとジャック・リンの2人が参加した。コレクションのテーマは、伝統的な慣習や枠組みから抜け出し、新しい時代の女性として生きる、という意味を込めた“Ditch the Label(ラベルを捨てる)”。2人は、このテーマに沿って、イレギュラーなカッティングや異素材のミックス、テーラードなどメンズファッションの要素を組み込むといった試みを行ったという。チェは同展に参加するのは前年に続き2回目だが、後輩のリンに自身の経験を伝えるという役目も求められ、それが新たな経験になったという。一方、初参加のリンは、モデルを使ったショーの進行などすべてが新鮮であり、大きな収穫となったと話した。
#地元香港はデジタル・テクノロジーで勝負
マーケティングマネージャーのケネス・ヒュイ氏
開催地の香港は今回、アパレル製品に加え、デジタル技術やファッションテックを活用したサービスを紹介する企業が目立った。ソフトウエア開発のKey Links Data Technology社は、複数の生産工場や物流拠点、サプライヤーを含むサプライチェーンマネジメント(SCM)の可視化、全体最適化を目指したモバイル・アプリケーションを提供。情報を可視化・共有化することにより、作業効率化を図るもの。主力の「InspectLink」は品質管理検査に関するアプリケーションで、例えば検査を通過した製品について、責任者はアプリケーション上の電子署名で承認が可能。ペーパーレスによるリードタイム短縮につなげる。現在はアパレル製品をはじめ、靴や家具のSCMに対応しており、設備投資が難しい中小企業への導入をサポートしたいという。
K&D社は、NFC(近距離無線通信)技術を利用したプロモーション用製品を紹介。時計やスニーカー、バッジなどに内蔵したNFCにスマートフォン(NFC対応端末)を近づけると、企業のプロモーションサイトや特設ページへと遷移できる仕組み。これまで「NIKE+ CONNECT」などのプロモーションで採用実績がある。参考価格は1,000点につき1・5米ドル。2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピック競技大会でのビジネスチャンスを狙い、東京にもオフィスを設けている。
香港理工大学(PolyU)と香港紡織及び成衣研究中心(HKRITA)は、体温によって発熱する機能素材を開発。会期中は、セミナーで概要を説明したほか、同素材を使ったアパレル製品を会場内で展示した
#アジアのオンラインマーケット事情を知る
MyntraのNihal Ranjan副社長(上)/Better Buying共同創業者のマーシャ・ディックソン氏(下左)/2013年にスタートしたスモールオーダー(下右)展示会会期中は、登録サプライヤーの商品を展示し、同サービスへのプロモーションを実施している
同展示会では、ファッション産業におけるビジネストレンドに沿ったセミナーを実施。今回は、全世界的なオンライン販売市場の拡大を受け、“Online Shopping Reshapes the Fashion Industry(オンラインショッピングがファッション産業を再形成する)”と題したセミナーを行った。EC市場が63%増と急伸長するインドの中でも頭角を現しているファッションECモールMyntraのNihal Ranjan副社長が登壇。ミレニアル世代への対応・ソーシャルメディアの活用・カスタマーエクスペリエンス・パーソナライズ化などが、自社の成長要因であると説明。品質検査機関でる香港のSGSは、オンライン上で販売される商品の安全基準などについて紹介。また、同展示会を主催する香港貿易発展局が運営する小口注文のを専門としたB2Bサイト「スモールオーダー」について説明。スタートから5年が経過した同サービスは現在、約13万のサプライヤー、約190万以上のバイヤーがそれぞれ登録しており、年間2,400万超の取り引きが行われていることなどを明かし、小口注文への需要が顕著に伸びていることを示した。
また、“Essential Testing and Rating for Textile and Garments”と題したセミナーでは、検査・認証機関ビューローベリタス(Bureau Veritas)がテキスタイル供給で求められる品質基準などについて説明。ラストには、米国発のバイヤー評価システム「ベターバイイング(Better Buying)」の共同創業者マーシャ・ディックソン氏が登壇。バイヤーが有利な立場になりがちな商取引において、サプライヤーがバイヤーを評価することにより、バイヤーとサプライヤーがウィンウィンの関係を築くことが重要であることを強調した。