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2025.10.13

「タエ アシダ」2026春夏コレクション発表 テーマは「光のささやき」軽やかさを新たな強さに

 芦田多恵がデザインする「タエ アシダ(TAE ASHIDA)」は2025年10月10日、東京・六本木のグランド ハイアット 東京で2026春夏コレクションを発表した。”Whispers of Light ― 光のささやき”をテーマにした今シーズン。風に揺らめきながらも確かな力を秘め、目には見えないが感じ取れるエネルギーを象徴する。「軽やかさは新しい強さ」という考えから、優しさと意志を兼ね備え、透明な光のようにしなやかに未来へ向かう姿を表現した。

 

 ショーは、映像と音楽の演出が一体となって進行した。LEDモニターには窓からそよぐ風を連想させる抽象的な映像が映し出され、会場全体にエアリーな空気感を生み出した。具体的なリゾート風景を描くのではなく、風や光といった感覚的な要素を強調することで、テーマを象徴した。リアルとバーチャルの境界を揺さぶる映像表現が、コレクション全体の空気感を支えた。

 コレクションはマニッシュでミリタリーテイストを思わせるブルゾンに、動物や木、車を描いたサバンナ風プリントのスカートを組み合わせたルックからスタート。斜めに走るストライプをあしらった光を感じさせるグラフィカルなドレスが続く。リゾートムードと力強さが共存するスタイルだ。韓国ファッションや90年代を思わせるクロップドジャケットとサバンナ風プリント、幾何学柄のパンツの組み合わせなど、時代性と国際的感覚を織り交ぜた。

 ウィメンズとメンズの境界を自然に横断するジェンダーレスなデザインも続いている。メンズのジャケットやパンツを基調に、女性モデルが同じブルゾンをまとうなど、性差を超えた自然な着こなし。洗いざらしのような質感やラウンジウェア的なリラックス感を漂わせ、古着を思わせる柔らかさも取り入れた。これは単なるトレンドではなく、日常に定着しつつあるジェンダーレスや今の空気感を反映したものだ。

 

 続いて現れたのは、白や透明感のあるドレス群。凹凸感やしわ加工を施した素材が立体的な軽やかさを生み、揺れるカーテンのようなドレープは夏の夜の夢を思わせる華やかなパーティールックへとつながった。カーキのミリタリートップスに軽やかなドレープを合わせるなど、力強さとフェミニンな表情が共存。クロップド丈のトップスは腰のラインを見せ、女性の体の美しさを強調する。

 

サファリやサンローランを思わせる旅のムードも感じられた。LEDモニターに流れる色彩は海や空の青から朝日のオレンジ、夕日の赤へと移り変わり、自然のダイナミズムを映し出しているよう。黒のドレスに華やかなイエローのリボンを飾った造形的なドレスは、展覧会に展示されても違和感のないアート性を感じさせた。リトルブラックドレスやタキシード調のドレスには、アシンメトリーやレース、透け感が施され、力強さの中に女性らしさが際立つ。

 起用されたモデルは若手が多く、瑞々しい存在感が全体のムードを引き立てた。気品と風格を備えたワークウエア風のアイテムから、ラウンジウエアのようなリラックス感をまとった装いまで幅広く展開。オートクチュールのようなエレガンスと日常的な軽やかさを共存させ、未来志向のスタイルを描いた爽やかなコレクション。

 

 芦田多恵は「今回、軽い素材が多いのは昨今の猛暑に対応するという理由もありますが、時代が変わり、軽さそのものが新しい強さではないかという切り口で提案しました。軽いことは柔らかく優しいことだけではなく、軽さが時代やムードに順応することにつながり、それが強さとなる時代なのではないかという点を強調しました」と話した。

 

 ブランドは来年、デビュー35周年を迎える。芦田多恵は「私自身は特に意識してはいませんし、まだ具体的なことは決まっていませんが、いろいろ挑戦していきたいと思っています」と話しており、今後の展開も注目される。

 

取材・文:樋口真一

 

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