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2017.08.08
【インタビュー】香港ファッションを動かすデザイナーたち<1> メイキング・ン「メイキング ン(MEIKING NG)」
香港では近年、地元ファッションデザイナーたちの活動を支援するプロジェクトが続々と立ち上がっている。“ファッション都市・香港”を掲げた国際トレードショー「第1回センターステージ」が2016年9月にスタート。また、工場地帯と知られる九龍湾には、若手デザイナーの育成・創業支援を行うためのインキュベーション施設「DIP(Design Incubation Programme)」を今年4月にオープンした。こうした動きの背景にあるのが、香港政府の後押し。香港政府は2016/17年度から3カ年で5億HKドルをファッション産業に投資することを発表。クリエーション振興を支えることによって、ファッション産業全体の経済活性化につなげる狙いがある。
この取り組みに先駆け2015年に始動したのが、「ファッション ホンコン(Fashion Hong Kong)」だ。デザイナーたちのグローバルな活躍を目指し、香港貿易発展局が海外でのプロモーションやイベントを実施するプラットフォームで、香港の気鋭デザイナーたちが、台湾やNY、コペンハーゲンなどのファッション都市でコレクションを披露。日本でもジャパンファッションウィーク東京の公式スケジュールとして、2015年から毎年ランウェイショーやショールーム、ポップアップショップなどを開いている。
豊富なチャンスを追い風に、香港のクリエーションはいま、どのような広がりを見せているのか。今年10月に東京で開かれる「ファッション ホンコン」への参加を予定している4組のデザイナーのもとを訪ねた。
メイキング・ン「メイキング ン(MEIKING NG)」
デザイナーのメイキング・ン
デビュー3年目までのデザイナーが対象となるインキュベーション施設「DIP(デザイン・インキュベーション・プログラム)」にオフィスを構えるのは、ウィメンズブランド「メイキング ン(MEIKING NG)」だ。デザイナーのメイキング・ンは、ベルギーの名門大学アントワープ王立芸術アカデミーを2011年に卒業後、仏パリで「ギ ラロッシュ」のシニアデザイナーとして勤務。2015年秋冬に「メイキング ン」を立ち上げた。
「メイキング ン」がデザインするのは、都市で働く女性のための服。「現代の女性たちはとても忙しく、朝は会議に出たかと思えば、夜はパーティーに出たりすることもある。そして女性たちは、パワフルな面もロマンティックな面も持ち合わせているもの」。絵画や建築にみられるキュビズム芸術をデザインに取り込み、そうした女性たちの多面的な要素を映し出している。2017春夏は、ブラックやブルー、グリーンを基調としたカラーブロックを用い、ドレスの上にレースやメッシュなどの異素材パーツを重ねたり、ダブルフェイスに仕立てたりと、1つで複数のスタイルが楽しめるアイテムを提案した。
「メイキング ン」2017春夏コレクション
「1日の中で変化するライフシーンに対応できるのもブランドの強み。特に香港では家賃が高く、住むスペースが狭い。リバーシブルの服は、そういう事情も考慮してのこと。天然シルクなど、着心地のよい素材選びにもこだわっている」と話す。おもな価格(春夏)は、ドレス2,000HKドル、トップス1,000HKドル、アウターが2,500~3,000HKドルなど。
ブランド開始から2年ほど。すでに取り扱い店舗は、オーストラリアやシンガポール、中国などにも広がり、香港以外での売り上げが8割を占める。「各地にポップアップショップを出しながら販路を広げていくのが理想」とし、東京への出店も視野に入れる。
10月に東京で開かれる「ファッション ホンコン」に参加し、新コレクションを披露する予定だ。「東京は、新しいアイディアやコンセプトを柔軟に受け入れてくれる街だと思っている。2018春夏コレクションは、英国植民地下にあった1920年代の香港がコンセプト。ショーを通して、ブランドのスタイルや世界観をアピールしたい。私自身にとっても、日本のマーケットを知るいい機会になると考えている」という。
メイキング・ンが入居する「DIP」は、ホンコンデザインセンターが、九龍湾(カオルーンベイ)にある製衣業訓練局内に今年4月に開いた。同じフロアには、デビュー3年目以降のデザイナーブランド&レーベルが対象となるインキュベーション施設「FIP(Fashion Incubation Programme)」もある。
◆デザイナーと香港を知るためのQ&A
―仲のいいデザイナーやクリエイターはいますか?
日本でファッションブランド「EAUSEENON」を立ち上げた水野惠梨佳デザイナー。私たちはアントワープ王立芸術アカデミーでのクラスメイトだったのだけれど、日本のカレーを振る舞ってくれたり、とても親切にしてくれた。一緒に過ごした時のことがとても懐かしい。
―今最もおすすめのエリアやお店は?
尖沙咀(チムサーチョイ)のショッピングモール「K11」と、中環(セントラル)の商業施設「PMQ」。インディペンデント系アーティストの作品やハンドクラフトの1点ものなど、香港のクールで旬なものが揃っている。地元香港のファッションデザイナーのお店もたくさんあり、アート関連イベントも数多く開かれるから、おすすめしたい。
尖沙咀にあるアートモール「K11」。若手ファッションデザイナーの作品を展示したり、アート系イベントが多数行われている(2016年撮影)
―1人で過ごすのにおすすめの場所は?
サンセットピーク(山)やドラゴンズバック(ハイキングコース)など、素晴らしい景色が見渡せる郊外や山で過ごすのがおすすめ。香港はとても混雑していてストレスフルな街だし、自然の中で過ごすととてもリラックスできるから。
―友人と過ごすのにおすすめの場所は?
私の場合、お互いの家で一緒に料理したり、お喋りしながらするのが過ごすのがとても心地いい。
―香港の最も美味しいローカルフードは?お店の名前は?
私にとってベスト・ローカル・フードは飲茶。毎週日曜日には、家族と中華レストランに行って飲茶ランチをしている。家族はみんな飲茶が好きだから、香港中にある美味しいお店を巡っている。「添好運(ティム ホー ワン)点心専門店」の深水ホ店と北角(ノースポイント)店が特におすすめ。
―香港の美しい景色といえば?
完全に日が暮れてしまう前のヴィクトリア湾のサンセット。サンセットとビルの間から漏れるライトが水面に同時に映し出される様子は、本当に美しい。
―香港に住んでいるメリット&デメリットは?
いいところは、西洋と東洋が融合している街だということ。世界中からあらゆる人々や文化が集まるハブであるところが好き。デメリットだなと感じるのは、家賃がとても高く、住む場所がとても狭いこと。
■「MEIKING NG」
https://www.meikingng.com/
取材:戸田美子