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2019.03.08

【2019秋冬パリコレ ハイライト9】テーラード、オーバーサイズ進化系、原色と蛍光色、チェック、ラメ、フローラルモチーフ…浮かび上がるキーワード

 パリコレクション9日目である最終日は、ニコラ・ジェスキエールによる「ルイ・ヴィトン」がショーを開催した。

ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)

  「ルイ・ヴィトン」は、これまで通りルーヴル美術館内の特設会場を舞台に最新コレクションを発表。客席を取り囲むように、ポンピドゥーセンターを再現し、ルーヴル美術館というクラシカルな場所にポンピドゥーセンターという現代美術館を設置することで、不思議なコントラストを見せている。

 それぞれのアイテムは、ポンピドゥーセンターを思わせる鮮やかな配色が多く、そのままポンピドゥーセンターを描いたレザーのセットアップも登場。ダミエ柄のレザースカートとアニマルモチーフのブラウスを合わせるなど、モチーフ・オン・モチーフのスタイリングも目立った。テーラードジャケットはウエストマークで細く、その他のドレス類もベルトで細く締め、どことなく80年代的な雰囲気も。

 凹凸のある小花柄を用いた半纏(はんてん)のようなジャケットや、袖口にパネルが付いたブルゾンなど、強烈な個性を放つアイテムが印象的。ニコラ・ジェスキエールの独自性が光る、圧倒的な世界観を見せていた。

「ルイ ヴィトン」2019秋冬コレクション

ジバンシィ(GIVENCHY)

 クレア・ワイト・ケラーによる「ジバンシィ」は、パリ5区に位置する植物園を会場にショーを開催した。コレクションタイトルは“The winter of Eden”。アダムとイヴのエデンの園のイメージになぞられ、様々な様式と時代をミックスした構成にしている。

 40年代風のウエストマークシルエットのテーラードジャケットは、肩のラインに沿ってつまんだようなパワーショルダーが特徴的。その他のテーラードも、肩のラインをはっきりとさせた造形的なフォルムが目を引く。ホースヘアをあしらったプリーツのフローラルモチーフのセットアップは、多様な小花柄を使用してエデンの園を表現。アイテムによっては着物に使用される和柄も。

 ブラックやグレーを基調にしたベーシックカラーのテーラードと、グリーン、レッド、ピンクのプリーツドレスが絶妙なコントラストを見せていた。

「ジバンシィ」2019秋冬コレクション

パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)

 ジュリアン・ドッセーナによる「パコ・ラバンヌ」は、グラン・パレを会場に最新コレクションを発表。1930~50年代の、オートクチュールの黄金期とされる時代にイメージを求めつつも、ナポレオンジャケットなど、18世紀~19世紀の要素も加え、近年のレトロ感を漂わせるアイテムも交えて、様々な時代を行き来しながら、モダンなスタイルをアウトプットしている。

 モチーフもアールデコから近年のものまでをミックス。総スパンコール刺繍のパンツにビジュー刺繍のブラウスのセットアップや、ギンガムチェックのコートにゼブラモチーフのニットとスパンコール刺繍のパンツ、といったミスマッチなコーディネイトが新鮮。このブランドならではの鎖帷子やクリスタルチェーンのドレスも健在。

「パコ ラバンヌ」2019秋冬コレクション

バレンシアガ(BALENCIAGA)

 デムナ・ヴァザリアによる「バレンシアガ」は、パリ郊外のサン・ドゥニ市に位置する、リュック・ベッソンが設立し、昨年閉校した映画学校跡の建築物にてショーを開催。

 特にテーマやインスピレーション源の発表は無かったが、パリジャンのリアルな服、そして現代の人々のライフスタイルに合った服をイメージ。袖にボンディング素材を用いて、立体的に仕上げたジャケットを合わせたスーツでスタート。

 ボタンを留めないパリジャンスタイルを意識し、ボタンが無いジャケットとなっている。そして肩の縫い付け部分が高く上がっているのが特徴。また肩のラインに沿ってつまんだようなコートやジャケットは、寒さで肩をすぼめているかのようで興味深い。

 頭周りを覆う高い襟のフードアイテムは、パリの街を行き交う人々の匿名性を表現したアイテム。襟元に大きなリングをあしらったトップス・ドレス類は、今季のキールックだが、クリストバル・バレンシアガのクリエーションに通じる突出したアイデアといえる。

 ブラック・ベージュ・グレーを基調としながら、ピンク・レッド・グリーン・イエロー・ブルーといった原色がコレクションを華やかなものにしていた。

「バレンシアガ」2019秋冬コレクション

アレキサンダー マックイーン(Alexander McQueen)

 サラ・バートンによる「アレキサンダー・マックイーン」は、カルノー高校の体育館にてショーを開催した。コレクションは、バートンの故郷であるイングランドの田舎町にある繊維工場から着想。

 ボタンやスナップなど、服飾に関わる服飾パーツや、機織りなどのメカニックからインスパイアされ、女性らしいアイテムに機械類のハードなものを敢えてぶつけることで、コントラストの妙を見せている。ラフルを飾ったニットドレスには、無数のボタンやスナップを飾り、ロングドレスには機械のパーツをスパンコールのように刺繍。

 また英国を象徴するバラも、今季のメインモチーフとなっている。絣のようなバラプリントのドレスや、大きなバラモチーフを飾ったレザーのドレス、そして最後に登場した、タフタ素材をプリーツ状にして縫いながらボリュームを出したピンクやレッドのドレスが今季コレクションの印象を決定付けていた。

「アレキサンダー マックイーン」2019秋冬コレクション

 今季のトレンドは、テーラード、オーバーサイズの進化系、原色(蛍光色)、チェック、ラメ、フローラルモチーフに集約されるかもしれない。

 テーラードはチェックモチーフと深く関わりながら様々なブランドで見られ、フローラルモチーフと原色はその対極的な存在としてコントラストを見せた。ラメも、テーラードとチェックの対極にある華やかな存在として目立っていた。「セリーヌ」のラメのプリーツドレスや、ルイ・ヴィトンのニットトップスなどがその例といえる。

 そして原色の色使いは、単色ではなく、1つのアイテムの中で色を組み合わせる、万華鏡のような使い方も見られ、それは「コシェ(KOCHÉ)」や「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」で顕著に現れていた。「サンローラン(SAINT LAURENT)」の蛍光色の打ち出し方は、独特ではあったが、原色の発展系として広がる可能性もある。

 そしてゴールドの輝きも忘れられない。「セリーヌ(CELINE)」や「トム・ブラウン(THOM BROWNE)」では、そのままゴールドのスーツが登場。ファッション業界では、不況時に原色が流行するとされるが、それが依然として定説であり続けているといえるかもしれない。

 オーバーサイズのシルエットはやや落ち着いたかのように見えたが、「ジバンシィ(GIVENCHY)」や「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のように、肩のラインをつまんだかのようなシルエットがシンクロして登場して驚かされた。単にシルエットを大きくするだけではない、様々なアイデアを加味したものが登場しそうな気配だ。

 

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取材・文:清水友顕

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