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2018.08.16

ジャンル別通販売上高ランキング 注目市場の通販の状況は?

 通販新聞社は7月、「第70回通販・通教売上高ランキング調査」を実施し、売上上位300社の売上高ランキングを発表した(第1664号参照)。同時に健康食品、化粧品、衣料品、食品といった通販の主力商材別の売上高調査も行った。今回は市場規模が大きく、また今後の市場の行方などが注視される「総合通販」「家電」「家具」「メーカー通販」を展開する上位の通販実施企業の直近の売上高を抜粋したランキング表を掲載しつつ、それぞれの市場の動向と各プレイヤーの状況を見ていく。


【総合通販】 通販専門局、カタログ大手ともに堅調

 カタログやテレビを主要媒体とした総合通販では上位10社のうち、3社が減収となったが、戦略的に取扱商品を減らしているニッセンHDの2桁減以外概ね堅調に推移している。注目される企業の状況を見ていく。

 1位のジュピターショップチャンネルは前々期から本格化させた自局の通販番組の企画に合わせて、目玉となる商品を訴求する広告を全国紙に出稿したり、地方局でインフォマーシャルを放映するなどする施策が売り上げ拡大および新客獲得に大きく貢献。また、毎年、11月に実施する大型特番を始め、春や夏に実施した特番の売り上げも好調に推移した。加えて、株主であるKDDIやジュピターテレコムからのモバイルや会報誌を介しての送客も顧客基盤の拡大に貢献し、創業20周年の年として様々な販促を行い、近年なかった2桁成長を達成するなど大幅な増収を見せた2017年3月期を上回る売り上げとなった。


 2位のベルーナは全セグメントで増収を達成している。主力の総合通販事業では、ミセス系カタログが伸長。専門通販においては、グルメ・ワイン事業や化粧品事業が好調に推移し、大幅増収となった。また、店舗販売は和装店舗に新規出店などによる増収と、アパレル店舗の既存店売り上げが好調だった。


 3位のディノス・セシールはディノス事業ではカタログでの訴求のほか、特定商材を訴求するチラシや小冊子を同梱するなどの試みが奏功して主力の家具・リビング関連商品の売り上げを押し上げた。また、ファッション系カタログで実施したカタログの発行頻度を増やす施策なども売上増に寄与した。テレビ通販も気候や商品のタイムリーさなどに応じ番組紹介商品を入れ替える施策などが奏功し美容健康系商材などの売れ行きが伸びた。セシール事業は男性向け衣料品や化粧品などの売れ行きは堅調だったが、主力の女性向け衣料品全般が上期に伸び悩んだ結果を受け、不採算媒体や発行部数の見直しを行ったことから減収となり、全体でも微減となった。 

 4位のQVCジャパンは一昨年前から本格化させている海外のQVCグループ各社での売れ筋を積極的に投入する試みなどが奏功。日本でも一定の売り上げを上げるヒット商品も登場してきており、売り上げを押し上げ4期ぶりに1000億円の大台を突破した模様。

 5位のニッセンホールディングスは引き続き、大きいサイズなど特殊サイズアパレルに注力しており、売上高は大きく減少している。ただ、総合カタログ型からネット販売主体に戦略を転換したほか、コスト削減を進めたことで営業赤字は縮小しており、業績は改善傾向にあるようだ。

 6位の千趣会は前期、通販事業ではほとんどの商品ジャンルで売り上げを落とした。主力の衣料品はアウターの不調が顕在化して売り上げは前年比7・0%減、インテリアはカタログ3媒体を1誌に集約したことで部数が半減し、売り上げも同15・7%減となった。規模は小さいながら食品は子会社が手がける機能性食品の好調で同57・7%増だった。カタログの休刊と媒体統合などを下期に本格化し、年間の発行部数は前年から4割弱減らしたこともあり、年間購入者数、アクティブ会員数もマイナスとなった。一方、インテリアカテゴリーでは昨年11月、コンサルティング販売を売りにした実店舗を大阪に開設し、中計で進める専門店集積型モデルの中核事業として育成中だ。

