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2018.06.18

【ミラノメンズ2019春夏 ハイライト2】目玉のプラダ、ディースクエアード、MSGMなどがショーを開催

 伊ミラノでは、真夏の暑さとなった6月17日。エムエスジーエム(MSGM)、スンネイ(SUNNEI)、ダックス(DAKS)、プラダ(PRADA)、パーム・エンジェルス(PALM ANGELS)、ディースクエアード(DSQUARED2)などがショーを開催した。

エムエスジーエム(MSGM)

 

 今回の「エムエスジーエム」のインビテーションは “1日1錠、60錠入り”などと書かれた、サプリメントのパロディーのポケットチーフ。会場はコートの真ん中にバレーボールが無数におかれた体育館。これを見るとどうやら今回のコレクションのトレンドのドンズバを行く、スポーツがインスピレーションになっているらしい。

 ここで行われるのはミラノVSリミニのバレーボールの試合。ランウェイにはトレーナー、ウインドブレーカー、ショーツやトレーニングパンツ、または選手の移動時のユニフォームのようなパンツやジャケット、スポーツソックスにスニーカーかサンダルといったスポーツ関連のアイテムがずらり。

 ルック自体はドンズバのバレーボールのウエアというわけではないが、バレーボールが前面に出ているのは、ハイライトとなるモチーフが、デザイナーのマッシモ・ジョルジェッティが若い頃大好きだった日本の漫画「アタッカーYOU!」だから(ちなみにイタリアでは日本の漫画が大人気で、同漫画は日本ではそれほど流行りはしなかったが、イタリアでは大ヒットした)。それも相まってかデザイナーの青春時代へのノスタルジーが80年代テイストとして洋服に投影される。プリントはフルーツ、フラワー、パーム、そして前出のサプリのパロディーやタイダイまで。原色、キャンディカラー、ネオンカラーを多用したカラフルでエネルギッシュなコレクションはショーを見る人に元気を与える。招待状からモチーフで使われていたサプリメントのロゴにはそんな隠れたメッセージもあるのかも。

「エムエスジーエム」2019春夏コレクション メンズ

プラダ(PRADA)

 

 今回、4月に全施設が完成してグランドオープンしたばかりのプラダ財団を会場として予定していたが、直前に従来ショーをやっていた本社近くのほうのスペースに場所を変更した「プラダ」。お馴染みAMOのショー空間デザインは、今回は60年代にヴェルナー・パントンがプラダのために作ったVERPANという透明の空気で膨らますタイプのスツールが客席に。それぞれのポストにはその位置の経度・緯度表示が示されている。確かにガラス張りで開放的な新しいほうのビルより、コンクリート壁の無機質な雰囲気のこちらの建物のほうがこのミニマルな演出には合うだろう。

 今回のコレクションはそんな空間にもマッチする、無駄をすべてそぎ落としたようなエッセンシャルなテイスト。「プラダ」の十八番でもあるデコレーションや複雑な小物使いはほとんどない。唯一ともいえるのが、繰り返し登場するフライヤーズハットと、女性用のハンドバッグのように肩にかけたショルダーバッグ類。また目を引くのが多くのコーディネートにタートルネックを使い、シャツとのレイヤードも多用していること。そこにさらにニットやスエードなどをあわせた秋冬のようなコーディネートも多い。色も原色やペールカラーも使われているが、ダークブラウン、ダークグリーン、ボルドー、ナス色など秋冬によく使われるシックな色が目立つ。が、その一方でボトムの多くはショーツを合わせ、足元はスニーカーで飾るというスポーティーなテイストも入れ込んでコントラストをつける。とはいえ、そのシンプルなシルエットと色使いでそこにはエレガントかつミステリアスな雰囲気が漂う。

 これまでも「プラダ」のコレクションでは、その時は不思議だと思わせられたが、しばらくするとそれがトレンドになっていることがしばしばあった。そしてちょっと前にやったことがトレンドになる頃には「プラダ」はもう違う方向に進んでいる。今回の「プラダ」の新しい展開は次のファッションを予兆するものなのかもしれない。

ディースクエアード(DSQUARED2)

 

 今回のコレクションで「ディースクエアード」のランウェイを飾ったのは、極限状態を想定した機能性志向のルックたち。ミリタリーパンツやメッシュタンクトップ、カムフラージュ柄などミリタリーの要素や、ネオンカラーやハイテク素材などを多用した究明隊のユニフォームのような雰囲気が漂う。いつもならスパンコールやファーが使われるのに、今回はアウターの様々な部分から出ているパラシュートに使われるようなロープ、パンツのフロントにもついた沢山の大きなポケット、マキシウエストポーチなど、大げさともいえるボリュームで装飾がなされている。それを原色やネオンカラーを交えてパッチワークのようなプリントを施したり、フラワープリントを各所に使って、楽しさや甘みを添えている。

 同様なイメージはウイメンズのルックにも通ずるが、それはパラシュート生地のようなバルーンドレスだったり、ミリタリージレがビスチエになったり、メンズにも使われていたロープを使ってルーシュを作ったり・・・と、テイストは守りつつ全く別のフェミニンなものに仕上がるのが絶妙だ。「ディースクエアード」のショーこそ、メンズとウイメンズを一緒に見せることでその魅力が倍増する、最高の例と言えよう。

エトロ(ETRO

 

 今回もプレゼンテーション形式で新作を発表した「エトロ」。「NATURA MANIFESTA(自然に関するマニフェスト)」というテーマで、クリエイティブ・ディレクターのキーン・エトロは「サスティナビリティーという言葉は、即ち、愛することに立ち返る。大いなる自然への愛、純粋な愛、私たち一人ひとりに深く根付いている愛、私たちの起源であり、ある種、根源でもあり先祖から伝わるもの。企業であっても、真っ先にその気持ちを表現するためにアクションしなければならない」という宣言を掲げる。

 地球にダメージを与えないために、東南アジア、アフリカ、日本などに古代からある、自然と共存する伝統技法による染めや織り、研究によって開発された新しいサスティナブルな素材、リサイクルへのアプローチなど様々なテーマを掲げて、映像やインスタレーションと一緒に見せつつ、その成果としてできたコレクションを展示。ブランド創立50周年を記念する今回の発表は、節目を迎えたブランドがこれから進むべき方向を示唆しているかのよう。それにしてもミラノコレクションのための1日だけの展示で終わらせるのはもったいないほどの、かなり内容の濃いインスタレーションだった。

サントーニ(SANTONI)

 

 最近フードコンシャスな仕掛けが多い「サントーニ」のプレゼンテーション、今回は総菜屋さんを会場に行われた。普段は肉が焼かれているロースターにはラストが、またお惣菜を並べる食品ケースには新作が並ぶ。今回のデザインはシンプルに、全体的に柔らかさを強調。職人技をより見せるコレクションになっている。人気モデルのダブルモンクシューズ「カルロス」にパイピングが施されたバージョンや、ソフトに仕上げたクロコローファーなどに注目が集まった。

取材・文:田中美貴

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