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2025.10.23

SOFFITTO /遊び心ある「ニュースタンダード」を追求し、リブランド。新宿店をコンセプトストアに発信力を強める

 メルローズが展開するウィメンズウェアブランド「SOFFITTO(ソフィット)」。20代女性を中心に支持を集めた同社他ブランドのスタイリングをフォローアップするセレクトアイテムを複合した業態として、2006年にデビューした。以降はオリジナルとセレクトで20~30代の女性に向けたモードでエッジーなカジュアルスタイルを提案する単独のストアブランドとして展開してきた。20年近くが経ち、30代アッパーの顧客も増加。25-26年秋冬シーズンからファッション感度、価値意識の高い大人の女性に向けてリブランディングに取り組んでいる。大手セレクトショップでバイイング、ディレクションを手掛けてきたフリーランスディレクターの平ゆかりさんを迎え、ベーシックカジュアルを軸としながらも、上質で、遊び心を利かせた品揃えへと刷新。ルミネ新宿2からルミネ新宿1へ移転する新宿店をブランド表現の象徴となるコンセプトストアと位置づけ、今年9月11日に「再出発」し、新たなファンの獲得を目指す。

 

感度が高く、物の価値を知る大人の女性のための新たな「屋根裏部屋」

 ソフィットは現在、直営店が4店舗、FCが2店舗あり、ECでも販売している。もともとは若い客層に向けたメルローズのカジュアルブランド「alcali(アルカリ)」の服を軸に、バイイングしたアイテムをアソートしたセレクトショップとしてスタートした。「Soffitto da alcali(ソフィット ダ アルカリ)」として下北沢に路面店を出店したのは2006年のこと。「soffitto」とはイタリア語で屋根裏部屋を意味し、宝探しをするような、わくわくする時間を過ごせる空間を意図している。その後、オリジナルアイテムを増やしながら、アルカリから派生したブランドとしてソフィットを単独出店し、エッジーでモードなスタイルの提案により30代を中心に幅広い世代の女性に支持されてきた。

 

 リブランディングに踏み出したのは、ストアブランドとして20年近くが経ち、30代アッパーの大人の女性の顧客も増えていたことによる。これからへの新たな基盤作りを見据え、ブランドの原点に立ち返り、一からの見直しにかかった。ディレクターには、ジャーナルスタンダードやアメリカンラグシー ジャパン、デイトナインターナショナルなどでバイヤーやディレクターを務め、メルローズではニューヨークとロンドンから得たインスピレーションを基に大人のミックススタイルを提案するブランド「A_(エース)」を手掛ける平ゆかりさんを起用。主要ターゲットは30代後半~50代に上げ、ファッション感度が高く、物の価値に対する意識も高い大人の女性に向けてカジュアルウェアの「ニュースタンダード」を提案するブランドへと刷新した。MDだけでなくビジュアルもロゴマークも全て見直し、新たな「屋根裏部屋」を設えた。リブランディングに伴い、20~30代を中心客層とするルミネ新宿2から、その上の世代である30~50代を中心客層とするルミネ新宿1への移転が決まった新宿店をブランド表現の象徴的な空間と位置づけ、今年9月11日に移転リニューアルオープンとなった。

 

 「館の客層がブランドのターゲットと同じで、感度の高い大人の女性に向けたブランドが多く入っている。そうした環境だからこそ、ソフィットの服作りもセレクトも磨かれていく可能性を感じる」と、メルローズの吉田昌弘ソフィット・ゼネラルマネージャーは話す。

 

  • 25-26年秋冬コレクションのキービジュアル

  • ソフィットの新たなロゴマーク

オリジナルとセレクト・別注を掛け合わせたミックススタイル提案

 新たな新宿店はルミネ新宿1の4階、旧店舗とほぼ同じ約60㎡の奥行きのある空間だ。店装のディレクションも平さんが務め、商品のデザインが映えるシンプルでモダン、クリーンな空間に仕上げた。エントランス右側のL字型の壁面には木製のリブパネルを張り、自然で落ち着いた空気感を演出。床は大理石風のPタイルにブラックで小さな四角の模様を連ね、クラシカルで高級なムードを醸し出した。リブパネルの前ではシーズンを象徴するアイテムのスタイリングを見せ、正面から店内へと続くラックにコーディネートアイテムを陳列し、選びやすい導線を作っている。オープニングではビンテージのトランクやスーツケースを配置し、什器として使うことで、リブランディングのテーマである「再出発」を表現した。このテーマは25-26年秋冬シーズンのビジュアルにも反映され、「旅というよりは、これから飛び立とうよという出発のイメージを体現」している。ロゴマークも刷新。ローマ字の「SOFFITTO」は以前のイタリックからスマートでありながら意思を感じさせる書体になり、上に屋根裏部屋の屋根の線を添えた。飛行機で飛び立っていくような印象も受ける。

 

  • 移転リニューアルした「ソフィット新宿店」

  • シーズンを象徴するアイテムのビジュアルプレゼンテーション

  • ビンテージのトランクなどで「再出発」を演出

  • シューズはオープニングでは「adidas(アディダス)」にフォーカス

  • 店頭のファッション雑貨の集積。手前のアディダスのスニーカーはインラインからのバイイング

 MDはソフィットとエースのオリジナルウェアを軸に、平さんがハンドピックしたウェアやファッション雑貨で構成。全体の約7割がオリジナルだが、残り3割のセレクトに粒選りのブランドが揃い、売り場に混在させることでブランドらしいミックススタイルを提案する。ソフィットの他店舗にもECにも無い、新宿店だけのセレクトもあり、まさに屋根裏部屋でコレクションを探すわくわく感がある。