 7位のスクロールは生協事業を中心とした通販事業は減収となったものの、個人向け通販となるeコマース事業の売上高は、ミネルヴァ・ホールディングス(現・ナチュラム)を買収したことや、メンズブランド雑貨、カラーコンタクトレンズの通販サイトをそれぞれ新規出店したことなどで増収に。また、化粧品・健康食品の健粧品事業の売上高は、ナチュラピュリファイ研究所、T&M、キナリを買収したことで増収となっている。

 10位の高島屋はカタログとECの両販売チャネルが健闘した。カタログ事業は主力のファッションと食料品、リビングの3カテゴリーすべてで堅調だった。新客開拓ではテレビ通販を絞って新聞広告にシフトしたことが奏功。全国紙メインに全5段のカラー広告を掲出し、ファッション商材と食料品で新客の獲得につなげた。また、地方紙も活用して戦略的に競合の少ないエリアなどでの認知拡大を図った。ECは主力サイトの「高島屋オンラインストア」の売上高が約109億円に拡大し、初めて100億円の大台を突破。コンテンツの見直しを図ったほか、在庫も十分に確保して臨んだことなどが底上げにつながった。




【家電】 好調続くジャパネット

 

 主に家電を販売する小売企業(メーカー直販やパソコン専門は除く)を売上高順に10位まで抜粋した。

 1位のジャパネットホールディングスは、前期も売上高が過去最高を更新した。商材ではエアコンが好調に推移。カタログやチラシなどの部数を増やして拡販を強化したことが奏功した。また、大型テレビの売り上げも伸びた。昨年から、家電エコポイント制度を使って購入したテレビの買い替えサイクルに入ったため、当時テレビを購入した顧客に、使い勝手が変わらない、同じメーカーの大型テレビを、ダイレクトメールでアプローチするなどの施策を積み重ねてきたことに成果が出ている。さらに、グループのジャパネットロジスティクスサービスが大型商品の配送・設置を、ジャパネットサービスパートナーズが商品の修理を含むアフターサービスを専門に行っており、日々のサービス面の改善なども売り上げの伸びに寄与したもよう。

 2位のヨドバシカメラは昨年、新物流センターへの移転に伴う作業で配達遅延が発生するといった事態が起きたものの、前期も増収を確保した。全社売上高に占める割合は16%に達している。

 運賃値上げで送料無料サービスを取りやめる会社が増えているが、同社では購入額によらず送料無料、追加料金なしでも注文当日の配達、さらには同じく追加料金なしで最短2時間30分以内に届ける「ヨドバシエクストリーム」(東京23区などで実施)を引き続き展開しており、他社への優位性を築いている。

 3位の上新電機(売上高は本紙推定)は、仮想モールにおける大賞の常連企業。ネット販売に関しては、前期も堅調に推移したとみられる。

 4位のキタムラは「宅配売上」と「店受取売上」を合算した売上高が増えた。店数減少をネット強化でカバーしている。高額なカメラの新製品の予約獲得のために、長期無金利のショッピングクレジットを強化。また、差額だけで購入できる「トクトク交換サービス」が好調で、ネットでも下取りが増えた。さらには、在庫管理の精度向上、納期改善により売り上げが増えている。

 5位のビックカメラは、子会社であるソフマップ、コジマと合算した売上高は、グループ合計で前期比約5・8%増の730億円だった。ビックカメラの通販サイトでは、システム開発に投資しており、使い勝手やサイト内検索が改善。また、スマートフォン経由の売上高が急増しており、専用アプリの利用者が増えたことで増収につながった。

 6位のMOAは過去最高の売上高となった。近年、家電メーカーとの関係を強化しており、仕入れ体制が安定。同社のプライベートブランドシリーズ「マクスゼン」も好調だった。また、一昨年には酒類小売業免許を取得。食品、雑貨なども品揃えを増やしている。家電製品は買い替えまでの期間が長いことから、購入サイクルの短い商材の取り扱いを強化することで、定期的な商品購入につなげる狙いがある。


