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2023.07.27
「ヨシオクボ」が水族館で1時間限りの展示会「yoshiokubo AQUARIUM EXHIBITION」を開催
久保嘉男がデザインする「ヨシオクボ(yoshiokubo)」は2023年7月25日、東京・港区のマクセル アクアパーク品川で1時間限りの展示会「yoshiokubo AQUARIUM EXHIBITION」を開催した。通常とは違うアプローチで見せるコレクションにチャレンジした今回。服の展示を中心に、すぐ近くでモデルを使ったランウェイショーをプラスするやり方でコレクションを発表した。
開場時間は20時30分。閉館後の水族館の一角には、通常の展示会のようにラックに服が展示されている。その下には靴も置かれていた。違うのは、そこが水族館であるということ。だが、そこに置かれたコレクションと服のデザインは、ガラスの向こうを泳ぐ魚や水、きらめく光、そして会場内の様々な生物や水族館のムードと自然なまでにマッチしていた。
美術館で開催されるアートの展覧会などで定着している音声ガイドのように、会場にあるQRコードからデザイナー自身による音声ガイドをダウンロードできるようにした今シーズン。テーマになったのは「夜の水族館ではなく混濁」。揺らぎが重なる洋装服。涼しさや爽やかさなど、涼の表現を洋装服に落とし込んだ。
テクニックでは、レーザーカットで向こう側を見せていることやカットジャカードの新しい表現などがポイント。ポリエステルを葉の形にレーザーカットし、切り抜いた部分が垂れ下がりシルエットが変化する服や飛ばした糸をたっぷり残し、飛び出すように表現し、裏側には海の生き物を描いたデザインを発表した。音声ガイドによれば、何かわからない、まやかしのようなものだからじっくりと見たものになっていて、そこには唯一無二の1着を作ることができれば、ずっと愛着を持って着てもらえるという、サステナビリティの意味合いも込められているという。
また、当日は服の展示とともにキャットウォークも実施。魚たちが観客の背景や天井を泳ぐ中で、モデルたちが会場を歩いた。海や自然を背景にしたコレクションはコロナ禍でリアルなコレクションができなくなった時期に「ヨシオクボ」や「リックオウエンスな」ど、いくつものデザイナーがデジタルコレクションで見せてきたもの。だが、実際に水族館で魚が泳ぐ中で実際に見るコレクションはやはり新鮮に見える。デジタルではわからない細部へのこだわりも伝わってきた。
新しい見せ方によって、大会場でのスペクタクルなショーでは隠れていた日本的なこだわりと繊細な技術を強調したコレクション。楽天グループによる日本のファッションブランド支援プロジェクト「バイアール(by R)」での発表となった2023春夏コレクションでは、「HITODAMA(人魂)」をテーマに日本の子供たちが今でも聞く昔話からインスピレーションを膨らませたが、何かわからないもので見るものを引き付ける、美しいものではなく新しいものを作るという方法は、どこか、あの岡本太郎とも共通するように思えた。
画像:久保嘉男デザイナー
久保は今回の発表方法について「ファッションショーはしないので、新しい見せ方をしたいし、この会場で見せる最高の服にいい服を作ろうと思ったんです。こうやって近くで見せることが1番面白い。僕も15年間ファッションショーをやってきましたが、わざと距離を置くじゃないですか。俺らはすごいんだぞと。そこが違う。もっと、身近で見せないと。自分でもそのサークルに入っちゃったんですけど、僕の服作りと逆を行っていたんです。めっちゃ凝っている服を見せた方がよかったのに、パリやミラノに行ってどんどん違う方向に行っていたのをほんまに切り替えないといけないと感じていました。だから、こういう見せ方をしました」と説明。「今後もより凝った服で、ぐっと見せるものをやりたいんです。絶対に」と強調した。
取材・文:樋口真一
Coutesy of yoshiokubo