 

 ブランドの「再出発」を象徴するのは、ミラノ発のバッグブランド「MIA BAG(ミアバッグ)」のウェアライン「COUTURE MIA BAG(クチュール ミアバッグ)」のジャケット。テーラードジャケットにパールチェーンやパッチワークなどを施し、ベーシックに遊び心を効かせる新生ソフィットのコンセプトが体現された一着だ。インナーにTシャツを合わせればカジュアルに、シャツを合わせれば大人な着こなしを楽しめる。祖業のバッグでは、ミアバッグならではのユニークなデザインと素材使いを堪能できる。ニューヨークを代表するモチーフをパッチワークした「スエードバッグ)」や、レザーに「J’adore」の文字をプリントした「レザーバッグ)」なども揃う。

 

  • 「クチュール ミアバッグ」のテーラードジャケット

  • 「ミアバッグ」のスエードバッグ

  • 「ミアバッグ」のスエードバッグ

 洋服では、クラシカルでありながら遊び心のあるデザインとスカンジナビアのアイデンティティーを融合させたフェミニンでレトロなテイストのブランド「BAUM UND PFERDGARTEN(バウムウンドヘルガーテン)」、11年の設立以来サステイナブルな服作りに徹するイタリアのデニムブランド「HAIKURE(ハイクル)」などもある。今季から新たなヘッド・オブ・デザインが就任した「3.1 Phillip Lim(スリーワン フィリップリム)」の取り扱いもスタートさせた。

 

  • 「バウムウンドヘルガーテン」のポロシャツなど

  • 「ハイクル」のデニムアイテム

 これまでもコラボレーションしてきたデザイナー川島幸美のウィメンズブランド「AULA AILA(アウラ アイラ)」の別注アイテムも注目だ。「CHECK COMBINATION BLOUSON(チェックコンビネーションブルゾン)」は、大きさの異なる2種類のチェック柄を左右に配し、中央に無地のモッサを組み合わせた大胆なコンビネーション。「目を引くデザインなので、フリーのお客様が興味を持って入店し、即決するケースもある」という。

 

  • アウラ アイラの「チェックコンビネーションブルゾン」

 オープン以降、人気を呼んでいるのは日本人デザイナーによるロンドン発のジュエリーブランド「ANIMUS(アニムス)」。ビンテージジュエリーのパーツを厳選し、手仕事で組み合わせる手法に徹して生み出されたリメイクアクセサリーだ。ビンテージ、サステイナブル、タイムレスといったテーマを網羅したクリエイションが響いている。

 

  • ビンテージジュエリーのパーツをリメイクした「アムニス」のアクセサリー

「ソフィット」と「エース」、シーンに応じて楽しめるスタイリング

 ソフィットのオリジナルではカバーオールが好評だ。ビンテージのダック生地をリプロダクトした生地を使用。襟にはコーデュロイ、袖口裏にはチェック生地をあしらい、女性らしい着こなしができるビンテージ感あるワークテイストのウェアに仕上げた。今季はインナーに程よい厚みの度詰め天竺によるラガーシャツ、ボトムにミディ丈スカートを合わせるスタイルを推している。スカートはレオパード柄とネイビーのストライプ柄の2タイプで、センターフロントにダブルジップを配し、裾から覗く裏地のディテールでアクセントを効かせた。ジャケットでは、バックサテンジョーゼット製のノーカラータイプを提案する。2WAYストレッチ、紫外線防止、接触冷感の機能があり、インナーやボトムとの組み合わせによってきれいめにもカジュアルにも着こなせる。

 

  • ダック生地を使用したソフィットのカバーオール

  • ソフィットのノーカラージャケット。同素材のパンツとのコーディネート

 エースは、トラッド&ストリートをキーワードにオリジナルアイテムを製作。ツイードのノーカラージャケットは、2種類のブレードを組み合わせ、大人っぽい雰囲気を演出する。トラッドでフェミニンなムードだが、スムース仕上げのウール製プルオーバーと同素材のパンツとコーディネートすれば、大人のカジュアルスタイルを楽しめる。新宿店のリニューアルオープン以降、活発に動いているのが「タイプライターオーバーシャツ」。スタンダードなシャツの作りを残しつつ、襟は小さめに、袖や身幅をゆったりと取り、モード感を表現した。袖を伸ばした状態ではベルスリーブのようなシルエットで着こなせ、袖口のカフスはボタンになっているので長さの調節もできる。下前身頃にさりげなく刺繍された「A_」ロゴがおしゃれ。今後、定番になっていきそうな新たなシャツのスタイルだ。

 

  • 「ツイードノーカラージャケット」(エース)のスタイリング

写真/野﨑慧嗣、メルローズ提供
取材・文/久保雅裕

 

 

 

■関連リンク
SOFFITTO公式サイト:https://www.melrose.co.jp/soffitto/
SOFFITTO公式Instagram:https://www.instagram.com/soffitto_official/

久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremode コントリビューティングエディター
 

 ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。一般社団法人東京ファッションデザイナー協議会 代表理事・議長。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremode コントリビューティングエディターに就任。2024年3月まで杉野服飾大学特任教授/杉野学園「ファッション力」編集長を務めた。

 

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この記事は「encore(アンコール)」より提供を受けて配信しております。

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