【家具】 ニトリが首位、300億円達成

 

 家具商品をメインに通販を実施している企業では、ニトリが前期比35・0%増の305億円で首位を獲得。300億円の大台を超えて2位以下を大きく引き離した。当期は上半期に通販サイトのデザインを刷新したほか、店頭で配送手続きをすることで商品を持ち運ぶ必要がなく実店舗での買い物ができる「手ぶらdeショッピング」アプリもリリースするなど、オムニチャネル施策を強化。通販売上高を四半期ベースで見た伸び率では、第1四半期を除いたすべての期で前年同期比35%超の伸びを記録した。商品面では「サイズオーダー家具」をはじめとした通販限定商品の売り上げが好調だった。

 2位となったのはタンスのゲン。当期は仮想モールの「Qoo10」に新規出店したほか、「Yahoo!Live」で同社初となる生放送配信を実施するなど、新規顧客獲得に向けた新しいアプローチを図った。今期については4月より業務拡張のため、新社屋と配送センターを新築。本社1階にはリアル店舗も開設している。

 3位のベガコーポレーションはソファやベッドといった既存ジャンルに加えて、ペットやキッズ向けのオリジナルデザイン商品を開発。家電では除湿器や扇風機などを軸に商品数を増やし、季節商材のクリスマスツリーでは、サイズやデザインを数多く展開したことで前年の販売実績を上回った。また、自社通販サイトのSEO対策やシステム刷新を行ったことで、旗艦店の「LOWYA」の年間アクセス数が前年比329%増となった。

 4位には山善がランクイン。家庭用品通販サイトの「くらしのeショップ」が12期連続で増収。新規商品の投入による底上げを図ったことで売上高が増加した。今後、コンシューマ向けネット取引は年商200億円規模へ拡大することも計画している。

 5位のジェネレーションパスは、国内では商品取扱数の拡大などもあって増収となったものの、配送会社の総量規定を受けて出荷準備した商品の配送が受けられない事態が発生。予算比では売上高、利益とも未達となった。


【メーカー系通販】 100億円規模の企業が増加

 


 これまで店頭市場を中心に展開してきたメーカー系通販ではサントリーウエルネスの成功を受けて健康食品、化粧品通販市場への参入が増加した。当初は既存の基幹事業とのしがらみ、戦略の自由度の低さから苦戦する企業が多かった。だが、2015年の機能性表示食品制度の導入などを背景に100億円規模に達する企業が増えた。

 1位のサントリーウエルネスは売上高が7・9%増の868億円となり、過去最高を更新した。主力は「セサミンEX」。全般的な健康イメージで幅広い層に顧客基盤を築く。16年に機能性表示食品としても届出。ただ、表示内容は"睡眠ケア"に絞られており、依然として健食での展開が続く。制度活用に動くか、今後の展開が注目される。

 4位の味の素は、臨床試験による機能性評価で独自価値を打ち出す機能性表示食品「グリナ」(睡眠ケア関連)が業績をけん引。売上高は110億円前後(本紙推定)に達しているとみられる。

 積極的なウェブマーケティングの展開で100億円超に達し成長の礎を築いたのは5位のライオン。一時、売上高は100億円を割ったが、主力の「ナイスリムエッセンス ラクトフェリン」は、ダイエット関連の表示で機能性表示食品として届出。明確な機能表示を背景に、再成長の軌道に乗りつつある。

 ほかにランキング外ではあるものの、カゴメは機能性表示食品「トマトジュース」シリーズが好調。通販売上高も100億円(同)に達したとみられる。協和発酵バイオ(通販売上高77億円、本紙推定)、大正製薬(同75億円、同)も堅調な事業展開で100億円をうかがう。

 化粧品通販では、資本力を背景にした投資先行戦略で富士フイルムヘルスケアラボラトリーが売上高200億円(本紙推定、健食通販を含む)に達している。資生堂の通販売上高も90億円(同)と100億円をうかがう位置につけており、20年に140億円の売り上げを目指している。

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